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老人ホームを経営する前に知っておくべきポイントとは?

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老人ホームを経営する前に知っておくべきポイントとは?

高齢者人口の増加を背景に、老人ホームの経営に乗り出す企業は少なくありません。
しかし入居者獲得競争も一部地域では激しくなっており、入居者が集まらないなどの理由で厳しい経営を余儀なくされる施設や企業も存在します。

また老人ホーム市場は成長市場のため中小事業者が多く、今後市場構造が変化する可能性もあります。

そこでこの記事では、今後中小事業者には経営環境が厳しくなる可能性もある老人ホームの経営に際し、最低限知るべき内容や必要とされる事柄を解説いたします。

有料老人ホームと特別養護老人ホームの違い

老人ホーム

高齢者施設には様々な種類が存在します。
この中で有料老人ホームは民間施設であり、入居者に必要とされる介護状態の程度や、負担できる資金に応じて施設を選ぶことができます。

また民間施設のため、施設毎に様々な特色を有しています。

一方で特別養護老人ホームは公的施設です。

常時介護が必要で在宅の生活が困難な場合に入居でき、また低所得者でも入居ができるよう様々な負担軽減策が用意されています。

ただし多くの地域で入居待機者が多く、希望する施設には容易に入居できない実態があります。

そして高齢者人口の急増を背景に、公的施設である特別養護老人ホームのみならず、民間施設の有料老人ホームの数も増加しています。

介護事業の売却を検討している会社や老人ホームの閉鎖が増えている

少子高齢化が進む日本において介護事業は数少ない成長市場であり、これまで多くの企業が老人ホーム事業への参入を行いました。

ソニーグループも老人ホーム事業を手掛ける程です。

その結果、老人ホームの数は大幅に増加しました。
また団塊の世代の後期高齢者入りを控えており、高齢者の人口は今後も増加します。
しかし一部地域では老人ホームの増加により、老人ホーム間の入居者獲得競争が既に激化しています。

老人ホーム事業は介護事業でありながら、不動産事業としての側面も有しており、一定の入居率を維持できなければサービスの維持ができません。

よって入居者の獲得が進まず、入居率の低迷が続けばいずれ事業は立ち行かなくなります。

2000年に介護保険制度がスタートして、既に20年の歳月が経過しようとしています。

高齢者人口の増加という追い風が今もある一方で、市場やサービスの枠組みが概ね固まる中、十分な利用者を集めることができない老人ホームも存在します。

その結果、事業の売却を行い介護事業から撤退を行う企業も現れ、また老人ホームの閉鎖も発生しています。

実際に東京商工リサーチによると、2019年上期は老人福祉・介護事業所の倒産件数が55件となり、過去最多となっています。

参考ページ:介護付有料老人ホームのM&Aについて

老人ホームの立ち上げ・経営をするポイント

腕を組むビジネスマン

介護市場の拡大は続いていますが、既に単純に誰でも事業拡大が可能、というステージではありません。

その中で特に有料老人ホーム事業における、立ち上げ・経営のポイントとして下記をあげることができます。

  • 有料老人ホームの種類を把握する
  • 有料老人ホームの立ち上げに必要な要素を把握する
  • 経営スキルだけでなく介護の知識も必要
  • 介護報酬についてもきちんと理解する

有料老人ホームの種類を把握する

代表的な有料老人ホームには下記の種類が存在します。

  • 特別養護老人ホーム
  • 介護付有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム

単に有料老人ホームと呼ばれることも多いのですが、各施設によりサービス内容などが異なります。

また後述しますが、民間施設である有料老人ホームの半数以上(6割)が住宅型有料老人ホームです。

ここ数年は住宅型有料老人ホームが増加している

高齢化社会の進展を背景に様々な有料老人ホームが増加していますが、特に住宅型有料老人ホームの数が増加しています。
先に取り上げた施設では、公的施設の特別養護老人ホーム以外は民間が運営する施設です。

しかし住宅型有料老人ホームを除くと、いずれの施設も何らかの形で公的支援が行われています。

高齢者人口の増加による社会保険料の増加を背景に、政府・自治体は介護費用の抑制政策も行っています。

その結果、公的な支援がない反面、規制が少ない住宅型有料老人ホームの数が増加し、有料老人ホーム全体の約6割が住宅型有料老人ホームとなりました。

ただし介護付有料老人ホームと同等の介護サービスを提供する住宅型有料老人ホームも増加しており、住宅型有料老人ホームでは施設毎に幅広い特色あるサービスが提供されています。

参考ページ:住宅型有料老人ホームのM&Aについて

有料老人ホームの立ち上げに必要な要素を把握する

有料老人ホームの立ち上げには、最低限下記が必要です。

  • 一定以上の入居者の確保
  • 一定以上の介護職員・人材の確保
  • 開業資金の用意

一定以上の入居者の確保

有料老人ホームにおいて特に住宅型有料老人ホームでは、主な収入は入居者が支払う入居費などから構成されます。

入居費は入居者の数で殆どが決まるため、施設を維持するためには一定数以上の入居者の確保が不可欠です。

施設により数字は若干上下しますが、一般的に有料老人ホームの経営は入居率70%が最低ラインといわれています。

よって事業開始後一定期間が経過した後は、入居率70%以上など一定以上=損益分岐点以上の入居率の維持が欠かせません。

参考資料:
https://www.smbc.co.jp/hojin/report/investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport063.pdf

一定以上の介護職員・人材の確保

有料老人ホームでは入居者の確保ができた場合でも、サービスを提供する介護職員などの人材が確保できなければサービスの提供ができません。

少子高齢化の進展により国内全体で人手不足の状況となりつつあり、介護市場は最も人手が足りない市場の1つです。

各介護サービス事業者は介護職員の確保に苦労しており、有料老人ホームの運営では、介護職員の確保に予想以上の時間と資金が必要となる場合があります。

開業資金の用意

介護事業に限りませんが、事業立ち上げには一定の自己資金が必要です。

有料老人ホームは入居者の居住施設が必要であり、必要とされる自己資金は訪問介護事業所や通所介護事業所に比べ多額とならざるをえません。

通常のアパート経営においても、アパートを建設する際は銀行からの融資が欠かせません。

有料老人ホームも同様に、体力ある上場企業などが新規事業で取り組む場合を除けば、自己資金に銀行融資も加えまとまった資金を用意する必要があります。

経営スキルだけでなく介護の知識も必要

事業として見た場合、有料老人ホームの運営にはマネネジメント能力・係数把握能力・マーケティング能力等の経営スキルが必要です。

よって老人ホーム事業を展開する際は、経営スキルを持った人材が欠かせません。

しかし介護事業は介護現場を抱える事業であり、現場の知識=介護の知識も必要不可欠です。

最低限度の介護知識や経験のない人間が介護施設の運営を行っても、現場の職員からの信頼は得られません。

また問題が発生した際に、最終的に適切な判断を下し責任を負うのは運営側です。

介護の知識なしに、重大な問題に正しい判断を下すことは難しいといわざるを得ません。

介護報酬についてきちんと理解する

介護事業は福祉の側面も有しています。
しかし介護であっても“事業”である限り、お金の問題は避けて通ることができません。

住宅型有料老人ホームの場合、入居費用に介護報酬は含まれません。

ただし例えば介護サービスを外部に委託するか最終的に自社で提供すべきか、その判断を下すために介護報酬の理解は不可欠です。

老人ホームの運営には介護現場の経験や知識のみならず、介護報酬についても正しい理解が必要となります。

老人ホームは経営が安定すれば収益も安定する

腕を組む男性

老人ホームの経営には、入居者の安定と介護職員の安定の両者の安定が必要です。

尚、国内全体が人手不足の中で、後者の介護職員の安定の重要度は以前に比べ増しています。

しかし逆に両者の安定があれば、不動産事業の家賃収入に該当する安定収入が得られる有料老人ホームの運営は、他の介護事業に比べ安定的な収益が期待できます。

有料老人ホームは施設建設のために多額の資金が必要となり、入居者の確保と介護職員の確保という2つのハードルもあります。

しかし経営が軌道に乗れば比較的手堅い事業でもあります。

よって入居者や介護職員の確保のハードルはあるものの、当面高齢者人口の増加は続くため、今後も新規参入や事業拡大を行う企業は増加するのではないでしょうか。

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