Remuneration revision of dispensing pharmacies 調剤薬局の報酬改定について


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青木 祐二 - 関東地区の調剤薬局事業を担当するM&Aディレクター。 座右の銘は「成功の反対は失敗ではなく、何もやらないこと」。
いわゆる団塊の世代の後期高齢者入りを目前に控え、更なる高齢化社会を迎える日本では、政府が地域包括ケアシステムの構築を目指しています。
日本の人口構成の変化を背景とする社会保障制度改革の中で調剤報酬の改定も行われており、調剤薬局や薬剤師の役割も変化が迫られています。
調剤の報酬改定が行われる背景

日本は既に高齢化社会に突入していますが、人口のボリュームゾーンである団塊の世代の後期高齢者入りを目前に控えており、今後更なる高齢化社会が進むことが確実です。
高齢化社会の到来とともに医療・介護・年金等の社会保障費が増大しており、政府の財政を圧迫しています。
また人口に占める高齢者の割合増加は、主たる納税者である現役世代の割合低下と表裏一体であり、現役世代の社会保障費負担は既に限界が近いといわれています。
今後更なる社会保障費の増加が確実視される中で、政府は高齢化に伴う社会保障費の伸びを抑制する方針です。
また医療サービスについても「病院完結型」から「地域完結型」、いわゆる地域包括ケアシステムの構築を目指す方向に舵を切りました。
このように社会保障制度改革が進んでおり、調剤報酬もその流れに沿う形で改定がなされています。
求められる薬剤師像を理解することが必要
厚生労働省は2015年10月に薬局のあるべき姿を示した「患者のための薬局ビジョン」を公表しました。
同ビジョンは「立地から機能へ」「対物業務から対人業務へ」「バラバラから一つへ」をスローガンに“かかりつけ薬剤師・薬局”への変化を薬剤師・薬局に求める内容です。
“かかりつけ薬剤師・薬局”について具体的には、服薬情報の一元的・継続的管理、24時間対応・在宅対応、医療機関等との連携が求められています。
これらの機能実現のために、2016年から調剤報酬でかかりつけ薬剤師指導料などの点数が新設されました。
参考記事:『薬局業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム、102-103p)
調剤の報酬改定で理解すべきポイント

調剤の報酬改定について、理解すべきポイントは下記3点となります。
- かかりつけ薬局・薬剤師となること
- 構造的な転換
- 在宅での業務の推進
かかりつけ薬局・薬剤師となること
薬局及び薬剤師のかかりつけ化を促すために、政府は2016年の調剤報酬改定で「かかりつけ薬剤師指導料」、「かかりつけ薬剤師包括管理料」を新設し制度面での支援を行っています。
そしてかかりつけ薬剤師となるための下記要件を定めました。
- 3年以上の保険薬局勤務経験
- 同一の保険薬局で週32時間以上勤務
- 勤務先の保険薬局に12カ月以上在籍
- 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定薬剤師の取得
- 医療に係る地域活動や取り組みへの参加
「患者のための薬局ビジョン」では薬局及び薬剤師のかかりつけ化について、服薬情報の一元的・継続的管理、24時間対応・在宅対応、医療機関等との連携を求めていますが、要件としては上記を充足する必要があります。
参考記事:『薬局業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム、104-105p)
構造的な転換
薬局及び薬剤師のこれまでの主な業務は、外来患者が持参する処方箋を受け付けて調剤すること、でした。
しかし政府が2025年に構築を目指す地域包括ケアシステムの下では、薬局・薬剤師の役割は変化せざるを得ません。
今後は患者一人一人に向き合い、また医療機関や介護施設等との連携が必要な地域包括ケアシステムの一員としての役割が求められます。
在宅での業務の推進
これまでは患者が薬局に訪問して薬剤師が処方箋を受け付けて調剤する、という流れが一般的でした。
しかし地域包括ケアシステムの下では在宅医療の拡充が図られるため、薬局や薬剤師側が患者を訪問する、という従来とは180度異なる対応も必要です。
【参考記事】
厚生労働省「在宅医療における 薬剤師の役割と課題」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000zap2-att/2r9852000000zatv.pdf
調剤薬局が今後生き残るためには

政府は2025年の地域包括ケアシステム構築を目指し、様々な制度改正を行っています。
その中で調剤薬局及び薬剤師もかかりつけ化が求められるなど、変化が迫られています。
特に、今後はかかりつけ薬局の一環として、オンライン等の対応を求められることも考えられます。
制度対応のために新たに多額の投資が必要になるなどの課題も少なくありません。
長年慣れ親しんだ業務の進め方を簡単には変えられない場合であっても、常に調剤業界に求められることは対応できるようにしておくのが生き残りのためのポイントと言えそうです。
M&Aも視野に入れるべき
地域包括ケアシステム構築という政府の政策目標の中で、調剤薬局に期待される役割が大きく変化しようとしていますが、変化への対応が難しい調剤薬局も存在します。
変化は待ったなしの状態であり、最終的に廃業を余儀なくされる可能性すらあります。
しかし制度改正への対応が困難と判断する場合は、会社をM&Aで売却することも選択肢の1つです。
自ら経営する調剤薬局が今後の変化に対応できるのか、と考える際にM&Aでの企業売却の可能性も探るなら、まずはお気軽に調剤薬局のM&A経験豊富なCBパートナーズにご相談ください。
まとめ
団塊の世代の後期高齢者入りが目前に控えており、今後日本社会は更なる高齢化を迎えます。
政府は社会保障制度を維持するために2025年の地域包括ケアシステム構築を目指していますが、その中で調剤薬局及び薬剤師の役割も大きな変化が迫られます。
既に調剤報酬に「かかりつけ薬剤師指導料」が設けられるなど、制度面の変化が生じていますが、今後一層の変化が必要です。
ただし大きな環境変化を前に、事業をM&Aで売却する、という選択肢も存在します。
環境変化に対応して業務を変化させる決断を行うのか、自力での変化は難しいとしてM&Aでの事業売却を決断するのか、それともこれを機会に廃業を決断するのか、いずれの場合でも調剤薬局には今後に向けた“決断”が求められるタイミングが来ているのではないでしょうか。