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訪問介護業界のM&Aメリットとデメリットとは?

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訪問介護業界のM&Aメリットとデメリットとは?

訪問介護

訪問介護市場が拡大を続けています。
しかし訪問介護事業者は中小企業が多いため、M&Aも増加しています。

今後も増加が予想される訪問介護事業者のM&Aについて、そのメリット及びデメリットを解説いたします。

訪問介護業界のM&Aメリットとは

訪問介護業界におけるM&Aには、売り手と買い手それぞれのメリットがあります。
ここでは、両者の視点から解説いたします。

M&Aの売り手のメリット

訪問介護業界でのM&Aについて、売り手のメリットは下記があげられます。

  • 後継者問題が解決できる
  • 従業員の不安を解消しつつ雇用を維持できる
  • 売却時に利益が発生する
  • 大手の傘下のもとで経営ができる
  • 別事業の立ち上げなどに投資できる
  • 借入金の個人保証や担保を解消できる

一つずつみていきましょう。

後継者問題が解決できる

中小企業白書によれば、国内中小企業の経営者に最も多い年齢は69歳(2018年)です。中小企業経営者の高齢化問題は待ったなしの状態であり、訪問介護事業者も例外ではありません。

親の会社を子供が継ぐべき、という認識も薄れる中、M&Aにより企業を売却することで、廃業により顧客や従業員に迷惑をかけることなく後継者問題の解決が可能です。

参考記事:
https://www.dir.co.jp/report/research/policy-analysis/social-securities/20190603_020825.pdf#search=’訪問介護業界+M%26A+大和総研’

従業員の不安を解消しつつ雇用を維持できる

介護事業者の多くが中小企業であり、経営的には不安定な企業も少なからず存在します。

しかしM&Aで買収側となるのは、基本的には売却側に比べ規模が大きい企業です。

よってM&Aによる企業売却は、従業員の雇用の安定につながるケースが多いといえます。大企業の傘下に入るM&Aはその典型例です。

売却時に利益が発生する

企業の売却は株式譲渡により行われるケースが殆どです。
企業を譲渡する際、オーナー経営者は保有株式の全部もしくは大半を手放すことになります。

未上場企業ではオーナーの保有株式の売却機会は殆どありません。
しかしオーナーはM&Aにより企業譲渡行う際、会社設立時以上の株価で株式の売却ができれば、株式売却益の獲得が可能です。

大手傘下のもとで経営ができる

M&Aによりオーナーが株式を売却した後も、旧オーナーは取締役など一定の立場で経営に関与できるケースがあります。

経営の自由度は低くなるものの、M&Aによる企業売却により、それまでの資金繰りの苦労等なく、大手傘下で介護事業の経営に関与できる可能性もあります。

別事業の立ち上げなどに投資できる

大手の傘下入りすることで、資金面では日々の資金繰りに追われることはなくなります。その結果、会社として手控えていた別事業の立ち上げなどに投資できる余裕が生じます。

また旧オーナーは株式売却により、個人で余裕資金を手にすることにもなるため、個人として新規事業の立ち上げも可能となります。

借入金の個人保証や担保を解消できる

借入金やリース契約がある場合、事業の売却により経営の主導権が売却先に移ると、旧オーナーが行っていた借入金などの個人保証や担保提供の解消がなされます。

それらの保証や担保提供は、新たに親会社となる法人が行います(特に親会社が上場企業となる場合)。

よって旧オーナーは企業売却により、借入金や個人保証のプレッシャーから解放されます。

M&Aの買い手のメリット

ポイントを指摘する女性

訪問介護業界でのM&Aについて、買い手のメリットは下記があげられます。

  • 訪問介護事業にスムーズに参入できる
  • 有資格者を確保できる
  • 介護事業を拡大できる
  • 立ち上げ時に起きがちな赤字を避けられる
  • ブランド力があるため、人材を集められやすい

それぞれについて、こちらもみていきましょう。

訪問介護事業にスムーズに参入できる

介護事業に限りませんが新規事業の立ち上げには、資金と労力と時間が必要です。
それでも計画通り新規事業が立ち上がるかどうかは分かりません。

しかし、M&Aにより既存訪問介護事業者を買収することで、買収側はスムーズに訪問介護事業に参入できます。

ゼロからの立ち上げに比べ資金負担が重くなる可能性もありますが、既に事業として立ち上がりがなされている企業の買収は、スムーズな新規事業への参入を可能にします。

有資格者を確保できる

訪問介護事業の参入には、介護福祉士などの有資格者の確保が必要不可欠です。
しかし介護市場全体で人手不足の状態であり、ゼロから有資格者の確保をタイミングよく行うことは困難です。

訪問介護事業者を買収することで、買収側は売却側に所属する有資格者を確保した上で、訪問介護市場への参入ができます。

介護事業を拡大できる

既に施設介護事業などに参入している企業が訪問介護事業者を買収することは、介護事業における事業領域の拡大につながります。

事業領域拡大により顧客の介護ニーズをより深堀することができ、会社としての収益力強化が可能です。

立ち上げ時に起きがちな赤字を避けられる

ゼロから事業を立ち上げる際は、損益分岐点を超えるまで一定の赤字期間が避けられません。
また、赤字が必ず黒字化する保証もありません。

M&Aによる事業参入の場合、黒字企業の買収であれば、赤字に苦しむ事態は避けられます。ゼロからの事業立ち上げ費用に比べ、買収金額が高くなるケースもありますが、赤字のリスクやストレスを避けて新規事業への参入が可能です。

ブランド力があるため、人材を集められやすい

大手企業が新規事業として訪問介護事業に参入する場合、大手企業のブランド力が人材採用にプラスに作用します。
中小企業の多い訪問介護業界では、雇用が不安定な企業も多く、安定した職場で働きたい、というニーズも高い状態にあります。

大手企業は安定した雇用環境が提供できるため、市場全体では人手不足ながら、比較的人材が集めやすいといえます。

顧客や従業員にもメリットがある

訪問介護事業者のM&Aには、顧客や従業員に対するメリットもあります。
それぞれの視点からみていきます。

顧客メリット

訪問介護事業者は中小企業が多く人手不足の環境にあり、サービス品質が安定しない・希望の時間にサービスを受けられない、といった不満も顧客には存在します。

しかし、大手の傘下に入り人材面の充実やサービス向上がなされれば、顧客に対し安定したサービス品質で希望する時間にサービスの提供が可能となり、顧客満足度の向上が期待できます。

従業員のメリット

訪問介護事業者の多くが中小企業であるため、従業員の給与は低い水準にあります。
大手企業グループの訪問介護事業者の給与水準は、多くの場合で中小企業より高い水準です。
よって大手の傘下入りは、従業員の給与水準引き上げにつながる可能性は高いといえます。

また大手企業グループは経営が安定しており、従業員は経営の不安定さを心配することなく、顧客に対するサービス提供に注力できます。

売り手のデメリット

売り手のデメリットは経営の自由度が下がるという面にあります。
旧オーナーは継続的な雇用が認められても、買収側企業の指示に従うことが求められます。

また大手企業は社員に対し様々な書類提出などを求めることも多くなるため、
社員側も社内向けの業務が増える可能性があります。

買い手のデメリット

悩む男性

M&Aは訪問介護事業へのスムーズな市場参入を可能とします。
しかし資金面から見た時、ゼロからの事業の立ち上げ費用に比べると、買収金額が割高となる可能性もあります。

またM&Aは買収した後が本当の勝負です。
M&Aにより大金を投じて黒字企業を買収したものの、
買収後のマネジメントに失敗して、買収企業をダメにしてしまうリスクもあります。

まとめ

訪問介護事業者のM&Aについて、売り手側及び買い手側の視点から、メリットとデメリットを解説いたしました。

今後も市場拡大が予想される訪問介護市場ですが、ゼロからの事業立ち上げは不確実要素も多く、大きなリスクを伴います。

しかし既に事業として立ち上がりを果たしている訪問介護事業者を買収することで、リスクを抑えた形での市場参入が可能です。

売り手側・買い手側双方にメリットのあるM&Aですが、当然デメリットも存在します。
訪問介護事業者のM&Aを検討の際は、デメリットも踏まえた上での検討をお勧めします。

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