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【2025年いよいよ運用開始】電子カルテ情報共有サービスとは?

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【2025年運用開始】電子カルテ情報共有サービスとは

はじめに

政府は医療DX政策の一環として、電子カルテ情報の標準化並びに共有化を推進しています。
そしていよいよ2025年度中には「電子カルテ情報共有サービス」の開始が予定されています。
令和6年度診療報酬改定でも、同サービスの評価及び活用が盛り込まれました。

本コラムでは医療機関で対応を進める必要がある「電子カルテ情報共有サービス」について、
解説していきます。

令和6年度診療報酬改定での医療DXに関する項目

令和6年度診療報酬改定では、医療DXに関する項目が評価・見直され、
政府の医療DXに対する、推進の本気度・重要性が伺えます。

新設・見直しされた項目は以下の通りです。

【見直し】医療情報・システム基盤整備体制充実加算

2023年4月から原則義務化されたオンライン資格確認システムの導入について、
これまではオンライン資格確認についての体制整備にかかる評価でしたが、
令和6年度診療報酬改定では、初診時などで診療情報の取得・活用することでの評価に見直されています。
名称も「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」→「医療情報取得加算」に変更となりました。

【新設】医療DX推進体制整備加算

医療DXに対応する体制を確保していることを評価する「医療DX推進体制整備加算」は
オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を、実際に診療に活用できる体制を整備していること、また電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、
質の高い医療を提供するた体制を確保している場合の評価として新設されました。

施設基準は以下を満たす必要があります。

  1. オンライン請求を行っていること
  2. オンライン資格確認を行う体制を有していること
  3. 医師が、電子資格確認を利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室又は処置室等において、閲覧又は活用できる体制を有していること
  4. 電子処方箋を発行する体制を有していること
  5. 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること
  6. マイナンバーカードの健康保険証利用について、実績を一定程度有していること
  7. 医療 DX 推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所およびウェブサイトに掲示していること

また、経過措置は以下の通りです。

  1. 令和7年3月31日までの間に限り、電子処方箋を発行する体制を有しているものとみなす
  2. 令和7年9月30日までの間に限り、電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有しているものとみなす
  3. マイナンバーカードの健康保険証利用における一定程度の実績の基準については、令和6年10月1日から適用する
  4. 令和7年5月31日までの間に限り、オンライン資格確認により取得した情報を活用している旨をウェブサイトに掲載しているものとみなす

また令和6年度診療報酬改定で注目された、生活習慣病管理料の療養計画書についても、
電子カルテ情報共有サービスを利用することで、業務負担軽減につながるように見直しがありました。
具体的には血液検査項目についての記載が不要となり、患者の求めに応じて電子カルテ情報共有サービスの
患者サマリーに療養計画書の記載項目を入力した場合は、療養計画書の発行を省略することが可能になりました。

出典:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】

2025年から始まる電子カルテ情報共有サービスとは?

では電子カルテ情報共有サービスとはどのようなものなのでしょうか。

電子カルテ情報共有サービスの基本概念

電子カルテ情報共有サービスは、①紹介状送付サービス ②6情報閲覧サービス ③健診文書閲覧サービス の3つのサービスから構成されています。

①紹介状送付サービス
紹介元の医療機関が登録した診療情報提供書・退院時サマリーを、紹介先の医療機関などが取得できるサービスです。
提供時に患者に口頭で同意を得たことを登録することで、紹介先の医療機関でも患者の情報が閲覧できる仕組みとなっています。

②6情報閲覧サービス
6情報(傷病名・アレルギー・薬剤禁忌・感染症・検査・処方)を全国の医療機関等や患者本人が取得・閲覧できるサービスです。
医療機関が当該情報を閲覧するには、原則患者の閲覧同意(顔認証付きカードリーダー)が必要であり、一般外来の場合、閲覧できる時間は同意後24時間以内となっています。

③健診文書閲覧サービス
従来の事業者・保険者経由の健診結果登録とは別に、医療機関から直接、各種健診文書をオンライン資格確認等システムに登録でき、各健診種別(特定検診、後期高齢者健診、事業者健診、人間ドックなど)の直近の結果を全国の医療機関及び医療保険者等や患者本人が取得・閲覧できるサービスです。

サービス開始当初まずは「3文書6情報」(※)を、医療機関間、また薬局との間で情報共有・交換する仕組みを構築するとしています。
(※)3文書は診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果報告書。6情報は、傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報、処方情報

電子カルテ情報共有サービスのメリット

3つのサービスのそれぞれのメリットは以下の通りです。

①紹介状送付サービス

  • 電子化により従来の紙・FAXで発行、送付していたコストが削減、効率化
  • 確実な文書の共有により従来の紙・FAXより漏洩のリスクが低く、安全な文書管理ができ、患者の持参忘れも防止できる
  • 共通のデータフォーマットでのやり取りで情報共有がしやすく、診療への応用や記載内容に関する疑義照会の件数や時間の削減ができる

②6情報閲覧サービス

  • 問診や患者の申告よりも正確な情報を得ることができ、救急時に利用できる情報の拡大や質の高い診療などへの活用が可能になる
  • 患者自らが情報を迅速に確認することができ、患者本人の健康状態の把握に貢献できる
  • 医療情報の共有が進むことで問診の効率化のほか、様々なサービスとの組み合わせにより利便性の向上が期待できる

③健診文書閲覧サービス

  • 医療機関が健診結果を閲覧できることで、健診結果を持参し忘れたり急な受診であっても、より質の高い診療や処方をすることが可能になる
  • 患者自らがこれまでより健診結果を迅速に確認することができ、患者本人の健康状態の把握に貢献できる

出典:厚生労働省|電子カルテ情報共有サービスにおける運用について

電子カルテ情報共有サービスの導入計画

導入計画の背景と目的

医療DXを推進する背景には、少子高齢化が進み医療従事者の確保が難しくなる状況下で、
国民の健康増進や質の高い医療を提供するといった目的があります。
また、自然災害の発生や新型コロナウイルス感染症の影響により、平常時からデータ収集の迅速化や情報収集範囲の拡充が必要不可欠となりました。

政府は日本の医療分野のデジタル化を推進する取り組みとして「医療DX令和ビジョン2030」を掲げ、
医療の効率化と情報共有の改善を目指しています。

医療DXの実現に向けては
「全国医療情報プラットフォーム」
「電子カルテ情報の標準化、標準型電子カルテの検討」
「診療報酬改定DX」
の3本柱で、取り組みが進められています。

最終目標としてオンライン資格確認システムのネットワークを拡充し、
医療機関等が発生源となる電子カルテ等の医療情報について、自治体や介護事業者も含めクラウド上で
連携し、必要なときに必要な情報を共有・交換できる全国的なプラットフォームの構築を目指しています。

2023年4月からはすでに「全国医療情報プラットフォーム」の一環としてオンライン資格確認が
原則義務化されています。

導入計画の具体的なスケジュール

電子カルテ情報共有サービスの運用開始までのスケジュールは、2023年より設計及び開発・テストを行っており、2024年中に医療機関等での運用テストを実施後、2025年度中運用開始の予定です。
医療機関でのテストについては、2025年1月から全国9地域で標準規格に対応した
電子カルテ情報共有サービスのモデル事業を、順次開始するとされています。
中核病院を中心に、連携する周辺の病院・診療所が一体となり、電子カルテ情報共有サービスの有用性や機能を検証し、課題の取集を行います。

出典:厚生労働省|第5回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料について

電子カルテ情報共有サービスの課題と解決策

電子カルテの普及率はまだまだ低い

そもそも電子カルテ情報共有サービスの利用には、紹介元医療機関等と紹介先医療機関等の双方が、
電子カルテを導入し、電子カルテ情報共有サービスに連携していることが前提条件です。

厚生労働省によると電子カルテの普及率は2020年時点で、一般病院57.2%、診療所49.9%となっており、
特に診療所や中小病院などでは半分近くの医療機関が導入できていない現状があるため、
導入の促進に向けた取り組みが課題になるでしょう。

そこで政府は電子カルテの普及率を上げるため、「標準型電子カルテ」の開発を行っています。
高性能なものではなく、あくまで情報共有に特化した必要最低限の機能だけを搭載する予定で、
コスト面でも比較的安価で利用できるシステムになることが予想されています。

現在「標準型カルテα版」といわれるテスト版の開発中で、
モデル事業は2024年3月末に実施地域を決定し、2025年3月実施を予定しています。
中核病院と診療所などでモデル運用ができるか検討中です。

電子カルテを「標準化」しなければならない

もう一つ課題として、電子カルテなどの医療情報の形式がメーカーごとに異なる点が挙げられます。
メーカーが各々で開発してきたため、これまでシステム間での情報共有が困難とされてきました。
電子カルテに登録された情報を医療機関間で適切に共有するためには、
既存の電子カルテシステムにおいて形式を統一する必要があります。
これがいわゆる「電子カルテの標準化」というものです

電子カルテを標準化するために政府は、医療情報交換の国際標準規格である、
「HL7 FHIR(エイチエルセブン ファイアー)」という仕組みを採用することを決定し、
各メーカーに働きかけています。共通の形式を全国の電子カルテシステムに搭載することで、
共通のフォーマットでの書き込みや保存、共有が可能となります。
従ってHL7 FHIR未導入の医療機関では、電子カルテ情報共有サービスに連携することができないため、
まずは標準化された電子カルテの導入が必須になります。

電子カルテ情報の標準化について政府は、
「電子カルテ情報の標準化と標準型電子カルテの提供により、必要とされるすべての医療情報が共有される」
「中小規模を含むすべての医療機関への導入及び普及を目指し、国が責任をもって取り組む」
とし2030年までに全医療機関で電子カルテ普及率100%を目指しています。

出典:厚生労働省|電子カルテシステム等の普及状況の推移

政府開発「標準型電子カルテ」で注意すべきこと

もし政府開発の「標準型電子カルテ」の導入を検討する場合は、DX推進加算の取得や導入完了までの期間を考慮する必要があります。なぜならば「標準型電子カルテ」の導入は、2026年以降になる可能性が高いため、令和6年度診療報酬改定で新設された医療DX関連の加算の恩恵を、すでに受けられない可能性もあるからです。

また電子カルテの導入は検討から本格始動するまでに、かなりの時間と労力を費やすため、2026年以降にいざ導入となると、電子カルテ普及率100%を目指す2030年までに、体制づくりができるのかというのも課題です。

補助金の活用

もし費用の面で標準化された電子カルテの導入を迷われている場合は、政府からの補助金があります。
補助金を活用することで政府開発の「標準型電子カルテ」を待たなくても、「標準化」を進めることが
できます。

  • 【健診実施医療機関の場合(健診部門システム導入済医療機関)】
    ・200床以上病院
    657万9,000円を上限に補助(事業額1315万8,000円を上限に、その2分の1を補助する)
    ・200床未満病院
    545万7,000円を上限に補助(事業額1091万3,000円を上限に、その2分の1を補助する)
  • 【健診未実施医療機関の場合(健診部門システム未導入医療機関)】
    ・200床以上病院
    508万1,000円を上限に補助(事業額1016万2,000円を上限に、その2分の1を補助する)
    ・200床未満病院
    408万5,000円を上限に補助(事業額817万円を上限に、その2分の1を補助する)

上記は、病院を対象とした補助金となっており、クリニックについては、クラウド対応を前提とした、
経済産業省の『IT導入補助金』(標準的電子カルテ導入も補助対象)の活用が可能です。

出典:厚生労働省|電子カルテ情報共有サービスの運用等にかかる議題について

電子カルテ導入のメリット・デメリット

半分近くの医療機関で電子カルテの導入ができていない現状ですが、政府開発の「標準型電子カルテ」や
診療報酬の加算新設などの影響で、今後ますます電子カルテ導入の流れは加速していくと考えられます。

では根本的に電子カルテを導入するメリット・デメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

電子カルテのメリット

  • データの閲覧や検索が簡単に 
    紙カルテの時にかかっていた検査結果やレントゲン写真などを探す時間が短縮でき、業務効率が向上します。また、テンプレートを使用すれば紹介状や診断書を作成する時間も削減でき、診察や治療など本来の仕事に集中することができます。

  • 紙類の保管スペースを削減
    電子カルテには多くの情報を保存できるため、患者様が増えたからといって、紙類の保管場所に困ることはありません。
  • 情報を共有することができる
    紙カルテの場合、だれが持っていてどこにあるか分からないことがありますが、電子カルテの場合、複数人が同じカルテを同時に閲覧することができます。
  • 医師・看護師のスタッフの採用が優位に
    電子カルテの導入率が高まる中で、電子カルテになれた医師・看護師が増加しています。それに伴い、就業環境としての電子カルテを導入しているかどうかを転職先の条件とする医師・看護師も増加傾向です。

電子カルテのデメリット

  • 導入・運用が軌道に乗るまで時間がかかる
    電子カルテの導入はすぐにできるものではありません。現場からの反対の声があれば導入するまでに1~2年の時間を要するケースもあります。導入後も運用を軌道に乗せるまでは、ある程度の期間が必要になります。
  • 導入コストがかかる

    サーバー設置の有無やレセコン一体型を選ぶのか等で、導入費用は大きく異なります。また、パソコンやタブレット端末の購入費用も必要です。

  • 停電時に使えない
    電子機器のため災害・停電時は利用できません。その場合は紙カルテに移行することになりますが、
    紙カルテの経験がない若い医師・看護師は対応が難しくなります。
  • セキュリティ対策が必要
    医療機関へのサイバー攻撃が増加するなか、2023年から「サイバーセキュリティ対策チェックリスト」が都道府県等の立入検査項目に追加されました。セキュリティ対策にはコストや専門性が必要なため、早めの計画が求められます。
  • スタッフのフォロー
    パソコンやタブレットに慣れていないスタッフがいるなかで、紙カルテから電子カルテへの移管作業が発生します。
    通常業務以外の負担が増えるため、現場スタッフへのケアが必要です。

電子カルテ情報共有サービスの今後の展望

医療機関が求められる対応

これらのことを踏まえ、医療機関は以下の対応が求められます。

・標準化された電子カルテシステムの導入
2025年度中に「電子カルテ情報共有サービス」の運用開始を目指すなか、
電子カルテ未導入の医療機関は、まず標準化された電子カルテの導入が求められるでしょう。

・標準コード(HL7 FHIR)への対応
現在標準化されていない電子カルテを導入している医療機関では、
電子カルテ情報共有サービスに連携するため、標準規格「HL7 FHIR」に対応した
電子カルテを導入・改修しなければなりません。
医療機関ごとに形式が違うと、正しく情報共有されないため、電子カルテ情報共有サービスで
取り扱うデータコードは、原則として標準規格として採用されているコードを使用する必要があります。

普及に向けた課題と対策

医療機関にとって電子カルテを新しく導入、標準化された電子カルテへの乗り換え、改修は現場に大きな影響を与えます。電子カルテを新しく導入する場合は、アナログ運用からデジタル運用に変わることになり、それに伴ったワークフローの変更、医師及びスタッフの情報リテラシーの向上が必要になります。
特に最近問題となっている個人情報の漏洩については、取り扱いや電子カルテに関するルールを見直し、
安心安全な電子カルテ運用を心がけなければなりません。

医療DXが譲渡を考えるきっかけに

令和6年度診療報酬改定での、医療DXに係る加算の新設・見直し、電子カルテ情報共有サービスの開始の
影響により、電子カルテ導入は普及率は伸びると思われます。

一方で当社にご相談をいただく中では、

「デジタル化の流れについていけない」
「電子カルテを導入するくらいなら譲渡する」
「近い将来に譲渡するのに、今、電子カルテにコストをかけるか迷っている」

といったお声も増えています。
もし加速するデジタル化でお悩みの場合は、
将来を見据え、病院・診療所を地域に残すための手段としてM&Aを
選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

そのほか運営法人・事業の価値が知りたい、病院・診療所の買収に興味があるなど、
どんな内容でも構いません。
気になることがありましたらお気軽にお問い合わせください。

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