調剤薬局のM&Aについて、どのようなイメージを持ちますでしょうか?

M&Aという単語には、「乗っ取り」や「敵対的な買収」のようにあまり良いイメージを持たれてはいらっしゃらないかもしれません。
しかし、調剤薬局のM&Aの実情は、ほとんど敵対的な買収は起こりません。
逆に、後継者問題や人手不足、経営への疲れ、従業員の待遇改善等、譲渡側の希望に沿ったものを解決するための施策として行われることが非常に多いのが特徴です。

本ページでは、調剤薬局のM&Aの業界動向やポイントを調剤薬局M&A成約件数日本No.1のCBパートナーズがご紹介させていただきます。

 

調剤報酬改定後の薬局業界の現状 Current status

業界定義

調剤薬局とは、薬剤師が調剤を行い、販売または授与する施設のことを指します。 

調剤以外でも、既製の医薬品や一般雑貨の販売も行っている施設も多く、営業時間内には薬剤師が常駐していることが必須となります。また、日本の調剤薬局市場全体でも、大手チェーンのシェアは小さく、中小規模の調剤薬局が乱立している状況のため、調剤薬局の経営者自らが薬剤師として現場に立っていることも多いです。

調剤薬局業界のM&Aの動向

薬価・調剤報酬改定によって、調剤薬局の収益性が大きく変化してしまうことが特徴です。 

また、後継者不足、人材不足や経営への疲労や経営者の健康状態が譲渡理由になることが増えてきています。 2019年現在は、調剤薬局のM&Aは最盛期にあると言えますが、少しずつ譲受(買い手)側は慎重に判断するケースが増えてきており、譲受側の買収基準がシビアになってきていると言えます。 

医薬分業が日本で始まったことから、調剤薬局は爆発的に増え、現在ではコンビニエンスストアの数よりも多い調剤薬局が存在します。 しかし、市場の成長率はここ数年横ばいであるため、調剤薬局の譲渡をお考えになる経営者の方は年々増加していると言えます。 

逆を言えば、譲受(買い手)側としては、譲渡希望の調剤薬局が増えることによって、選択肢が広がり基準がシビアになっているとも言えます。この動きは今後も続くと見られ、譲渡側としては、結果的に譲渡競争が激化し、譲渡対価の低下が想定されます。

M&Aを活用するメリット

調剤薬局業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。

譲渡側のメリット

  • 創業者利益確保
  • 後継者問題の解決
  • 薬剤師の確保
  • 従業員の待遇改善
  • 仕入れメリット
  • 個人保証の解除(株式譲渡の場合)
  • 薬局閉鎖の回避
  • 精神的/体力的な負担の解消

それぞれ内容を下記で詳しく解説いたします。

創業者利益確保

M&Aは株式の売買によって行われるケースが殆どです。創業者が自ら株式の大半を有する調剤薬局の場合、株式の売却により創業者は創業者利益の確保が可能となります。

株式売却による創業者利益の確保には大きく分けて、IPO(株式上場)とM&Aの2つの手段があります。しかしIPOは多店舗展開による売上及び利益拡大が必要であり、創業者利益の確保を目的とすることは現実的ではありません。

一方でM&Aの場合、売り手と買い手が合意できれば早期に実行可能です。よって創業者利益の確保という観点では、M&Aの活用が現実的です。

後継者問題の解決

急速な高齢化が進む日本では、調剤薬局もその影響を免れることはできません。調剤薬局経営者の高齢化も進んでおり、少子化も進む中で後継者不足が現実化しています。

自らの子供が後継者となることが理想的ですが、少子化もあり子供に薬局を継がせるケースはそれほど多くありません。一方でこれまでの貢献度の高い従業員に株を譲り事業承継を行うケースも考えられますが、従業員個人に株式取得を行う資金力があるのか、という問題に直面します。

よってM&Aを活用して他の企業に調剤薬局を売却することは、後継者問題の大きな解決方法となりえます。

参考URL:https://fundbook.co.jp/mapharmacy-ma-merit-demerit/

薬剤師の雇用の維持確保

個人経営の調剤薬局であっても、従業員として薬剤師を雇い経営を行っている企業は多くあります。薬価引き下げや、都市部では調剤薬局間の競争激化もあり、個人経営の調剤薬局の場合、経営面では不安定な面は否定できず、薬剤師の雇用も不安定にならざるをえません。

M&Aにより大手企業グループの傘下入りすることは、薬剤師の雇用の確保及び安定化にもつながります。全国的に見れば薬剤師は不足しており、調剤薬局の買い手は薬剤師も求めています。またM&A時の契約書に、従業員(薬剤師)の雇用の維持を含めることも可能です。企業売却という手段を活用することは、従業員の雇用の維持・確保にもつながります。

従業員の待遇改善

個人経営独特の薬局の雰囲気など、個人経営の調剤薬局の良さも存在します。しかし待遇面では上場する調剤薬局などに比べ、改善には個人経営では限界があります。

M&Aにより大手企業グループの調剤薬局に会社を売却することは、従業員の待遇改善につながるケースが少なくありません。大手の傘下入りすることで、従業員の給料上昇の可能性があります。また安定した経営環境の下で、継続的な勤務も可能です。更に多くの上場会社では、独自の福利厚生サービスを提供しています。

M&Aにより大手の傘下入りする場合は、従業員の待遇改善が図られる可能性は高いといえます。

仕入れメリット

M&Aによる企業買収には、規模の利益が確保できる、というメリットも存在します。

仕入れ面では、大手の傘下入りとなればグループ全体としての仕入れとなるため、バイイングパワーが働き、それまでに比べ易い価格での仕入れが可能です。そして仕入れ価格の削減は、利益の改善に直結します。

企業を売却して大手の傘下入りすることは、経営の数字的な面では、特に仕入れにおいて恩恵を享受できます。

個人保証の解除(株式譲渡の場合)

個人経営の調剤薬局でも、銀行などから融資を受けて事業展開を行うケースは少なくありません。そして融資を受ける際は、経営者の個人保証が求められることが殆どです。

その結果、事業に失敗し企業が倒産した場合、融資金額は経営者が個人で保証する必要があります。経営者の個人保証のプレッシャーは、実際に経営者とならなければ理解できない、といわれます。

調剤薬局に限りませんが、M&Aにより株式の譲渡がなされると、経営の主導権は第三者に移るため、個人保証は外れます。

企業売却により借入に対する個人保証が解除できる、という点は、経営者個人の精神的な大きな負担を軽減することになります。

薬局閉鎖の回避

薬剤師は年間の人材供給が限られる中、特に地方を中心に慢性的な人手不足となっています。また高齢化が進む地方では、1件の調剤薬局が地域医療を支えるケースも少なくありません。

そんな中で後継者不足等の理由で調剤薬局が閉鎖となれば、地域医療が成り立たなくなるリスクが顕在化します。

個人経営の調剤薬局であっても、その閉鎖の影響が広範囲に及ぶケースもあります。M&Aでの売却を選択することで、薬局閉鎖による各方面への悪影響を避けられます。

精神的/体力的な負担の解消

個人の調剤薬局といえども、オーナーは経営者には違いありません。個人オーナーとして調剤薬局の経営を切り盛りしてきたオーナーでも、年を重ねることで精神的・肉体的に以前のような無理が効かなくなるのはやむを得ません。

後継者が存在する場合、徐々に仕事を後継者に引き継ぐなどして負担を減らすこともできます。しかし後継者がいない場合は、経営を辞めるまで精神的・体力的なプレッシャーはなくなりません。

調剤薬局を売却して経営から離れることで、経営者はこれまでの精神的・体力的なプレッシャーから解放されることになります。

譲受側のメリット

調剤薬局を買収=譲受側のメリットとしては、次の4点が考えられます。

  • 市場シェアの拡大
  • 人材確保
  • 新規参入スピードの向上
  • ドミナント戦略の実施

それぞれ下記で内容を詳しく解説いたします。譲受側の狙いやメリットを知ることで、売却する際の意思の疎通などがスムーズになる効果も期待できます。

市場シェアの拡大

同業企業間におけるM&Aの最大のメリットは、市場シェア拡大にあるといっても過言ではありません。高齢化社会の到来による医療費増大を背景に、政府は医療費削減のために薬価報酬の引き下げを行っています。生き残りのための規模拡大は、合理的な選択肢です。

また特に都市部では調剤薬局間の競争も激化しており、M&Aにより市場シェアを拡大し、仕入れコスト削減等で競争力を向上させることは、今後の生き残りのための重要な戦略となります。

参考記事:http://www.maport.jp/news/010/
https://jms-support.jp/knowledge/ma_trend/medicalcare_welfare/drugstore/1370.html

人材確保

国家資格である薬剤師は、人材の供給量が年間一定です。よって採用の問題はお金だけでは解決できない側面があります。また薬剤師の都市部集中、地域偏在などで需給バランスが崩れており、特に地方では慢性的な薬剤師不足にあります。

M&Aで調剤薬局を買収することで、買収側は被買収側企業に所属する薬剤師の確保が可能です。被買収側企業に所属の薬剤師数が多い場合、M&Aは効率的な薬剤師確保につながります。

調剤薬局の新規出店のみならず、高齢化社会の中では既存の店舗を維持するためにも薬剤師の確保は必要不可欠です。調剤薬局にとってM&Aは、薬剤師不足を解消する1つの解決方法としての側面も有しています。

参考記事:https://mastory.jp/%E2%80%8B%E8%AA%BF%E5%89%A4%E8%96%AC%E5%B1%80%E6%A5%AD%E7%95%8C%E3%81%AEM&A

新規参入スピードの向上

M&Aには市場シェア拡大という効果もありますが、“時間を買う”という側面もあります。調剤薬局の場合、新規出店をゼロから行うより既存の調剤薬局の買収を行うことで、新規出店に比べスピーディーに事業展開できる可能性があります。

既に顧客が付いてビジネスとして成立している店舗の場合、若干プレミアを付けて(=割高な価格で)買収した場合でも、継続的に利益が計上できれば最終的には投資の回収に加えて事業拡大という目的も達成できる可能性が高いといえます。

新規出店を行い数年かけて店舗運営を軌道に乗せるより、既存店を買収することでスピード感ある事業展開ができます。

ドミナント戦略の実施

地域を絞って集中的に出展するドミナント戦略を実施する際も、M&Aは有効です。

ドミナント戦略を有効に機能させることができれば、同一地域内での市場占有率向上・知名度向上により、売上増やコスト削減が可能となります。

同一地域内での調剤薬局を複数買収することで、ドミナント戦略は着実に実行できます。また同一地域で新規出店を複数行うよりも、M&Aならスピーディーに目標の達成も可能です。

ドミナント戦略の実行においてM&Aを活用することは、先の新規参入スピード向上と同様、事業拡大を新規出店に比べ優位に進めることにつながります。

参考記事:https://ma-jouhouhiroba.jp/procmmt_column/20170719/2631/

調剤薬局M&Aでおさえておくべきポイント Points

主要企業

 

法人名 売上高/年 店舗数
アインホールディングス 2683億8500万円 1066
日本調剤 2412億7400万円 558
総合メディカル 1354億3100万円 674
クオール 1455億1600万円 696
メディカルシステムネットワーク 939億7700万円 387
ファーマライズホールディングス 545億6200万円 316
メディカル一光 309億1400万円 94

 

※2018年3月期決算より抜粋

上記のような主要な企業がありますが、先述した通り、
調剤薬局業界のシェアでは、上位10社で15%程度しかありません。

また、個人レベルで経営されている調剤薬局が市場全体の7割を占めるともされています。

調剤薬局M&Aの特徴

調剤薬局のM&Aは、通常の企業とは少し違った側面があります。
そのため、調剤薬局業界に特化したM&Aのポイントをご紹介させていただきます。

売上と利益と技術料

もちろんですが、他の業態と同じように売上/利益の状態は重要な評価指標になります。

しかし、調剤薬局ではそれに加え、技術料や取り扱っている処方箋の種類(何科の処方箋か等)によっても、買い手の買収意向は変化してきます。

また、近くの医療機関にもよりますが、処方箋枚数と単価についても、重要な指標となります。

処方元医療機関の集中率

調剤薬局は単独ではなかなか売上を出すことが難しく、実際には医療機関の近くに店舗を構え、その医療機関から出された処方箋で売上の多くを作っている調剤薬局が多いです。

いわゆる門前薬局ということになりますが、医療機関別の処方箋割合を示す集中率で見た場合、1つの医療機関の集中率が高すぎると、買い手側から1つの医療機関に依存しているために少しリスクが高いと見られることがあるため、不利になることがあります。

逆に、集中率が低く、様々な医療機関からの処方箋によって、売上を出している場合には、評価が高くなりやすい傾向にあります。

医療機関の医師の状況

処方元医療機関の集中率と密接に関係してくる項目ですが、調剤薬局は医療機関からの処方によって売上を出しているという状況から、処方元医療機関の医師の年齢や健康状態、後継者の有無なども調剤薬局のM&Aはポイントになってきます。 

というのも、譲受側企業からすれば、決算書上では良い店舗であったとしても、処方元の医師が高齢で後継者がいないにもかかわらず1年後に引退する予定である場合などは、買収した店舗の収益性がガクッと落ちてしまう可能性があるからです。 

そのため、調剤薬局のM&Aを行う場合には、調剤薬局の状況だけではなく、近くの医療機関の情報も含めて評価の対象となることに注意が必要です。

調剤薬局M&Aの完了までにかかる期間

一般的にM&Aが実施されるには6ヶ月~1年程度の期間が必要とされますが、調剤薬局のM&Aも同様の期間が必要です。尚、調剤薬局のM&Aは病院のM&Aと違い、許認可を持つ行政が関与することは殆どないため、病院間のM&Aに比べれば時間はかかりません。

M&Aはケースバイケースであり、1ヶ月程度でトントン拍子に話が進む・お互いのニーズがあっても次から次に問題が発生して話が殆ど進まない等、標準化できない面もあります。

中小企業のM&Aで期間が長引く原因としては、株式譲渡価格が原因となるケースが多くなります。経営者としては、高く会社を売却したい、という希望は当然です。しかし買収側は経営者の思いとは別に、財務状況など客観的な視点で譲渡価格は算出されます。

売却の想定価格と提示価格の開きが大きく、経営者の気持ちの整理がつかず時間だけが流れていく、というケースはしばしば発生しています。

参考記事:https://chozaiyakkyoku-ma.com/2018/11/19/%E8%AA%BF%E5%89%A4%E8%96%AC%E5%B1%80%E3%81%AEma%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%82%8C%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%AE%E6%9C%9F%E9%96%93%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E3%81%AE%E3%81%8B/

調剤薬局の譲渡価額の相場

調剤薬局のM&Aを実行する際の、譲渡価額は、売上高や利益、その他の情報に基づいて決められます。

また、価額を決定する際には上場企業を参考とした、少し複雑な計算を必要とします。

各調剤薬局ごとに、計算式が少しずつ異なって参りますので、CBパートナーズの無料価値算定サービスをご利用くださいませ。

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2018年度の調剤薬局業界のM&Aの概要 2018 Summary

薬価改定の影響もあり、序盤は様子見の状況が続いていましたが、最終的には調剤薬局のM&A件数は例年並みに落ち着いた印象です。

しかし、先述したように2018年に入り、大手調剤薬局グループをはじめとして、譲受(買い手)企業がM&Aを実行(買収)する基準(目線)を少しシビアにした傾向がありました。

その影響で、少しずつ調剤薬局の平均譲渡対価に影響が出てきており、2016年、2017年であればもう少し価額が付いたであろう調剤薬局が、価額が伸び悩むことも少なくありませんでした。

2019年度の大手企業M&A戦略 2019 Prediction

数年前から、ドラッグストアが調剤業界に参入してきており、少しずつシェアを伸ばしてきた様子が伺えます。

この流れも含め、今後も大手企業の調剤薬局のM&Aに関する検討は積極的に行われると予想できますが、薬価改定等による買収基準については今後もさらにシビアになっていくと見られています。

2018年には数十店舗規模の調剤薬局グループが大手企業グループに吸収されるようなM&Aも何件かありましたが、2019年も引き続き大手グループに中小規模の薬局が吸収されていく形が大きな流れになるといえます。

最後に message

調剤薬局のM&Aは現在最盛期と呼べる状況ですが、調剤薬局の市場自体は既に横ばいの状況であり、今後調剤薬局のM&Aでの譲渡価格が向上することはあまり見込めません。

そのため、少しでも高い価額で調剤薬局を譲渡したいとなると、一刻も早く調剤薬局の譲渡を検討し、実行に起こす必要があります。

しかし、M&Aを検討した場合、経営者様ご自身が譲受企業を探すとなると、非常に負担が大きくなります。

そのため、M&Aをお考えなのであれば、調剤薬局M&A成約件数日本No.1のCBパートナーズにお気軽にご相談くださいませ。年間40件以上の成約を実現している知見と実力を、M&A成約まで無料でサポートさせていただきます。

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