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小さい介護施設経営を成功させるための効率化と運営改善ポイント

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A businessman selling to elderly people

はじめに

日本の高齢化が進む中、地域に根ざした小規模介護施設の運営者の皆さまからは、「もっと効率よく運営したいけれど、なかなか時間も人手も足りない」といった悩みをよくお聞きします。限られた人員・予算で運営している施設では、人材不足や収益圧迫、制度改定への対応など、多くの課題を抱えています。

本コラムでは、小規模介護施設が直面する課題とその解決策、運営効率化の方法、大規模化よる経営改善のポイントについて解説します。

小さい介護施設の運営効率化の重要性

◆小規模介護施設の傾向と失敗パターン

小規模介護施設は、アットホームな雰囲気や柔軟な対応といった強みを持つものの、少人数でサービスを維持しているため、以下のような傾向と課題を抱えています。

△経営者の属人的運営に依存

「毎日、自分が現場も事務も全部見て回らないと回らない…」そんな声を、多くの小規模施設の経営者様から聞きます。職員は少人数、でも業務は多岐にわたる──皆さまも、心当たりがあるのではないでしょうか。

  • リスクの集中
    経営者が体調不良や退職した場合、日常業務や決定権が滞り、施設運営が混乱します。
  • 意思決定の遅延
    すべての判断が経営者に依存するため、変化への対応(報酬改定や法改正、入居者増減など)が遅れます。
  • 継続性の欠如
    後継者や副リーダーの育成が不十分だと、経営者不在時に運営が止まるリスクが高まります。

△人材育成の仕組み不足

研修や教育が体系化されていない場合が多く、職員のスキルや知識の習得が個人任せになりがちです。特に1~2名のベテラン職員の退職が経営やサービスの質に大きく影響するため、育成体制の欠如は施設の存続にも直結します。ほかにも次のようなリスクが考えられます。

  • ベテラン職員退職による知識喪失
    経験豊富なスタッフが辞めると、施設内に蓄積されたノウハウが失われます。
  • 新人教育の負担増
    育成マニュアルや体系化された研修がないと、新人の教育にベテランが割かれ、現場業務が圧迫されます。
  • サービス品質のばらつき
    教育体制が未整備だと、職員によってケアの質に差が出やすくなります。

△投資に踏み切れず効率化できない

経営資金が限られている小規模施設では、ICTや施設改修、業務効率化ツールへの投資に慎重になりすぎる傾向があります。結果として、現場負担が増え、サービス品質の低下や経営の悪循環につながるケースがあります。

  • 業務負担の慢性化
    記録や勤怠管理、食事管理などの作業が手作業のまま残り、職員の負担が増大
  • 競合との差拡大
    近隣施設や大手施設が効率化やサービス向上に投資する中、差が開き、入居者獲得が難しくなる
  • 改善の機会損失
    効率化による職員の余裕や利用者満足度向上の効果を享受できない

◆効率化による長期的なメリット

「業務の整理や効率化はしたいけど、何から手をつけていいかわからない」そんな方も多いのではないでしょうか。実際に少しずつ業務フローを見直すだけでも、職員の負担が減り、ケアの質や施設の安定経営につながるケースもあります。効率化することで以下のようなメリットが考えられます。

  • 質の高いケアの維持
    業務フローを整理することで、職員一人ひとりの負担が軽減され、ケアの時間や注意力を利用者に集中できます。たとえば、記録作業や報告フローを簡素化するだけで、介護スタッフは直接ケアに使える時間が増えます。
  • 職員の働きやすさ向上と離職率低下
    余計な作業や不明確な業務を減らすことで、ストレスや疲労が軽減されます。働きやすさが向上すると、離職率の低下や採用時の魅力向上にもつながり、職員確保の課題を軽減できます。
  • 利用者満足度の向上
    職員が余裕をもってケアにあたることができるため、利用者や家族とのコミュニケーションが増え、サービスの質が向上します。利用者の要望や変化にも迅速に対応できるようになります。

◆効率化のために活用できるテクノロジー

「ICT化は費用もかかるし難しい」というイメージを持たれる方も多いでしょう。小規模施設では、全てをデジタル化する必要はありません。まずは負担が大きい業務だけに限定して導入するのが現実的です。具体例は次の通りです。

  • 夜勤・巡回負担軽減
    見守りセンサーや簡易モーションセンサーで夜間の安全確認を補助することで、職員の巡回回数を減らし、負担を軽減できます。
  • 勤怠管理の効率化
    紙やExcelで管理している場合、シンプルな勤怠アプリを導入するだけで、集計や給与計算の時間を大幅に短縮できます。
  • 情報共有・記録の簡素化
    タブレットやクラウドを使った簡易記録ツールを導入することで、紙ベースの記録の手間を減らし、必要な情報を迅速に共有可能です。

小規模介護施設の課題と解決策

先述の通り、小規模介護施設では人材不足や収益性の維持、地域との連携、利用者満足度の向上など多くの課題があります。

以下では、それぞれの課題に対して現実的かつ実践可能な改善策をご紹介します。

●人材不足への対策

効率化で職員の負担を軽減することも重要ですが、それだけでは人材確保の課題は解決しません。具体的には以下のような対策が有効です。

  • 評価制度や処遇改善加算を活用した給与体系の見直し
    職員のモチベーション向上と定着率アップを狙います。
  • 働きやすいシフト制度の導入
    夜勤・休日対応の負担を調整することで、職員満足度を高めます。
  • 学校・地域団体との連携による人材確保
    地域の福祉系学生やボランティアの活用、紹介制度の構築などで人材不足を補います。

●施設の収益性向上の方法

効率化による時間的余裕を生かしつつ、収益性改善には次のような取り組みが必要です。

  • 空床率を下げるための地域連携
    地域包括支援センターや医療機関と連携し、入居者紹介ルートを確保。
  • 介護保険外サービスの導入
    食事サービスや送迎オプション、短期利用などの追加サービスで収益多角化。
  • 利用者家族へのサポート拡充
    家族相談や在宅支援サービスを提供することで、施設の信頼度向上と利用率安定化。

●地域との連携による課題解決

小規模施設の運営では、地域とのネットワークが事業継続の鍵になります。

  • 医療機関や他施設とのネットワーク構築
    緊急受け入れや医療連携で、少人数でも安全・安定したサービス提供が可能になります。
  • 共同研修や情報共有
    複数施設で研修を共催したり、職員間でノウハウを共有することで、人材育成の負担を分散できます。

● 利用者満足度向上の具体策

効率化で職員の余裕を確保した上で、サービスの質向上に取り組むことが重要です。

  • 家族面談やオンライン情報共有
    利用者や家族とのコミュニケーションを密にし、ニーズを正確に把握します。
  • 利用者アンケートによるサービス改善
    定期的なアンケートで改善点を把握し、優先度をつけて対応。
  • 「安心して預けられる施設」というブランド形成
    小規模施設ならではの家庭的な雰囲気や柔軟な対応を打ち出し、差別化を図ります。

大規模化による運営改善もある

小規模介護施設が抱える課題を根本的に解決する方法として、「大規模化」に舵を切るという選択肢もあります。

-大規模化とは

大規模化とは、法人や施設の規模を拡大し、経営資源を効率的に活用して安定した運営を目指す方法です。規模が大きくなれば、スタッフのシフト調整や教育研修、設備投資が効率化され、収益性や人材確保力が向上します。規模拡大には次の手段があります。

  • 施設の増床や複数施設の統合
  • 他施設の買収や合併
  • 大手法人の傘下入り

◎大規模化のメリット

  • 経営基盤の安定化
    小さい介護施設では、数名の入退去や職員離職が経営に直結します。複数施設を持つことでリスクを分散し、安定的な運営が可能になります。
  • 人材の確保と定着
    規模が大きくなることで、職員の異動やシフト調整が柔軟になり、急な欠員にも対応しやすくなります。また、キャリアパスが広がるため「長く働ける環境」として職員の定着率向上にもつながります。
  • 投資のしやすさ
    ICT導入やリフォームなどの大きな投資も、複数施設でコストを分散できるため導入しやすくなります。結果として業務効率化やサービス品質の改善が進みます。
  • ブランド力・信頼性の向上
    「規模のある法人」として地域での知名度や安心感が高まり、利用者や家族からの信頼獲得にもつながります。紹介ルートも広がり、空床リスクを抑えられます。
  • 制度改正や地域ニーズへの対応力
    介護報酬改定や人員配置基準の変更などに対しても、複数施設を持つことで柔軟に対応でき、制度変更による影響を吸収しやすくなります。

大手法人の傘下入り(売却)については「うちの施設は小さいから売却は無理」と考えている経営者は少なくありません。しかし、施設の規模だけで売却の可否は決まりません。

立地や地域での評判、運営の安定性、従業員の定着状況など、買手にとっての魅力は多岐にわたります。たとえば、少人数でも効率よく運営され、地域で信頼を得ている施設であれば、大手法人や中堅企業の傘下に入ることで経営基盤を安定させることが可能です。小規模施設でも地域での存在価値や運営の安定性が買手にとって大きな魅力になります。規模の大小にとらわれず、まずは相談・検討することで現実的な選択肢が見えてくるでしょう。


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さいごに

小規模介護施設に限らず、介護業界では限られた人員や予算での運営は常に課題と隣り合わせです。業務効率化や職員定着の工夫は、サービスの質を守りながら経営を安定させる大切な手段となります。

加えて、介護報酬改定や物価上昇などで業界全体が厳しい状況にある今、現状維持では経営の先行きは不透明です。規模が小さい施設でも、改善策の検討や大手法人の傘下入りなど、選択肢を広げることで安定した経営の可能性は十分にあります。まずは情報を集め、現実的な道を考えることが重要です。

もし、譲渡や事業拡大をご検討されている場合は、ぜひ医療・介護・福祉業界に特化したM&A仲介会社の当社まで一度ご相談ください。

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コラム監修者

マネージャー
T.FUNAMOTO

  • 経歴
    九州の国立大学を卒業後、CBグループに新卒入社。病院・薬局・介護施設を対象としたコンサルティング業務を経て、2020年度よりM&A業務に従事。介護分野を中心に、これまで累計30件以上の成約支援に携わる。