介護施設

第二創業という考え方

後継者不在事業の従業員の本音

先日、ある介護施設の施設長が、「うちのオーナーも第二創業の決意をしてくれたらいいんだけどね・・・」と嘆かれていた姿が印象に残っています。

この施設長は現在60代後半で、オーナー様においては80代後半というご年齢で、現在も経営に携わっていらっしゃいます。しかし、施設長の想いとは裏腹に、施設運営を任せられる後継者が不在のまま、オーナー様はやがて介護事業の閉鎖を覚悟されているそうです。

企業のライフサイクル

法人の状態を指す言葉に、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という表現がある事をご存知でしょうか。

商品にライフサイクルがあるように、企業にもライフサイクルがあります

創業者が事業を立ち上げ(導入期)、成長させ(成長期)、成長のピークに達し(成熟期)、そこから緩やかに成長が鈍化していく(衰退期)。この一連の流れをライフサイクルと呼びます。

近年、全国の中小企業・小規模事業者で経営者の高齢化が深刻な問題を引き起こしていることはよく取り沙汰されていますが、経営者の高齢化が進んでいる企業の多くは、事業そのものが衰退期に入っており、後継者不足と合わせて二重苦の状況に陥るケースが増えています。

このような状況の中、次の一手を打つ体力も無く、廃業・倒産まで時間の問題になってしまっている事業所は少なくありません。

第二創業を目指す

ところで、現在、中堅・中小企業経営者の年齢のピークは66歳であることはご存知でしょうか。この値は、1995年からの20年間で19歳も上昇しています。

(参考) 2018年版 中小企業白書:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_6_1_2.html

経営者の高齢化が進んでいる会社の多くは、上述したライフサイクルの中で言うと「成熟期」又は「衰退期」に位置しています。

親が創業した会社を子が継ぐなど、トップが交代する時期に衰退期に入っていることが多いという実態が、後継者に第二創業を決意させる大きな動機になり得ます。

介護業界においても例外ではなく、時代や制度の変遷に伴い、経営環境やご利用者のニーズは目まぐるしく変化しているため、創業時のままの旧態依然とした経営手法や体制、ノウハウでは対応しきれなくなっているという声も聞こえてきます。残念ながら、介護事業が重荷となっているというケースも生まれています。

そこで、第二創業と言われるようなダイナミックな変革を起こすことも、オーナー様には求められる瞬間が必ずやってきます。

従来、第二創業とは、既に何らかの事業を行っている事業者がその業態変更をしたり、新たに別の事業に進出したりすることを意味する表現として使われることが多かったのですが、最近ではもう一度起業するような決意をもって大きな決断を下すことを指して使われるようになりました。M&Aにより事業を譲渡することも、第二創業に相当する大きな決断と言えるでしょう。

信念に立ち返る

オーナー様には、ぜひもう一度創業時の信念や目的を思い返していただきたいのです。

目指した目標や信念のもと生み出された会社を、永続的に発展させ、より良い会社にしていくことは創業者にとって最大の責務であるのと同時に、究極の目的であるはずです。

しかし、どれだけ強い想いを持って起業したとしても、経営者が二代目、三代目とバトンパスされていく過程で、理念は形骸化し、目的をはき違えてしまったり、リスクを取って責任を負える人材が気付けば社内にはいないという事態になっていきます。

そんな時、原点に立ち返って企業の目的や使命を反芻することによって、創業した事業を進化させることを考えてみてはいかがでしょうか。オーナー経営者の交代時、親族への承継時、あるいは業界再編が起こっているタイミングをチャンスと捉えて第二創業を目指す

「成熟期」と呼べるうちに、大きなご決断をされることをおすすめいたします。

 

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