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【事業者必見!】介護分野の処遇改善・補助まとめ─2025年度補正予算「医療・介護等支援パッケージ」

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はじめに

2025年12月8日に公表された補正予算案では、「医療・介護等支援パッケージ」として、介護分野に約2,721億円が計上されました。なかでも 1,920億円が「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」 に充てられており、今回のパッケージの中で最大の柱となっています。

従来、処遇改善や人材確保については介護報酬改定の中で対応されてきましたが、今回は改定を待たずに補正予算を活用することで、人材流出への即時対応と、現場の疲弊を防ぐことが強く意識されています。介護現場の安定したサービス提供体制を維持するため、賃上げと職場環境改善の双方を支援する内容となっている他、単なる賃上げ支援にとどまらず、生産性向上、職場環境改善、ICT活用や業務効率化といった取り組みを後押しする視点も盛り込まれています。

本コラムでは、この医療・介護支援パッケージのうち 「介護分野の処遇改善」に関する補助金のポイントを中心に、支援の仕組みや金額、補助の内容について解説します。

●このコラムのポイント

  • 医療・介護支援パッケージでは次期介護報酬改定を待たずに、介護現場の人材確保とサービス継続を支援するために講じられた緊急的な施策である。

  • 処遇改善支援は事業所の取り組みに応じた段階的な仕組みとなっており、要件を満たすことで介護職員1人あたり最大19,000円相当/月の支援が受けられる。

  • 補助金を活用するためには、処遇改善加算の取得状況や職場環境改善・生産性向上への取り組みを事前に整理しておくことが重要である。


医療・介護等支援パッケージの介護分野における“重要な柱”

「医療・介護等支援パッケージ」は、安心して医療・介護・福祉サービスを受けられる体制を整備することを目的として、緊急的に措置されるものです。

このパッケージのうち、介護分野における主要な柱は、以下の3点に集約されます。後程、それぞれの支援内容について詳細を解説します。

1. 介護職員の処遇改善・人材流出防止

  • 「職場環境改善支援事業」(1,920億円)
    他職種と遜色のない処遇改善に向けて、令和8年度の介護報酬改定を待たず、人材流出を防ぐための緊急的対応として、賃上げ・職場環境改善の支援をします。「介護分野の職員の賃上げ

2. 必要な介護サービスの円滑な継続支援

  • 「介護事業所・施設のサービス継続支援事業」(510億円)
    介護事業所・施設が、物価上昇の影響がある中でも、必要な介護サービスを円滑に継続するための支援です。

3.生産性向上、経営基盤強化、提供体制の確保

  • 「介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業」(220億円)
    「 訪問介護・ケアマネジメントの提供体制確保支援事業」(71億円)
    ICT等のテクノロジーの導入や経営の協働化を支援、 訪問介護・ケアマネジメントの提供体制の確保に向けた取組を支援します。

介護分野における処遇改善

◆介護分野の処遇改善について|「職場環境改善支援事業」(1,920億円)

今回の支援では2026年6月に予定されている介護報酬の期中改定が実行されるまでの、半年分が補助対象、すなわち2025年12月~2026年5月までの賃上げ相当額を支給することとされています。

また今回の医療・介護支援パッケージにおける処遇改善の補助金については、2026年度の介護報酬改定において、処遇改善加算の枠組みに組み込まれていく可能性が高いと考えられています。

※申請の詳細については現段階では明らかではありませんが、介護事業所が都道府県に対して①申請(計画書等を提出)②交付決定、補助金の交付が行われることが示されています。

◆職員1人あたり、最大いくらもらえるのか?

今回の医療・介護支援パッケージにおける処遇改善支援は、事業所の取り組み状況に応じた「3段階」の仕組みとなっており、対応する要件によって受けられる支援額が異なります。

下記の3つの要件をすべて満たした場合、1人あたり最大で月19,000円相当の支援を受けられることが可能とされています。


 1.介護従事者に対する幅広い賃上げ支援▶ 10,000円/月

  • 介護従事者全般が対象
  • 最も広い層が受け取れる“基本支援”
  • 実質的には 賃金改善のために事業所へ交付される原資
  • ※)処遇改善加算の対象サービスについては加算取得事業者、対象外サービス(訪問看護、訪問リハ、ケアマネ等)については処遇改善加算に準ずる要件を満たす(又は見込み)事業者が対象。

2.生産性向上や協働化に取り組む事業者への上乗せ▶ 上乗せ +5,000円/月

  • ※要件を満たした事業所だけが対象です。
    処遇改善加算の取得
    【施設・居住サービス】→生産性向上推進体制加算(I・II)の取得または取得見込み
    【訪問・通所サービス】→ケアプランデータ連携システムの導入または導入見込み

3.職場環境改善に取り組む事業所▶ 上乗せ +4,000円/月

  • 使い道は自由度が高く、人件費としても使えるのが特徴です。
  • ※要件を満たした事業所だけが対象
    └処遇改善加算の取得
    職場環境改善を計画し実施(※この具体的な要件は、令和6年度補正予算の「介護人材確保・職場環境改善等事業」で定められた要件と同様)
  • 単なる賃上げではなく、取り組みの状況などを重視しています。

【令和7年度補正予算案】介護事業者が活用できる補助一覧

令和7年度補正予算案において、処遇改善加算の取得を要件としない、または処遇改善加算が適用されないサービス事業者に対しても、介護サービスの安定的な継続や事業基盤の強化を目的とした様々な補助金が措置されています。

① サービス継続支援(物価高・人件費高騰対策)

▶ 事業所の規模・種類に応じて補助金が交付
訪問・送迎に必要な経費や、災害発生時に必要な設備・備品の購入費等を支援します。

~ 補助対象経費の例 ~

  • サービス提供継続:訪問・送迎の移動経費、ネッククーラー、業務用スポットエアコン、断熱カーテンなど。
  • 大規模災害等への備え:飲料水・食料品等の備蓄物資(ローリングストックの初期費用)、ポータブル発電機、衛生用品、簡易トイレなど

 ~ 補助上限額の例 ~

  • 施設系(特養、老健、介護医療院等):定員1人あたり6千円。
  • 訪問介護事業所:延べ訪問回数等に応じて1事業所あたり20万円、30万円、40万円、50万円の区分が設定
  • その他の介護事業所・施設:1事業所あたり20万円

②介護保険施設の食材料費等支援

介護保険施設等が物価上昇の影響がある中でも食事提供サービスを円滑に継続できるよう、食料品等の購入費に対する補助です。

  • 対象施設:介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、短期入所生活介護、養護老人ホーム、軽費老人ホームなど。
    補助上限額:定員1人あたり1.8万円(補助率 国10/10)

③介護テクノロジー導入・協働化・経営改善等支援事業

小規模法人を含む介護現場の生産性向上や、経営の協働化・大規模化を支援し、職場環境改善を推進します。補助率は原則として国・都道府県が4/5、事業者が1/5です。

~ 補助対象 ~

  • 介護テクノロジー等の導入支援:業務時間削減効果が確認されている見守り機器、介護記録ソフト、インカムなどの導入にかかる費用
  •  業務改善にかかる費用:介護記録ソフトの導入前後の定着を促進する費用やWi-Fi環境整備費用
  •  経営の協働化支援:人材募集や合同研修、事務処理部門の集約化、協働化・大規模化にあわせた老朽設備の更新・整備のための費用
  • 経営改善支援:福祉医療機構(WAM)による経営分析などを行うための費用(補助を通じた経営改善支援モデル事業を実施)

④訪問・ケアマネの提供体制確保支援

在宅介護サービスの基盤維持を目的とした、地域特性に合わせた個別的な支援が含まれます。 利用者増・事業所減により地域基盤が危険な自治体を救済するための補助です。

~ 訪問介護等サービス提供体制確保支援 ~

この事業には、訪問看護やケアマネジメントなど、処遇改善加算の対象外サービスを含む在宅サービス提供体制の強化に向けた支援が含まれます。

  • 多機能化の推進(訪問機能の追加)
    訪問介護事業所が存在しない中山間地域等に所在する通所介護事業所等に対し、訪問機能導入に向けた初期費用(電動自転車、ホームページ改修費用など)の助成や、導入後の一定期間の定額補助。
  • サテライト(出張所)設置の推進
    中山間地域等で、地域の需要に応じた柔軟な人員配置が可能なサテライト設置を促進するため、初期費用(備品購入費、移動手段確保費)の助成や、一定期間のランニングコスト(賃借料、交通費)の支援。
  • タスクシェア・タスクシフトの推進
    訪問介護員が身体介護など専門性を活かした支援に注力できるよう、家政婦、地域ボランティア、就労支援事業所など多様なリソースとの協働モデル構築や、業務の役割分担ルールの策定等の支援。

~ 地域のケアマネジメント提供体制確保支援 ~

ケアマネジャーは処遇改善加算の直接的な対象ではないサービス(対象外サービス)ですが、この補正予算では、ケアマネジャーの人材確保・業務負担軽減のための支援が図られます。

  • 人材確保支援
    中山間・離島等地域における採用活動支援、「潜在ケアマネジャー」の実態把握や復職後の相談対応・環境整備支援。
  • 業務負担軽減支援
    事務職員の採用や研修の支援、シャドウワークに関する相談窓口の設置。
  • 経営改善支援
    コンサルタント派遣による加算の新規取得や大規模化・協働化等の経営改善支援。

上記の主要な柱(賃上げ、サービス継続、テクノロジー導入、提供体制確保)以外にも、介護基盤の強化、IT化、災害対策を目的とした重要な支援事業が措置されています。

● 介護情報基盤・IT化関連の整備

介護情報基盤を活用したデータ連携を可能にし、業務効率化やサービス質の向上を推進するための事業です。

  •  介護関連データ利活用に係る基盤構築事業 (125億円)
    介護情報基盤の整備に必要なシステム開発、関連システム(国保中央会、支払基金)の改修、および介護事業所等に対する導入支援を行います。これにより、介護情報(LIFE情報、ケアプラン、要介護認定情報など)の関係者間での電子的共有と活用を可能にする環境整備を行います。
  • 介護保険制度の運用等に必要なシステム整備事業 (94億円)
    介護情報基盤の整備等に対応するため、都道府県システム、市町村等(保険者)システム、および国民健康保険団体連合会の「介護保険審査支払等システム」の改修に必要な経費を補助します。
  • 介護テクノロジー開発等加速化事業 (5.6億円)
    開発企業が介護テクノロジー市場に参入しやすい環境を整備するため、CARISO(CARe Innovation Support Office)を運営します。具体的には、スタートアップ支援窓口の運営、リビングラボ(実証フィールド)の設置・運営、ニーズ・シーズマッチング支援など、テクノロジーの開発から普及に至るまでの総合的な支援を行います。

 

● 施設整備・国土強靱化・災害復旧支援

老朽化対策や大規模災害への備え、被災施設の復旧を支援する事業です。

  • 地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金等 (22億円)
    老朽化した高齢者施設等(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護医療院等)の改修・大規模修繕(耐震化のための非構造部材の落下防止対策を含む)等を支援し、国土強靱化対策を推進します。
  •  第1次国土強靭化実施中期計画に基づく耐震化等 (166億円)
    高齢者施設等を含む社会福祉施設等の防災・減災対策を推進するため、耐震化整備、ブロック塀等改修整備、水害対策強化、非常用自家発電設備の整備などに対する支援を行います。
    医療施設、社会福祉施設等への災害復旧支援(施設整備 39億円、設備整備 8.1億円)
    災害により被害を受けた特別養護老人ホームや養護老人ホーム等の施設について、その速やかな復旧を図るための財政支援を行います。激甚災害に指定された災害により被災した介護施設等の備品購入費の補助も含まれます。

 

● ケアマネジャーの質向上・人材確保

ケアマネジメントの重要性が増す中、ケアマネジャーの業務負担軽減と人材確保を目的とした施策です(「エ 訪問介護・ケアマネジメントの提供体制確保支援事業」の一部に含まれるものの、詳細な施策として明確に計上されています)。

  • ケアマネジャーの人材確保に向けた魅力発信のための広報事業 (58百万円)
    ケアマネジャーの仕事のやりがいや実際の業務イメージを、学生や「潜在ケアマネジャー」に広く周知するため、リーフレットや広報動画の作成・発送を実施します。
  • 介護支援専門員資質向上推進事業 (96百万円)
     ケアマネジャーの法定研修について、全国統一的な実施が望ましい科目の講義動画や教材を作成し、オンラインで提供できるようにする等、研修の負担軽減と質の向上を図ります。

 

● 認知症施策の推進

  •  認知症基本法に基づく認知症施策推進事業 (5.0億円)
    「新しい認知症観」に基づき認知症施策推進計画を策定する自治体への支援や、認知症の人やその家族の視点に立った多様な居場所づくり(ピアサポート活動拠点や交流の場)の立ち上げ支援を行います。

参考:厚生労働省|令和7年度厚生労働省補正予算案の概要(老健局関係)

介護事業者が準備しておきたいポイント

先述のとおり医療・介護支援パッケージでは、一定の要件を満たした事業所に対し、生産性向上・協働化への取り組みや職場環境改善を行うことで、月額ベースの上乗せ支援が用意されています。

これらの補助金の対象となるために、事業所として事前に確認・整理しておきたいポイントを見ていきます。

◆生産性向上や協働化に取り組む事業所向け(+5,000円/月)

生産性向上や協働化に取り組む事業所には、月5,000円の上乗せ支援が行われます。
対象となるのは、次の要件を満たした事業所です。

まず前提として、処遇改善加算を取得していることが必要となります。未取得の場合は、現在の取得状況や今後の取得可否を整理しておくことが重要です。

そのうえで、サービス種別ごとに求められる要件が異なります。

▼施設・居住系サービスの場合

  • 生産性向上推進体制加算(ⅠまたはⅡ)を「すでに取得している」または「取得を予定している」ことが要件となります。現在の体制で要件を満たせるか、取得に向けた準備状況を確認しておくとよいでしょう。

▼訪問・通所系サービスの場合

  • ケアプランデータ連携システム「導入済み」または「導入を予定している」ことが求められます。すでに加入している場合は運用状況の確認を、これから導入する場合はスケジュールや体制の整理を進めておくことがポイントです。

いずれの場合も、“取り組みの実態があるか”“計画として説明できるか”が重要になります。


◆職場環境改善に取り組む事業所向け(+4,000円/月)

職場環境改善に取り組む事業所には、月4,000円の上乗せ支援が用意されています。この補助金は、使途の自由度が比較的高く、人件費としても活用できる点が特徴です。

対象となる要件は、次のとおりです。

  • 処遇改善加算を取得していること
  • 職場環境改善に関する計画を作成し、実施していること

職場環境改善の具体的な内容については、令和6年度補正予算における「介護人材確保・職場環境改善等事業」と同様の要件が想定されています。

たとえばなど、下記のようにすでに取り組んでいる内容が該当するケースも多くあります。

  • 研修やOJTの実施
  • 面談や相談体制の整備
  • 働き方やシフトへの配慮
  • 業務負担の軽減に向けた工夫

新しい施策を無理に増やすのではなく、既存の取り組みを整理し、計画としてまとめておくことが大切です。

さいごに

今回の医療・介護支援パッケージは、介護現場を取り巻く厳しい状況を踏まえ、事業者が安心してサービスを継続できるよう後押しするための支援策として打ち出されたものです。

一方で、補助金を活用するためには処遇改善加算の取得など一定の要件が設けられており、事前の整理や準備が求められる点も押さえておく必要があります。こうした整理は、補助金対応にとどまらず、日常の運営や職員とのコミュニケーションを見直すきっかけにもなります。

今回の支援をきっかけに、補助金を「もらう・もらえない」という視点だけでなく、現場の働きやすさや人材定着、将来の事業のあり方を見直す一つの機会として捉えてみるのもいいかもしれません。

また、処遇改善や生産性向上への取り組みは、事業拡大や将来的な事業承継・売却を検討する際にも重要な要素となります。

当社では、介護事業者様向けに、事業拡大やM&A、事業承継・売却を見据えた経営相談を行っています。ご関心のある方は、情報収集の一環としてでもお気軽にご相談ください。

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コラム監修者

マネージャー
T.FUNAMOTO

  • 経歴
    九州の国立大学を卒業後、CBグループに新卒入社。病院・薬局・介護施設を対象としたコンサルティング業務を経て、2020年度よりM&A業務に従事。介護分野を中心に、これまで累計30件以上の成約支援に携わる。