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ホスピス型住宅とは?有料老人ホームとの違いも解説!

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車いすにのる高齢者男性に肩を回す介護士

はじめに

今後、高齢化の影響により医療機関での患者の受け入れが困難になると予測されるなかで、在宅医療・訪問看護のニーズが増大しています。
その中でも、末期がんや難病などを抱えた医療行為が必要かつ、自宅での治療が困難な方の受け皿として、自宅と病院の中間の役割をもつ「ホスピス型住宅」が近年増えてきています。

本コラムではホスピス型住宅の特徴や、有料老人ホームとの違いなどについて解説します。

ホスピス型住宅とは

■ホスピス型住宅 急増の背景

高齢化の進展に伴い、医療費削減の影響で病床数は減少していますが、2040年頃には団塊の世代が平均寿命を迎え、年間死亡者数は167万人に達すると予測されています。こうした状況を受け、政府は病院以外での看取り体制の整備を進めています。しかし在宅や介護施設での受け皿はまだ不足しており、末期医療を担う「ホスピス型住宅」の開設が急速に増えています。

■ホスピス型住宅の基本概要

ホスピス型住宅とは、末期がんや難病で回復が見込めないと医師に診断された患者が入居できる介護施設です。入居期間に制限はなく、身体的・精神的ケアを重視。痛みや症状の管理など医療的サポートに加え、心理社会的支援や家族へのサポートも行います。静かで落ち着いた自宅に近い環境で、最期の時間を快適に過ごせることが特徴です。

■ホスピス型住宅の特徴

ホスピス型住宅は以下のような特徴があります。

  1. 専門的なケアと支援
    終末期や末期疾患を持つ患者に対して専門的な医療ケアが提供されます。医師、看護師、ソーシャルワーカー、カウンセラーなど、多職種によるチームが患者と家族を支援します。
  2. 苦痛の軽減と症状管理
    患者の苦痛を軽減するための積極的な症状管理が行われ、痛みや吐き気の管理、呼吸のサポート、心理的な安定の促進などを行います。
  3. 心理的・精神的サポート
    患者が安らぎを感じ自分らしい最期を迎えられるように、心理的および精神的な支援が提供されます。これにはカウンセリング、スピリチュアルケア、心理社会的な支援が含まれます。
  4. 家庭的な環境と快適さ
    家庭的な雰囲気を大切にした落ち着いた環境で、面会制限のない施設が多く、家族と一緒に時間を過ごすことができます。
  5. 家族へのサポートと教育
    家族に対しても、患者のケアに関する支援や教育が行われます。これにより、家族も患者をより良くサポートすることができます。
  6. 自己決定権と尊厳の尊重
    患者の意思や自己決定権を尊重し、可能な限り患者が自分の人生の最期をコントロールできるようにします。ホスピス型住宅では尊厳ある死を支援しています。

ホスピス型住宅は医療的ケアだけでなく、人間らしさと心のケアに重点を置いた場所であり、患者とその家族が穏やかで安心した環境で最期を迎えることができる場所といえます。

出典:厚生労働省|2040年頃の社会保障を取り巻く環境

有料老人ホームとホスピス型住宅の違い

■介護のレベルとサービスの違い

有料老人ホームは、すでに介護が必要な方やこれから介護が必要となる方を対象としており、身体介助や日常生活のサポートを中心に行います。

一方、ホスピス型住宅は公的に制度化された施設形態ではないため明確な規定はありませんが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅のうち、がん末期や難病の方を対象とした入居型介護施設を指します。(施設によって「ナーシングホーム」「医療特化型有料老人ホーム」「ホスピス住宅」「ホスピスホーム」と様々な呼称があります)

ホスピス型住宅へ入居する方は、がん末期や難病を抱えた方が多いため、しばしば痛みや不快感、息切れ、吐き気などの身体的症状に苦しむことがあります。そのため、常駐している看護師が患者の症状を適切に管理しながら、快適に過ごせるようサポートします。

したがってホスピス型住宅は有料老人ホームと比べると、より手厚い医療的なサポートを受けられるといえるでしょう。

■入居条件の違い

有料老人ホームの入居条件はその種類によって異なり、要介護認定を受けていなくても入居できるところや、医療ケアが必要な場合には受け入れができない施設もあり様々です。

一方でホスピス型住宅の入居条件は、がんの末期状態の方や国指定の難病を抱えた方など、医療的依存度の高い方に限定されている場合が多いです。

ホスピス型住宅のメリット

○家庭での介護の負担軽減

訪問看護を利用することで、自宅にいながら医師や看護師による医療的処置を受けることができます。しかし、自宅での介護は家族の心身的負担も大きく、一人暮らしの方や家族に頼れない方にとってはホスピス型住宅は最後の砦のようなものです。

ホスピス型住宅では看護師が常駐しているため、容態が急変した際はすぐに対応することができ、食事も介護食が提供されるため、病院のような安心感で自由度の高い生活を送ることができます。

○専門スタッフによる一人ひとりへのケア

緩和ケアに特化した専門性の高い看護師や介護士が24時間常駐しているケースが多く、在宅呼吸器、在宅酸素、吸引、中心静脈栄養などといった、容態に合わせた幅広い医療ケアを受けることができます。

○心理的サポートと尊厳ある生活

患者が穏やかに過ごせるよう心理的・精神的な支援を行うほか、意思や希望を尊重した生活を提供します。家族に対しても介護やサポート方法の助言を行い、安心して最期の時間を過ごせる環境を整えています。

ホスピス型住宅のデメリット

×費用面での課題

ホスピス型住宅は医療・介護サービスが手厚い分、費用負担が大きくなる傾向があります。入居者は家賃や管理費に加え、生活費や訪問看護・訪問診療など保険サービスの自己負担費用が発生し、1か月あたり約20~40万円が相場です(※施設や要介護状態によって異なります)。

さらに運営面では、医療保険の診療報酬を多く得ることを目的とした不正記録作成や、過剰な訪問看護の実施といった問題も報告されています。訪問看護は介護保険と医療保険の両方が適用される場合があり、末期がんや難病の方の場合は医療保険の報酬も加算されます。結果として、複数回・複数人で毎日訪問する体制が組まれることもあり、サービスが過剰になりやすい傾向があります。

×入居対象が限られ、施設によってサービス内容に差がある

末期がんや難病など医療依存度の高い方が主な対象のため入居できる方は限られ、さらに公的制度で規定されていないため、施設ごとに医療・介護サービスの充実度や質に差があります。

さいごに

ホスピス事業は有料老人ホームやサ高住よりも末期がんや難病などの医療依存度の高い人に特化しているため、介護保険報酬に加え医療保険の診療報酬も得られることから、収益性が高く近年急増しています。そのことから有料老人ホームなどを買収し、「ホスピス型住宅」へ事業転換する事業者も増えています。

株式会社CBパートナーズでは医療・介護・福祉業界に特化して承継問題の解決に取り組んでいます。有料老人ホーム等の買収・事業拡大をお考えの際は、ぜひCBパートナーズまでお気軽にご相談ください。

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コラム監修者

マネージャー
Y.TERUI

  • 埼玉県出身。関東の国立大学を卒業後、宝飾品業界を経て、2018年にCBグループへ入職。薬剤師の独立開業支援や調剤薬局のM&Aを経験し、現在は介護・福祉事業を中心としたM&Aに携わっている。これまでに手がけた案件は、住宅型有料老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、グループホーム、デイサービス、訪問介護、訪問看護、調剤薬局など多岐にわたり、事業承継の支援に幅広く取り組んでいる。