介護事業は、もともとサービスの提供者が社会福祉法人や医療法人に限られていましたが、
介護保険法によって株式会社等の営利法人の参入も可能になりました。
それに伴い、ニチイ学館などの大手企業の参入が相次いでおり、介護事業所の開業が増加しました。


また、厚生労働省の発表によれば、
後期高齢者(75歳以上)人数は2012年時点で1,511万人でしたが、
団塊の世代の高齢化によって、2025年には、2,179万人程度まで増加し、
日本の5人に1人が後期高齢者となるとされています。


現実を帯びてきた超高齢化社会を背景に、需要が伸び続ける成長市場と認知され、
異業種からの参入や介護業界内のシェアの拡大などを狙い、M&Aが増加傾向となってきています。


医療・介護・福祉業界に特化したM&AアドバイザリーであるCBパートナーズ
が、
介護業界の定義や現状をご説明した上で、介護事業のM&Aのポイントや
M&Aを実施するメリットなどをご紹介させていただきます。

介護業界の現状 Current status

業界定義

介護業界とは、高齢者や障害者といった、日常生活を送るうえで、
入浴、排せつ、食事の介護、食事の提供等のサポートが必要としている人に対し、
サービスを提供する業界です。

介護業界と一括りにしても、
「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「通所/短期入所介護」
「訪問介護」「認知症老人グループホーム」「有料老人ホーム」「その他の老人福祉・介護事業」
という分類を総務省が規定しています。

また、介護事業は、一般的に「在宅」「通所」「介護施設」の3種類の業態に分けることができ、
在宅介護は要介護者(サービス利用者)が自宅で生活しながらサービスを受けること、
通所介護は施設に通ってサービスを受けること、
介護施設は施設へ入居してサービスを受けることを指します。

介護業界のM&Aの動向

先述した通り、日本全体での高齢者人口の増加、
さらには後期高齢者の増加が見込まれている段階であり、
介護業界全体の社会的ニーズは高まっています。

しかし、介護業界で働く職種は多種多様なものがありますが、
介護業界全体として、慢性的な人手不足に陥っている現状があります。

介護業界全体として、非正規職員に大きく依存している状況もあり、
人材不足による運営能力低下や、収益性確保が難しくなり、
M&A(譲渡)を検討するという流れが多くなってきています。

介護施設・事務所の経営者の悩み

当社は医療・介護業界に特化したM&Aアドバイザリーのため、
日々介護事業の経営者様からM&Aのご相談をいただきます。

まずは介護施設・事業所の経営者様よりいただくお悩みをご紹介させていただきます。

売り手(譲渡)の悩み

介護業界においてM&Aの売り手側(譲渡側)としては、次のような悩みを抱える企業が多いといえます。

  • 入居者/利用者が思ったほど集められない
  • スタッフの離職が多く、採用に莫大な資金が必要
  • スタッフ不足で事業運営に支障が出てきている
  • 介護事業以外の本業に集中したい
下記ではそれぞれについて詳しく解説いたします。

入居者/利用者が思ったほど集められない

高齢化社会の到来により、国内の高齢者人口は増加の一途をたどっています。
ただし大枠では市場拡大が続く高齢者向けの介護市場ですが、視点をミクロに落とすと、地域によっては高齢化が一服し介護サービスの入居者/利用者が思ったほど集められない、という地域も発生しています。

また国の政策として介護施設増加を後押ししているため、都市部においても競争激化によって、入居者/利用者が集められないケースも生じています。

市場拡大を背景に集客面での懸念が少ないと考えられた介護事業ですが、集客面の苦戦が一部では現実化しつつあります。

スタッフの離職が多く、採用に莫大な資金が必要

介護職に限らず、人口減少社会の日本では各業界で人手不足の状態です。
他産業に比べ給与水準が低く、24時間気の抜けない介護職は重労働といわれており、スタッフの離職率が高い状態にあります。

介護サービスを維持するためには、最低限のスタッフが必要ですが、採用には求人広告などの資金が必要です。
しかし離職率が高い中でサービスを維持するためには、スタッフ募集の広告費などを常に投じざるを得ません。

介護事業者の経営も楽ではない中、必要ながらも穴の開いたバケツから水が抜けるように発生し続ける採用費は、介護事業者の悩みの種となっています。

スタッフ不足で事業運営に支障が出てきている

最低限の人員の配備はなされているものの、慢性的な人手不足の介護事業者の数も多く、ギリギリの状態でサービスを維持している事業者も存在しています。

しかしスタッフが病気等で休めば事業運営に支障をきたす状況と隣り合わせであり、スタッフの頑張りでサービスの維持がなされている状態は健全ではありません。

人手不足で事業運営に支障が出ている企業のみならず、表面的にはスタッフの数は足りてサービスの提供がなされていても、実質的にはスタッフ数が不十分なことから、事業運営に支障が生じているケースも発生しています。

介護事業以外の本業に集中したい

介護事業は成長産業として、多くの企業がこれまで参入を果たしました。
しかしながら高齢者人口の拡大を背景に成長市場と期待された介護事業ですが、収益化の難しさに苦戦中の企業も存在します。

新規事業として介護事業に進出した企業の場合、介護事業の苦戦は本業の足かせになりかねません。

しかし利用者や入居者の存在から、介護事業は事業撤退の決断が行うのが難しい事業です。
他事業からの参入組の中には、当初の目論見通りに事業展開ができず、介護事業を切り離して本来事業に特化したい、と考えている企業も存在します。

買い手(譲受側)の悩み

介護業界でのM&Aでも、買い手(譲受側)はそれぞれ悩みを抱えている場合が殆どです。代表的な悩みとして下記があげられます。

  • 介護事業を拡大して、効率的な運営を行いたい
  • 介護事業の多角化を行いたい
  • 介護事業に新規参入したい
  • 参入障壁の高い介護施設を取得したい

次にそれぞれについて詳しく解説いたします。

介護事業を拡大して、効率的な運営を行いたい

小規模事業者の多い介護事業者ですが、ベネッセHD<9783>を始め大手事業も事業展開しています。
大手企業ではSOMPO-HD<8630>のように積極的なM&Aにより、急激にサービス規模を拡大した企業も存在します。

対人相手のサービスの介護事業であっても、事業規模の拡大は効率的な事業運営に直結します。

企業単体では介護保険収入の増加に限界がある中、事業規模の拡大及び効率的な運営による、収益力の強化に対するニーズは高いといえます。

介護事業の多角化を行いたい

介護事業と一言で表現できても、居宅サービス・地域密着型サービス・施設サービスの3種類のサービス内に様々な事業が存在します。

1つの介護事業を展開する事業者が、サービス領域拡大を志向するケースは少なくありません。
例えば医療法人系の介護事業者では、そのバックグラウンドを活かして医療から介護までグループとして一貫したサービスを提供することで、高い収益力を有するケースがあります。

顧客に対するサービス向上及び収益率アップの観点から、介護事業の多角化ニーズは常に存在します。

介護事業に新規参入したい

少子高齢化による人口減少社会の日本では、高齢者人口の増加を背景に、介護事業は国内では数少ない成長産業として位置付けられています。

既に多くの企業の新規参入がありましたが、成長市場を求めて新規参入を希望する企業は後を絶ちません。

高齢者人口の増加自体は当面変わらないトレンドであり、今後も介護事業への参入希望企業は継続的に表れると考えられます。

参入障壁の高い介護施設を取得したい

介護事業の中でも、介護施設サービスは施設の建築などに資金が必要であり、また補助金の助成もある一方で様々な要件が定められているなど、参入のハードルが高い状況にあります。

しかしM&Aにより介護施設を運営する事業者を買収することで、介護施設サービス事業への参入をスピーディーに果たすことができます。

ゼロベースで施設を立ち上げる場合に比べると、企業買収はスピーディーな事業参入が可能です。
買収側が既に施設事業を展開している・していないにかかわらず、一気に施設数を増やすことのできる介護施設事業者の買収ニーズは高いといえます。

介護施設・事務所がM&Aを行うメリット

売り手(譲渡)側のメリット

介護事業者のM&Aに際し売り手(譲渡)側のメリットとして下記があげられます。

  • 知名度のあるグループになることによる集客力向上
  • 大手からのスタッフの充足
  • 譲渡退化による手持ち資金の増加(創業者利益の確保)
  • 事業経営によるリスク/疲労からの解放

それぞれについて解説いたします。

知名度のあるグループになることによる集客力向上

介護事業は小規模事業者が多く存在します。
顧客の立場から見ると、若干の価格の差であれば、大手や知名度のある事業者のサービスを選択する傾向にあるのは当然です。
特に介護施設など、顧客が大きなお金を支払う必要がある場合、特にその傾向が強まります。

事業売却により大手や知名度のあるグループの一員となることで、集客力向上が期待できます。
また信頼感もアップすることから、契約についても成約率の向上が期待できます。

参考記事:https://www.ycg-advisory.jp/industry/medical_care/sinior-living/#3

大手からのスタッフの充足

中小の介護事業者の場合、ギリギリの人員でサービスを維持するケースが少なくありません。
一方で大手事業者の場合は、人手不足の状況であっても、中小事業者に比べれば人員に余裕のあるケースが多いといえます。

大手企業グループの傘下入りすることで、買収側企業からの人員派遣を受け、余裕を持った形でのサービス展開も可能となります。

大手企業は各事業所で、標準化された形でのサービス提供がなされているケースが殆どです。
大手からのスタッフ派遣や運営ノウハウの移植により、ギリギリの人員の状態でサービスを維持、という状態の解消が期待できます。

譲渡対価による手持ち資金の増加(創業者利益の確保)

M&Aによる企業売却は、多くの場合で株式の譲渡によって行われ、企業オーナーは保有株式を買収側に売却します。

株式売却により、企業オーナーは株式売却代金を得られます。その資金の過多は、企業の財務内容や顧客数などに左右されますが、財務内容の極度の悪化がなければ、相応の金額をオーナーは受け取ることになります。

M&Aによる企業売却で、オーナーは株式売却による創業者利益の獲得が可能です。

事業経営によるリスク/疲労からの開放

介護事業に限りませんが、オーナー経営者は常に事業に対するリスクを背負っています。
サービス利用者が損益分岐点を上回らなければ、事業は赤字が続き企業存続のリスクが生じます。
また金融機関からの借り入れを行う際は、個人保証を求められる場合が殆どであり、事業が失敗すれば自己破産に至る可能性が高い状況にあります。

様々なプレッシャーの下で企業経営者は事業運営を行っていますが、企業を売却することで、それらのプレッシャーから解放されます。

企業売却にはオーナー経営者を事業リスクや、そこから生じる身体的・精神的疲労から解放する、という側面もあります。

参考記事:https://kaigo-must.jp/etc/manda/

買い手(譲受)側のメリット

介護事業のM&Aにおいて買い手(譲受)側には、次のメリットがあげられます。

  • 新規参入のスピードアップ
  • 介護業界内の市場シェア拡大
  • 参入障壁の高い介護施設への新規参入

下記でそれぞれについて解説いたします。

新規参入のスピードアップ

M&Aにはお金で時間を買う、という側面があります。
介護事業においても、サービスをゼロから立ち上げるより、既に事業展開を行っている企業を買収することで、スピーディーな事業拡大が可能です。

特に新規事業として介護事業に参入する場合、介護事業のノウハウ蓄積までに長い時間が必要となります。
しかし介護事業者を買収して介護事業に参入することで、介護事業のノウハウを買収先企業から吸収しながら、スピード感のある新規事業の展開が可能となります。

介護業界内の市場シェア拡大

M&Aの効果には上記の時間を買う、という面に加えて、市場シェアを買う、という側面もあります。

既存事業であっても、新たに出店などしてサービスを提供する場合、事業が巡航速度に至るまで、一定の期間がかかるのが通常です。
しかし同業の企業を買収できれば、対象企業の売上は連結決算でそのまま買収側企業の売上に反映できるため、業界内の市場シェア拡大につながります。

大手企業の参入があるとはいえ、介護業界は中小事業者が多くを占める状態です。
企業買収を行うことで、業界内の市場シェア拡大を果たし、サービス向上や経営効率アップにつなげることができます。

参入障壁の高い介護施設への新規参入

高齢者の人口増加が続く中、介護施設サービス市場の拡大が見込まれています。
しかしながら介護施設の建設には、時間面・資金面・規制面などから、参入には高いハードルが存在します。

しかし既に介護施設を運営する企業の買収を行うことで、特に時間面・規制面のリスクを抑えた形で、介護施設サービス市場への参入ができます。

M&Aは新規事業参入の際に有効な手段となりますが、介護施設事業への参入を意図する企業にとっては、特に有効な手段となります。

参考記事:https://kaigo-must.jp/etc/manda/

介護業界のM&Aで抑えておくべきポイント Points

主要企業

介護業界の主要企業(プレーヤー)は以下の通りです。 

 

法人名 売上高/年
ニチイ学館 1511億7600万円
SOMPOホールディングス 1250億4700万円
ベネッセホールディングス 1118億1200万円
ツクイ 817億7200万円
ユニマットリタイアメント・コミュニティ 491億5400万円
セントケア・ホールディング 394億5600万円
ALSOK 256億3100万円
シップヘルスケアホールディングス 227億2400万円
ソラスト 200億9500万円
ウチヤマホールディングス 161億1300万円

 

※2018年3月期決算より抜粋

決算年度ごとに、多少順位は前後しますが、
上位の企業は2019年時点ではこのような順番になっています。

上記以外の大手企業のM&Aに関して言えば、上記以外でも、
ドラッグストア大手のココカラファインや、SOMPOホールディングスが
介護事業をM&Aし本格的に参入してきています。

介護業界でM&Aをする上でのチェックポイント Points

介護業界でM&Aを行う上でのチェックポイントとして、まずは2点をあげることができます。

  • 適正な運営ができているか
  • 介護職員は一定数確保出来ているか

下記でそれぞれについて解説いたします。

適正な運営ができているか

介護事業のM&Aでも、もちろん法的に適正な運営が行われているかはチェックの項目となります。

また、法的に問題がなかったとしても、職員の人員配置の適正さ、施設への投資や経費の使い道など、
妥当性のある運営がされているかによっても、決算書上の数値が変わってくるため、
最終的に譲渡価額が変化する可能性があります。 

法的な適正さに加えて、これまでの運営が適切な形で行われていたか、も
介護事業のM&Aを実施する上では重要になってきます。

介護職員は一定数確保出来ているか

先述したように、介護事業のM&Aの理由として多く挙げられるのが、スタッフの人員不足です。

特に有資格者を確保するのが難しく、業界全体で離職率が高いため、
人材をどれくらい確保できているかが譲渡側にとっても、譲受側にとっても、
M&Aが成立するためのポイントになります。 

人材不足による譲渡の場合でも、
全くいなくなってしまうのか、1人だけ足りないのか、の違いにより、
M&Aの成立の確立や譲渡対価にまで響いてきます。

また、M&Aの話が進むにつれて、従業員にM&Aの実施を伝える必要などが出てきますが、
ここでも、職員を退職させない方向で伝えることが非常に大きなポイントとなります。

介護業界の譲渡価格の相場 Current status

譲渡価額の決め手となる部分は売上や利益だけではありません。

業態や人員、経費の使用用途によっても価格が左右されますので、
一概にいくらの売上があるから相場がいくらということを明言することはできません。

もし、介護施設・事業所の譲渡を迷われている場合には、
今すぐの譲渡ではなく、将来のM&Aの可能性も視野に入れ、
現時点での譲渡価額を知るために、価値算定を実施することをおススメいたします。 

当社では、今すぐの譲渡をお考えではなく、将来的なM&Aを視野に入れたお客様にも、
無料で価値算定のサービスをご提供しております。

無理な営業は致しませんので、最新のM&A事例も踏まえて
貴社/貴施設の売却見込み額を知っておく機会としていただければと考えております。

2018年度の介護業界のM&Aの概要  Summary

少し前から言われ続けていることではありますが、
やはり需要に対して担い手である従事者が少ないこと、
そして業態によっては介護事業への参入障壁が低くなったことによって、
介護事業を行う企業や事業所は増えたのですが、利用者の分散やスタッフ確保の難しさによる収益性の低下、
そしてその結果、M&A(譲渡)希望の法人様は増えたという印象です。

それに対して、譲受側の企業も従来は介護業界内が多かったのですが、
他業種からのお問い合わせが増加傾向にあり、
譲受側が活発に介護事業のM&Aに興味を示している意向が伺えます。

2019年度の大手企業M&A戦略 Prediction

介護事業のM&Aは今後さらに需要が増加すると見込まれており、
2019年においてもさらに活発に行われると予想できます。

しかし、介護業界のM&Aは行政手続き等が必要になり、
他の業種よりもM&Aが長期戦になる可能性が高いです。
そのため、数年後に向けて譲渡をお考えの中小の介護事業者が
譲渡に向けて動き出す時期と考えております。

大手企業の介護事業のM&A戦略については、高齢化に伴った日本全体の介護事業需要に伴い、
今後さらにM&Aの件数を伸ばすと見込まれています。

また、買収した企業や事業所を最終的にはグループの中に組み入れる形にする方向性も増えてきています。

最後に Message

ここまで見てきたように、介護業界のM&Aは今後さらに加速していくことが予想されます。

現在譲渡をお考えではない経営者様も周囲の動きをみて、
譲渡を検討される可能性も高まっていくかと思われます。

譲渡をお考えになったり、買収をお考えになった場合に、
お相手を探すこと、法律的な手続きを行うことなど、
M&Aは想像以上に労力と時間のかかる作業になります。

その場合には、介護事業に精通したCBパートナーズにぜひお声がけくださいませ。

M&Aってなに?売るとしたらいくらになるの?こんな譲渡希望案件ある?
など、軽いお問い合わせも大歓迎ですので、一度お気軽にお問い合わせください。
(無理に営業することは致しません)