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医療DX推進体制整備加算の最新動向:マイナ保険証利用率が2段階で引き上げ

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健康保険証とマイナンバーカード

はじめに

令和6年度の診療報酬改定では医療DXに関する評価が重点的に盛り込まれ、
電子処方箋の体制整備・電子カルテ情報共有サービスへの参加や、オンライン資格確認等システムで得られる診療情報・薬剤情報の取得・活用などがありました。

その中で新設された「医療DX推進体制整備加算」が2024年10月から、マイナ保険証の利用率に応じて3区分に分けられ、2025年4月からは6区分へと段階的に引き上げられてきました。

本コラムでは、「医療DX推進体制整備加算」の見直し内容や、医療DXに関連する加算の最新情報を解説していきます。

※2025年7月時点での情報です

医療DX推進体制整備加算とは

医療DX推進体制整備加算とは、医療機関がデジタル技術を活用した医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるために、一定の体制を整備している場合に算定できる加算です。

2024年度診療報酬改定で新設され、目的は以下の通りです。

目的

  • 医療現場におけるデジタル化の推進

  • マイナ保険証や電子処方箋の普及

  • 医療情報の標準化・共有による質の高い医療提供


この加算を取得するためには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか。次に、詳しい要件を解説します。

1. オンライン資格確認システムの導入と運用

  • マイナンバーカードを健康保険証として利用できる「オンライン資格確認システム」を導入し、稼働していること

  • カードリーダーやネットワークの整備、資格確認端末の設置が必要


2. マイナ保険証利用率の実績を満たす

  • 一定期間におけるマイナ保険証の利用率が、厚労省の定める基準以上であること

  • 利用率は段階的に引き上げられており、算定する加算の種類によって異なる

※マイナ保険証利用率の実績については次の章で解説します。


3. 医療DX推進の体制整備

以下のいずれか、または複数の取り組みを行い、体制を整えていること。

  • 電子処方箋の導入または導入計画

  • 電子カルテ情報共有サービスの利用準備

  • 診療情報の標準化に向けた取り組み

  • PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)活用への対応準備


4. 医療DXに関する情報公開

  • 患者に向けて、医療DX推進に関する取り組み内容を院内掲示やホームページで公開すること。
    例:「当院はオンライン資格確認や電子処方箋に対応しています」など


5. 所定の届出を提出

  • 厚労省指定の様式に基づき、地方厚生局に届出を提出

  • 届出後、初診料・再診料に上乗せする形で加算を算定可能

>>>電子カルテ情報共有サービスについてはこちらのコラムで詳しく解説しています。

医療DX推進体制整備加算の算定要件

医療DX推進体制整備加算を取得するためには、先述の通り、オンライン資格確認の導入や体制整備に加え、「マイナ保険証の利用率実績」を満たすことが重要なポイントです。

この利用率は、段階的に引き上げられており、時期によって基準が異なります。

◆そもそもマイナ保険証の利用率とは何か?

医療機関での「オンライン資格確認」利用実績を、マイナンバーカードを保険証として使った件数の割合で示したものです。簡単にいうと、患者が来院したときにマイナ保険証を提示して、オンライン資格確認システムで認証された件数の比率です。

各医療機関におけるマイナ保険証利用率の考え方として、加算算定月の3~5ヶ月前の「レセプト件数ベース」利用率のうち最高値を適用することになります。
※マイナ保険証利用率は歴月における変動が大きいため、「直近の最も高い値」を医療機関が選択可能とする

  • レセプト件数ベース利用率(支払基金から毎月、各医療機関・薬局にメールにて通知)
    =マイナ保険証の利用者数の合計÷レセプト枚数

出典:厚生労働省|医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて


◆医療DX推進体制加算の加算区分について

医療DX推進体制加算が新設されてから、当初3区分だった基準が、2025年4月には6区分に細分化されさらに厳格化されてきてます。2025年10月以降はさらに新基準が導入され、より高いDX対応力が求められる見込みです。

  • 2024年10月開始時
    → 加算は3区分(加算1~3)でスタート。利用率基準は5%・10%・15%と比較的低め。

  • 2025年4月以降
    → 区分が3区分から6区分へ細分化。利用率基準もさらに引き上げ(15%→45%など)

  • 2025年10月以降
    → さらに新基準を導入予定。利用率や体制整備の要件が一層厳しくなる見込み。

2025年4~9月までのマイナ保険証利用率の実績要件は下記の通りです。

 

加算区分

 

医療点数

マイナ保険証の利用率

 2025年4月~9月 

加算112点45%
加算211点30%
加算310点15%※2
加算410点45%
加算59点30%
加算68点15%※2

※1:加算1~3における令和7年1~3月のマイナ保険証利用率実績。
※2「小児科特例」:小児科外来診療料を算定している医療機関であって、かつ前年(令和6年1月1日から同年12月31日まで)の延外来患者数のうち6歳未満の患者の割合が3割以上の医療機関においては、令和7年4月1日から同年9月30日までの間に限り、「15%」とあるのは「12%」とする。 

◆2025年10月以降の見直し

2025年7月23日の中医協総会で、医療DX推進体制整備加算の要件見直しが決定しました。

見直しは2段階で実施され、マイナ保険証利用率の基準がさらに引き上げられます

ー見直しスケジュール

  • 第1段階:令和7年(2025年)10月~令和8年(2026年)2月:新たな利用率基準を適用

  • 第2段階:令和8年(2026年)3月~5月:さらに基準を引き上げ

マイナ保険証利用率(案)
利用率実績令和6年7月~令和6年10月~令和7年1月~ 令和7年7月~令和7年12月~
適用時期

令和6年10月1日~

令和6年12月31日

令和7年1月1日~

令和7年3月31日

令和7年4月1日~

令和7年9月30日

令和7年10月~

令和8年2月28日

令和8年3月1日~

令和8年5月31日

加算1・415%30%45%60%70%
加算2・510%20%30%40%50%
加算3・65%10%15%※125%※230%※3

※1「小児科特例」:小児科外来診療料を算定している医療機関であって、かつ前年(令和6年1月1日から同年12月31日まで)の延外来患者数のうち6歳未満の患者の割合が3割以上の医療機関においては、令和7年4月1日から同年9月30日までの間に限り、「15%」とあるのは「12%」とする。
※2 ※1の条件を満たす医療機関においては、令和7年10月1日から令和8年2月28日までの間に限り、「25%」とあるのは「22%」とする。
※3 ※1の条件を満たす医療機関においては、令和8年3月1日から令和8年5月31日までの間に限り、「30%」とあるのは「27%」とする。


●医療DX推進体制整備加算の施設基準

加算1・2・4・6を算定するためには、「マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること」という条件を満たす必要があります。
そのほかの施設基準(医科医療機関)は以下の通りです。

  1. オンライン請求を行っていること
  2. オンライン資格確認を行う体制を有していること
  3. (医科・歯科)医師)が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制を有していること
  4. (医科・歯科)電子処方箋を発行する体制又は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制を有していること(加算1~3のみ)
  5. 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること
    (経過措置:令和7年9月30日→令和8年5月31日までに延長)
  6. マイナンバーカードの健康保険証利用について、実績を一定程度有していること
  7. 医療 DX 推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所およびウェブサイトに掲示していること
  8. マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること。

 

番号

 

施設基準

加算区分
加算1 加算2 加算3 加算4 加算5 加算6
1

オンライン請求を行っていること

2

オンライン資格確認を行う体制を有していること

3医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制を有していること
4電子処方箋を発行する体制又は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制を有していること
5電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること
7医療 DX 推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所およびウェブサイトに掲示していること
8

マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じること。

出典:厚生労働省|医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて

そのほか医療DXに関する加算の見直しについて

【医療情報取得加算】2024年12月から見直し

◆医療情報所得加算とは

医療情報取得加算は、かつて「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」として2023年4月から原則義務化された、オンライン資格確認についての体制整備を評価する加算でしたが、令和6年度診療報酬改定で「医療情報取得加算」へと名称が変更され、初診時などで診療情報の取得・活用について評価する加算として新設されました。

医療情報取得加算も2024年12月から点数が見直されました。

2024年6月~11月までの加算点数は以下の通りです。

 

初診時

医療情報所得加算1(現行の保険証の場合)3点
医療情報取得加算2(マイナ保険証の場合)1点

 

 

 再診時

医療情報取得加算3(現行の保険証の場合)

2点
医療情報取得加算4(マイナ保険証の場合)1点

 

 

2024年12月から加算の区分がなくなり一本化されます

 初診時 医療情報取得加算1点
 再診時(3ケ月に1回限り算定) 医療情報取得加算1点 

12月から健康保険証の新規発行が廃止となり、マイナンバーカードと保険証の一体化が進むことから、加算区分がなくなり初診時、再診時ともに「1点」に統一となりました。

●「医療情報取得加算」の施設基準

  1. 電子情報処理組織を使用した診療報酬請求を行っていること
  2. オンライン資格確認を行う体制を有していること
  3. 次に掲げる事項について、当該保険医療機関の見やすい場所及びウェブサイト等に
    掲示していること
    ア オンライン資格確認を行う体制を有していること
    イ 当該保険医療機関を受診した患者に対し、受診歴、薬剤情報、特定健診情報その他必要な診療情報を取得・活用して診療を行うこと

出典:厚生労働省|医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて


【在宅医療DX情報活用加算】令和7年4月1日から見直し

◆在宅医療DX情報活用加算とは

在宅医療においてデジタル技術を活用し、患者情報を適切に取得・共有する体制を整えている医療機関に対して算定できる加算です。

具体的には、下記のように医療DXの仕組みを導入し、在宅医療でも活用できるようにしていることが評価されます。

  • オンライン資格確認

  • 電子処方箋の活用

  • 電子カルテ情報共有サービス

 

◆加算区分の変化(医科のみ)

令和7年4月1日から、在宅医療DX情報活用加算は 電子処方箋を導入しているかどうかで評価が分かれる2区分制に変更されました。電子処方箋対応医療機関は11点、未対応の場合は9点となります。さらに、オンライン資格確認や電子カルテ情報共有の整備が必要な施設基準が設定されており、経過措置期限までに準備を整えることが重要です。

■見直し前:2024年6月〜2025年3月→ 在宅医療DX情報活用加算は一律で 10点(医科)

 

 

加算区分により、電子処方箋の導入が加算点数に大きく影響するようになりました(導入で点数が1〜2点上乗せ)またオンライン資格確認が居宅でも可能な体制整備が必須です。

  • 見直し後:2025年4月〜
    → 加算1:電子処方箋導入あり → 11点(医科)
    → 加算2:電子処方箋導入なし → 9点(医科)
  • 対象者:在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の1、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の2、在宅患者訪問診療料(Ⅱ)及び在宅がん医療総合診療料を算定する患者が対象

◆施設基準(医科医療機関)

  1. オンライン請求を行っていること。
  2. オンライン資格確認を行う体制を有していること。
  3. (医科)居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムの活用により、医師等が患者の診療情報等を取得及び活用できる体
    制を有していること。
  4. 電子処方箋を発行する体制又は調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制を有していること。(加算1のみ)
  5. 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること。(経過措置 令和7年9月30日まで)
  6. (2)の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所やウェブサイトに掲示していること。

2025年8月から紙の保険証が順次失効へ。マイナ保険証の利用率は?

2025年8月1日以降、全国の多くの自治体で国民健康保険証(紙)の有効期限が切れ、順次使用できなくなります。これは、政府方針による「マイナ保険証への一本化」に伴う措置です。

しかし、現状のマイナ保険証の利用率は依然として約3割(2025年6月時点で30.6%)にとどまっており、7割以上の国民がマイナ保険証を活用していない状況です。こうした中で紙の保険証が使えなくなることで、医療現場での混乱が避けられないのではないかと懸念されています。

◆混乱回避のための暫定措置

2025年8月以降、紙の保険証が失効しても、2026年3月末までの経過措置により、すぐに全額自己負担になるわけではありません。政府は、次のような柔軟な対応を認めています。

ー適用パターン

  • 有効期限が切れた紙の保険証しか持っていない

  • 「資格確認書」(市区町村で発行)を持っている

  • マイナ保険証を持っていない、または利用できない

このような場合でも、医療機関がオンライン資格確認システムを使って患者の資格を確認できれば、通常の自己負担(例:3割負担)で受診可能です。

◆それでも残る現場の課題

マイナ保険証の利用率が低い理由として、個人情報漏洩や紛失のリスクを懸念する声や、マイナ保険証がないと医療機関を受診できないという誤解が広がっていることもあるようです。

また医療機関側の課題としては、カードリーダーの読み取りエラーなど技術的なトラブルが起きていることや、国側から利用率の低い医療機関に対して、個別アプローチで利用を促すなど、医療機関へ圧力をかけられていること、利用促進のための患者への対応に負担を感じていることも考えられます。

そもそもマイナ保険証の利用は任意であり、普及策には強引さも感じられることから、国民や医療機関の理解や準備が十分でない状況ではないでしょうか。

参考:厚生労働省
マイナ保険証の利用促進等について
マイナンバーカードの健康保険証利用について

経営の視点から見る医療DX

今や医療DXの進展は医療機関の経営環境を大きく変える要因です。単なる業務効率化だけでなく経営戦略の一環として捉え、長期的な視点で取り組むことが重要です。

一方でマイナ保険証対応や電子カルテの導入など、DX推進のためには設備投資負担が増加します。今後、医療DXに対応できる資金力や人材を持つ医療機関と、そうでない医療機関との間で経営格差がますます広がっていくのではないでしょうか。
そのため、DXに対応できない医療機関からDX推進が得意な医療機関への事業承継が増えるのではないかと考えられます。

もし加速するDX化でお悩みの場合は、将来を見据え医療機関を地域に残すための手段として、事業承継を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

まずはお話しを聞くだけでも構いません。
気になることがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

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コラム監修者

ディレクター
S.KOMURA

  • 経歴
    体育大学卒業後、人材教育会社に入職。人の人生に係わる仕事に興味を持ち、キャリアブレイン(現CBホールディングス)に転職し、医療法人へのコンサルティング業務や、医師のキャリアアドバイザーとして勤務。その後、CBパートナーズでM&Aに携わり、西日本の介護福祉事業部、医療事業部を立ち上げを主導。現在に至るまで、薬局・医療・介護領域における幅広いM&A案件を手がけている。

作成日:2024年10月22日