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【2026年4月から順次施行】医療法改正のポイント―都市部では開業規制も

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はじめに

2025年12月に成立した「医療法等の一部を改正する法律」により、医療提供体制は大きな転換期を迎えています。今回の改正は、医療機関の役割分担、医師配置、医療DXの在り方までを含めた構造的な見直しを目的としています。

本コラムでは、改正医療法の全体像を整理しつつ、医療機関経営にどのような影響が想定されるのかを解説します。

●このコラムのポイント

  • 改正医療法では、病床数の調整にとどまらず、医療機関の役割分担、医師配置、医療DXまで含めて、地域医療の仕組み全体を組み替える改正になっている
  • 今後の医療機関運営では従来の延長線ではなく「地域で求められる役割」を前提とした経営判断が求められる
  • 改正への対応は今後も避けられず、病床の在り方、診療体制、DX化などについて、中長期視点での見直しが経営課題として顕在化していく

改正医療法の成立で何が変わるのか

◆改正の背景

この改正は、制度を部分的に手直しするものではなく、将来の医療提供体制をどのように維持していくかという視点から行われたものです。

背景には、急速な人口減少と高齢化の進行により、地域ごとに医療ニーズの質・量が大きく変化している現状があります。

特に2040年頃には、医療需要がピークを迎える一方で、医師・看護師をはじめとする医療人材の確保が一層困難になることが想定されています。こうした将来予測を踏まえ、限られた医療資源を有効に活用し、地域ごとに持続可能な医療提供体制を構築することが、今回の改正の大きな目的となっています。

◆ 改正内容の詳細

今回の改正では、2040年頃の医療提供体制を確保するため、「地域医療構想の見直し」「医師偏在対策」「医療DXの推進」が大きな柱になっています。

改正医療法は、令和12月12日に公布され、施行日は2027年4月1日(令和9年4月1日)を原則としていますが、一部の規定は2026年(令和8年)4月1日・10月1日から施行され段階的に施行されていく予定です。

それぞれの改定内容は以下の通りです。

1. 地域医療構想の見直しと機能強化

従来は病床数の調整が議論の中心となってきましたが、今回の改正では、病床に限らず、入院・外来・在宅医療や介護との連携まで含めて、地域全体の医療提供体制を包括的に捉える仕組みへと転換されます。

  • 構想範囲の拡大(令和9年4月1日施行)
    病床だけでなく、入院・外来・在宅医療、介護との連携を含む将来の医療提供体制全体の構想となります。
  • 市町村の参画(令和9年4月1日施行) 
    地域医療構想調整会議の構成員に市町村を明確に位置づけ、在宅医療や介護との連携を協議する際の参画を求めます。
  • 報告制度の新設(令和8年10月1日施行)
    高齢者救急、地域急性期、在宅医療等連携、急性期拠点などの「医療機関機能報告制度」が創設されます。(※「病床機能報告対象病院等」の名称を「医療機関機能等報告対象病院等」に改められます)
  • 病床削減の支援(令和7年12月12日施行)
    医療機関が経営安定のために緊急に病床を削減する事業を都道府県が支援できるようになり、削減時には医療計画上の基準病床数も削減されます。ただし、これは医療費削減ありきではなく、地域の実情や質の確保を前提に行われるとのことです。

 

2. 医師偏在是正に向けた総合的な対策

地域や診療科による医師の偏りを解消するための法的枠組みが強化されます。

  • 重点区域と医師手当(公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日施行) 
    都道府県知事が「重点的に医師を確保すべき区域」を定め、保険者からの拠出金を財源として、その区域で勤務する医師への手当を支給する事業を設けます。
  • 外来医師過多区域への規制(令和8年4月1日施行)
    医師が多い区域での無床診療所の新規開設に対し、事前の届出制、要請・勧告・公表、保険医療機関の指定期間の短縮といった規制が入るようになります。
  • 管理者の要件化(令和8年4月1日施行)
    保険医療機関の管理者(院長など)になるには、保険医として一定年数の従事経験を持つことなどが要件とされます。

 

3. 医療DXの推進

デジタル技術を活用し、効率的で質の高い医療提供を目指します。
※公布の日から起算して1~3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行

  • 電子カルテの普及目標
    政府は令和12年(2030年)12月31日までに、クラウド等の活用により、電子カルテの普及率を約100%にすることを達成しなければならないと定めました。
  • 情報の共有と二次利用
    電子カルテ情報の医療機関間での共有や、感染症発生届のシステム経由での提出が可能になります。また、国が保有する医療・介護データベースの仮名化情報の二次利用も推進されます。
  • 運営主体の改組
    社会保険診療報酬支払基金が医療DXの運営主体となるよう、名称や組織体制の見直しが行われます。また、厚生労働大臣は、医療DXを推進するための「医療情報化推進方針」を策定し、その他公費負担医療等に係る規定を整備するとしています。

 

4. 新たな医療形態と規制

  • オンライン診療の明文化(令和8年4月1日施行)
    医療法に「オンライン診療」が定義され、手続規定が整備されることになります。
    また、郵便局をオンライン診療や服薬指導、薬剤配送の拠点として活用する環境整備も進められます。
  • 美容医療(公布の日から起算して 2年を超えない範囲内において政令で定める日に施行)
    美容医療を行う医療機関に対し、定期的な報告義務などが課されます。

 

5. 医療計画の高度化と従事者の処遇

  • ロジックモデルの導入(公布日、令和8年4月1日又は令和9年4月1日施行) 
    医療計画において、目標達成のための実効性のある取組と効果評価(PDCAサイクル)を推進するため、ロジックモデルの活用が支援されます。
  • 介護・障害福祉従事者の賃上げ(令和7年12月12日施行)
    優れた人材確保のため、他職種と遜色のない処遇改善に向けた措置を機動的に講じることが明記されました。
  • 高齢者対応(施行日については記載なし
    85歳以上の医療需要増に対応し、入院リスクを避けるための在宅医療の強化や、低栄養・サルコペニア対策の診療報酬上の評価が検討されます。

出典:医療法等の一部を改正する法律の成立について(報告)|厚生労働省
「医療法等の一部を改正する法律」の公布及び一部施行について(通知)|厚生労働省


改正医療法によって医療機関が受ける主な影響

前章では、改正医療法により導入・見直しされる内容について整理しました。
次にこれらの改正を踏まえ、医療機関の経営・運営にどのような影響が生じるのか、そして今後どのような対応が求められるのかを考えていきます。

■ 「地域での役割」が明確に問われる

改正医療法では、地域医療構想の中で医療機関の機能や役割を整理していく方向性が示されています。

  • 高齢者救急
  • 地域急性期
  • 在宅医療等との連携機能
  • 急性期拠点機能

これにより今後は、「病床を持っていること」や「長年地域で運営してきたこと」だけでは十分とは言えず、「地域の医療提供体制の中で、どの機能を担っている医療機関なのか」を説明できることが求められます。

■ 病床について、これまで以上に「将来像」を意識する場面が増える

病床数の調整や適正化に関する仕組みが整理されましたが、特に重要なのは、経営安定等を理由として病床を削減した場合、その病床数が医療計画上の基準病床数からも減算されるという点です。

現場ではすでに、人手不足で病床をフル稼働できない、稼働率が下がり、維持が負担になってきているといった声も少なくありませんが、改正医療法の下では、こうした状況を踏まえて病床を減らした場合、将来的に病床数を戻しにくくなる可能性が制度上示されています。

そのため今後は、「当面の運営をどうするか」だけでなく、「この病床を中長期的にどう位置付けるか」を考える場面が増えていくと考えられます。

■ 医師偏在対策により、クリニックの「立地と体制」が制限される時代へ

医師偏在対策の強化により、特にクリニックにおいては、

  • 開設エリア

  • 管理者の要件

  • 医療提供体制

が、これまで以上に制度の影響を受けるようになります。

外来医師過多区域では、無床診療所の新規開設に対する事前届出などが必要となり、「開業すれば自由に診療できる」という前提は成り立たなくなりつつあります。既存のクリニックであっても、管理者要件や地域医療との関係性を含めた運営体制の見直しが求められます。

■ オンライン診療・美容医療は「自由度」が下がる

オンライン診療が医療法上明確に位置付けられたことで、今後は「できるかどうか」ではなく、どう運用しているかが問われます。

  • 実施方法
  • 実施体制
  • 患者の急変時対応
  • オンライン診療を受ける場所(施設)

などについて法令・指針に基づいた運用が求められ、不十分な場合、法令上のリスクが顕在化します。

また、美容医療についても定期報告義務が設けられ、自由診療であっても、一定の管理・監督下に置かれる領域へと変化していきます。

■ 医療DX対応が「選択肢」から「前提条件」へ

電子カルテ情報の共有や医療情報基盤整備は、今後の医療提供体制の前提条件として位置づけられています。

  • 電子カルテ情報共有サービスの推進
  • クラウド技術等の活用
  • 令和12年(2030年)までに電子カルテ普及率ほぼ100%を目標

医療連携の可否や業務効率、人材確保にも影響する要素です。これにより、IT投資が遅れている医療機関ほど、業務効率・人材確保・連携面で不利になる構造が進みつつあります。


医療機関が今後、求められる対応

■ 地域医療構想を前提にした経営判断がより現実的なテーマに

今後の医療機関経営では、

  • 現在の病床数を将来も維持できるのか
  • 急性期・回復期・慢性期のどの機能を担い続けるのか
  • 在宅医療や外来機能へのシフトを検討すべきか
  • 単独での継続か、連携・再編を視野に入れるのか

といった点を、地域全体の医療提供体制の中でどう位置づけられるかという視点で整理していく必要があります。

特に病床を有する医療機関では、「今の延長線で運営を続けた場合、5年後・10年後も地域から必要とされているか」を一度立ち止まって考えることが、結果的に無理のない経営判断につながります。地域医療構想は“制限”ではなく、将来の選択肢を早めに検討するための地図として捉えることが重要です。

■ 法令対応を前提とした診療体制の見直し

オンライン診療や美容医療を含め、診療の「やり方」そのものに対するガバナンス強化が求められます。

  • 誰がどこまで責任を負うのか(医師・法人・管理体制)

  • どのような手順で診療を行っているのか(院内ルールの明文化)

  • 記録や説明が適切に残されているか(カルテ・同意・報告体制)

といった点を、問題が起きたときに説明できる状態にしておくことが重要になります。

現場では「これまで大きなトラブルはなかった」というケースも多いと思いますが、今後はトラブルが起きてから対応するのではなく、起きない前提で体制を整えているかが問われる局面が増えていきます。

これは現場の負担を増やすためのものではなく、結果として医療機関と医療従事者を守る仕組みとして位置づけていく視点が必要です。

■ 医療DXをコストではなく「将来投資」として位置付ける

電子カルテの標準化や情報連携への対応は、単なるIT化や業務効率化にとどまらず、医療機関の将来像そのものに影響するテーマになっています。

医療DXを進めることで、

  • 人材不足の中でも業務を回せる体制づくり

  • 職員間・多職種間の情報共有の質向上

  • 他医療機関・介護事業者との連携のしやすさ

といった点に差が出てきます。

特に今後は、「どれだけ良い医療をしているか」だけでなく、「どれだけ仕組みとして再現性・継続性があるか」が、外部からも見られるようになります。短期的には負担に感じられる取り組みであっても、医療DXは将来の選択肢を狭めないための投資として、段階的に検討していくことが現実的です。

さいごに

今回の改正医療法は、医療提供体制を将来にわたって維持するための制度改正である一方で、医療機関にとっては負担や制約が増える内容も少なくありません。

病床の扱いや地域での役割の整理、医師偏在対策、DX対応など、現場では「対応しきれるのか」「これ以上の負担は厳しい」と感じる場面も多いと思います。これまで各医療機関が努力や工夫で何とか支えてきた部分について、制度として一定の方向付けや管理が入ってくる点は、決して軽い変化ではありません。

一方で、人口減少と人材不足が進む中、従来と同じ形の医療提供を続けることが難しくなっているのも事実です。今回の改正は、そうした現実を前提に、「どの医療機関が、どの役割を担い、どう連携していくのか」を地域全体で整理していこうとする動きとも言えます。

すぐに答えが出るものではありませんが、改正医療法を現場を縛る制度として捉えるのではなく、将来に向けた選択肢を考えるための枠組みとしてどう活用できるか。自院の状況や地域の実情を踏まえながら、少しずつ向き合っていくことが、結果として無理のない経営判断につながっていくのではないでしょうか。

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コラム監修者

ディレクター
S.KOMURA

  • 経歴
    体育大学卒業後、人材教育会社に入職。人の人生に係わる仕事に興味を持ち、キャリアブレイン(現CBホールディングス)に転職し、医療法人へのコンサルティング業務や、医師のキャリアアドバイザーとして勤務。その後、CBパートナーズでM&Aに携わり、西日本の介護福祉事業部、医療事業部を立ち上げを主導。現在に至るまで、薬局・医療・介護領域における幅広いM&A案件を手がけている。