病院・クリニック

増加する後継者不在の医療機関とM&A

増加する後継者不在の医療機関

医師の高齢化

日本では皆様もご存じの通り、高齢化が進んでおり超高齢化社会が目の前に見えております。

65歳以上人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった平成27年に3,379万人となり、「団塊の世代」と呼ばれる人々が全員高齢者になる令和7年には3,653万人まで増加するといわれいます。
令和25年に3,953万人となるピークを迎えるまでは、増え続けると推計されており、令和19年には高齢者割合が33%を超え、国民の3人に1人は高齢者となります。

医師についても高齢化が進み、厚生労働省の資料によると医師の平均年齢は年々上昇しており、国としては若手医師の育成などの施策に取り組む方針ではありますが、老々介護、老々医療が益々加速していくことが予測されます

出典:内閣府「令和5年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況)
出典:厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

 

医療機関の休廃業・解散が増加している

帝国データバンクの調査によると2023年の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産は41件となり、2年連続で40件を超えています。また負債総額は253億7,200万円となり、過去10年で最大となりました。業態別にみると、「病院」が3件(負債147億1,900万円)、「診療所」が23件(負債55億9,700万円)、「歯科医院」が15件(負債50億5,600万円)となり、「診療所」は2009年(27件)、「歯科医院」は2018年(23件)、2022年(16件)に次いで多くなっています。診療所は高齢化問題や健康問題を理由に事業継続を断念する施設が増える中で、過剰債務などを理由として廃業ではなく、法的整理を選択するケースが増える可能性があると示しました。

出典:帝国データバンク 倒産集計より

後継者不在の医療機関が増加

医師の高齢化により、後継者を探す医療機関からのご相談が年々増加しております。
大きな理由としては以下の通りです。

①後継者候補が病院勤務を希望されている

医院、クリニックの乱立、自然災害に対してのリスク、コロナ等の突発的な災害リスクなどを鑑み、開業を希望される医師は減少し、病院などで永続的に勤務することを希望される医師が増加しております。その背景もあり、開業医の後継者候補の医師についても地元に戻らず、都市部の病院勤務で生涯を過ごそうとお考えになられる方が増えています。

②後継者候補に継がせたくないという開業医が増えている

診療報酬の改定、競合クリニックの乱立による患者の分散など、開業時に比べると開業医の創業者利益は手に入れづらくなっています。

わざわざその厳しい環境下に身内である後継者候補に引き継がせるよりかは、

「第三者に承継し、創業者利益を得た上で相続する」

といった方向性に舵を切る方も多くなってきました。

医療機関の第三者承継のメリット

地域医療の継続

後継者候補が不在である院長先生の悩みは地域医療の継続にあります。

比較的都市部で同科目が乱立しているような地域であればそこまで影響はないかもしれませんが、
同科目を標榜する医院や病院がその地域では少ない場合は、

地域医療を存続させるために、閉院せずに続けられる限り続ける。

といった医院は各所で存在します。

しかしながら、限界はいつか到達してしまいます。

そうなると周りに及ぼす影響は少なくありませんので、
身体が動き、判断ができるうちに第三者に承継するといった選択を取ることも考えられます。

承継の際に資産を構築できる

閉院すると、清算するためにコストがかかったりしますが、
承継する場合には、対象法人の資産状況によっては創業者利益を得られる可能性があります。
(医療法人の場合は新法か旧法によっても変わります。)

閉院をお考えになられた場合には、承継も視野に入れてご相談されることをお勧めいたします。

解決策

後継者不足の解決策として、第三者の承継を考える際に、2通りのやり方があります。

①個人の開業希望医師に承継する

前述した通り、病院勤務希望の医師が増えています。
一方で、個人で開業を希望される医師も一定数はいらっしゃいます

標榜科目や立地が対象医院と一致する必要がありますが、
意欲の高い若手の医師に承継することで、地域医療の末永い継続にも繋がります。

デメリットとしては、個人の開業希望の医師は立地のこだわりが強い方が多いため、

「希望する立地が合致するかどうかが承継できるかどうかの争点になりやすい。」

という点です。幅広く開業希望医師を紹介できる実績が必要となるでしょう。

②医療法人に承継する

地域の医療法人において、承継できる医院などを探している法人は一定数いらっしゃいます。
特にその医療法人と同一医療圏の場合は、興味を持ちやすく話もまとまりやすいケースが多いです。

デメリットとしては、

「承継先の医療法人内で医師の保有ができているかどうかです。」

すぐに医師を入れることができないこともありますので、その場合は承継だけを先に済ませてから、
新たな医師が勤務できるようになるまで、雇われ院長として残留することで、承継を成立させることもございます

CBパートナーズでは、上記の①②どちらも対応しております。
もし、ご興味をお持ちいただけましたら、まずはお問い合わせをお願いいたします。

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第三者承継の事例

では実際の第三者承継の成約事例をご紹介します。

【ケース1】

売手様情報

  • エリア:北海道
  • 業態:無床診療所
  • 譲渡形態:持分譲渡
  • 医院数:1医院
  • 年間売上高:約3.1億円
  • 譲渡希望時期:2年以内

売手様は後継者不在のため、数年前から医局やお知り合いと複数回面談をされましたが、叶わずCBパートナーズへご相談いただきました。成約までの期間は約18か月間で、大規模な法人から開業希望の個人まで広くアプローチした上で広域でクリニックを展開する医療法人グループへの承継が決定しました。

買手様情報

  • 希望エリア:北海道~関東
  • 業態(属性):医療法人グループ
  • 事業所数:7医院・2施設
  • 譲受希望理由:チェーン化推進のため
  • 譲受希望時期:随時

ポイント

  1. 規模間や患者数が多いクリニック様は、個人開業医では承継が難しいケースが多い。
  2. 買手様は優秀な管理医師や事務長職をベースとして、多数の拠点展開を行っている。
  3. 譲渡対価の調達を譲渡対象法人で行う「LBOスキーム」のご相談が増えている。

 

【ケース2】

売手様情報

  • エリア:関西
  • 業態:無床診療所
  • 譲渡形態:事業譲渡
  • 医院数:1医院
  • 年間売上高:約8,000万円
  • 譲渡希望時期:2年以内

ご自身の高齢化と、後継者不在に悩まれている売手様から、当社に第三者への譲渡相談をいただきました。開業のための医院の承継を検討されていた買手様に当該案件をご紹介したところ強い関心を持たれ、両者の面談を設定しました。承継にあたっての条件や医療に関するお考えが合致され、約24か月間の期間を得て成約に至りました。

買手様情報

  • 希望エリア:関西地方(土地感があるエリア)
  • 業態(属性):個人開業希望医
  • 専門(科目):消火器内科、内視鏡
  • 開業資金:約3,000万円(借入含む)
  • 譲受希望時期:随時

ポイント

  1. 無床診療所の譲渡案件は2年以上かかることもあり、早めの準備が必要
  2. 個人医師でも新規でのクリニック開業だけでなく、承継の視野に入れる方も増えている
  3. 小体クリニックでもマッチングの可能性があるが、金銭面等の条件が高い場合は難しいことも

さいごに

CBパートナーズでは医療業界の承継問題解決に特化した経験豊富なアドバイザーが揃っております。幅広いネットワークとノウハウで思いに寄り添ったサポートをさせていただきます。 運営されている法人の価値が知りたい、承継の流れが知りたいなど、 どんな内容でも構いませんので、気になることがございましたらお気軽にお問い合わせください。

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