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老人ホームの経営で高収益は見込めるのか

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老人ホームの経営で高収益は見込めるのか

高齢者の人口が増加し、更に団塊の世代の後期高齢者入りを控えており、老人ホーム事業への参入を行う企業が増えています。

しかし利用者や施設数が増加する一方で、中小事業者が多く大手中心に優勢劣敗が進み、今後は老人ホーム業界の構造が変化する可能性もあります。

ここでは、老人ホームの経営で高収益を上げ事業として成功を収めるためのポイントを解説いたします。

有料老人ホームへの事業参入が増えている

説明する男性

高齢化社会が到来し、また団塊の世代の後期高齢者入りを目前に控える中で、有料老人ホーム事業へ参入する企業が増加しています。

人口減少社会の日本では数少ない成長市場となる介護市場では、有料老人ホームは不動産事業としての側面もあり、比較的安定的な収益が見込めるとされています。

有料老人ホームの施設数増加を背景に、有料老人ホームの利用者数は急増しており、平成20年の183,295人が平成30年には514,017人となり、10年間で3倍以上に急増しました。

公的施設の特別養護老人ホームなどの介護老人福祉施設は、利用者が610,000人(平成30年)と各施設の中では最も多い状態にあります。

しかし現状のペースでの増加が進めば、近い将来利用者数は有料老人ホームによる逆転が予想されます。

参考資料:
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000547178.pdf#search=’有料老人ホーム+推移+平成30年’

高収益を出せる事業者と利益を出せない事業者に大別されている

高齢者人口の増加を背景に、有料老人ホーム事業に参入する企業が増加したものの、事業者間での優勢劣敗も進みつつあります。

介護サービスは特別養護老人ホームなど、公的なサービスも存在するため、採算への意識に欠ける事業者も存在します。

また高齢者人口の増加が続いているとはいえ、一部地域では有料老人ホームが増加し、入居者獲得競争も激化しています。

更に介護職員は慢性的に人手不足の状況にあり、入居者のみならずサービスを提供する介護士等のスタッフ確保も容易ではありません。

本状況から有料老人ホーム業界は、高収益の事業者と利益を出せない事業者に大別されつつあります。

介護業界は中小事業者が多い業界でもあり、今後は大手など高収益の事業者中心に、業界構造がM&Aなどの活用で変化する可能性もあります。

介護付有料老人ホームのM&Aについて

住宅型有料老人ホームのM&Aについて

有料老人ホームの収益について

有料老人ホームの主な収入源は下記となります。

  • 入居一時金
  • 月額利用料

入居一時金(前払い金)

入居一時金は入居時の一定期間分の家賃の前払いであり、多くの有料老人ホームで採用されています。

各施設毎に平均何年程度その施設に居住するかを想定し決められています。
大半の施設は5年分程度ですが、10年以上の施設もあり施設により幅があります。

ただし近年では入居一時金をゼロとして、月額利用料のみで利用可能な施設も増加しています。

月額利用料

月額利用料は、居住費(家賃等)・食費・水道光熱費などを居住期間に毎月支払う費用です。ただし入居一時金が高額の施設では月額利用料が抑えられます。

介護費は入居者がサービス利用に応じて支払う

一部を除き有料老人ホームは基本的に居住施設との扱いであり、介護サービスは別の事業者が提供する形となります。

よって有料老人ホーム単体では介護サービスからの収益を上げることはできません。
ただし自社で別途介護サービスを提供する事業者も存在します。

尚、行政から特定施設の指定を受けることで、介護付有料老人ホームとして施設サービスと介護サービスの一体提供が可能です。

しかし特定施設の指定を受けずとも、自らのグループ企業などで介護サービスの提供ができます。
よって有料老人ホームであっても、特定施設と同等のサービスを提供する有料老人ホームも増加しています。

老人ホームを経営するうえで利益を出すには?

指摘する女性

老人ホームの経営で利益を出すには、最低限下記を事前に行う必要があります。

  • 参入する前に綿密な事業計画を立てる
  • 効率的な経営を心がける
  • 介護報酬の改定に留意する
  • 入居者の要介護度にも留意する
  • 特定施設であれば収益が安定する見込みが上がる

参入する前に綿密な事業計画を立てる

老人ホームに限りませんが、新規事業に参入する際は事業計画書の作成が必要不可欠です。

主に事業展開に必要な人・モノ・金の面から事業計画書を作成し、実際に利益を上げられるかを事前に検証する必要があります。

高い土地を購入して更に高い建築費で施設を建設すれば、施設の損益分岐点は上昇せざるを得ません。その結果、入居率100%でなければ採算が取れない施設なら、その施設の失敗は必然です。

事業計画書を作成しても、計画通りに進まないのが事業運営でもあります。
バラ色の事業計画書ではなく、現実的な計画書を作成し、その上で継続的な利益計上が可能なのか、十分な検討を行う必要があります。

効率的な経営を心掛ける

介護業界は慢性的に人手不足の状態にあります。
よって限られた人員でのサービス提供をある程度前提とせざるをえません。

そのためには効率的な経営が不可欠です。
無理・無駄を減らして効率的なサービス運営を行うことは、利益計上にもつながります。

ただし職員に無理をさせる行き過ぎた効率化は逆に効率を下げ、また職員離職のリスクが生じ本末転倒の結果をもたらします。
運営側と現場側の密なコミュニケーションを踏まえた上で、業務の効率化を進める必要があります。

介護報酬の改定に留意する

政府は3年に1度のペースで介護報酬の改定を行っています。

前回の2018年(平成30年度)は+0.54%の改定となり増額がなされました。
しかし2015年(平成27年度)は▲2.27%の減額改定が行われています。

介護事業を支える介護報酬は、3年に1度の介護報酬改定に大きな影響を受けます。

介護事業を展開する場合、3年に1度の介護報酬改定に大きな影響を受ける=介護報酬の改定で収益が減少するリスクがある、という点を踏まえる必要があります。

参考資料:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000196991.pdf
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000081007.pdf

入居者の要介護度にも留意する

入居希望者には様々な要介護度の方がいます。
事業計画書の作成段階で検討すべき事項ですが、同等の要介護度の入居者を集めることで事業の効率的な運営や収益力の向上が可能です。

例えば要介護度の低い入居者が多い場合、介護サービスは外部委託が合理的なケースがあります。

一方で要介護度の高い入居者が多い場合は、自ら介護サービスを提供することで企業全体としての収益力強化につながることもあります。

老人ホーム運営には入居率の上昇が不可欠です。
しかし施設をどのような方向性で運営するのか、という点を踏まえた上で、入居者の要介護度に留意する必要があります。

特定施設であれば収益が安定する見込みが上がる

行政から「特定施設入居者生活介護」(特定施設)の指定を受けることで、老人ホームは職員が住宅サービスと介護サービスを一体で提供することが可能となります(住宅型有料老人ホームから介護付有料老人ホームとなる)。

住宅型有料老人ホームの場合、収益は入居者が支払う入居費用が中心となります。

しかし特定施設(介護付有料老人ホーム)なら、家賃等の収入に加えて介護サービス収入も一体で得ることができます。それにより施設の収益力向上につながります。

ただし介護報酬増加に歯止めがかからない中で、行政は特定施設の総量規制を行っており、特定施設の指定取得は容易ではない現実も存在します。

経営がうまくいけば高い収益が見込める

二人の経営者

不動産事業の側面を有する老人ホーム事業は、事業が軌道に乗れば安定的な収益を見込むことができます。

また介護サービスの取り組み方次第では、収益力の底上げも可能です。

ただし有料老人ホーム事業は入居者及び介護職員という人を扱う事業であり、不動産事業のイメージのみでの取り組みでは事業は失敗に終わる可能性が高いといえます。

経営が軌道に乗れば比較的手堅い事業となる老人ホーム事業ですが、経営を軌道に乗せるためには、介護サービス事業及び不動産事業の両者の観点から、事前に入念な準備が不可欠といえるのではないでしょうか。

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