日本の高齢化社会が進行する中、介護施設の需要はますます高まりつつあります。一方で、介護業界は人手不足や経営面での課題が急務となっており、小規模な施設運営者にとっては、その運営維持が厳しくなっている現状です。
このような状況の中、大手企業の傘下に入るという選択肢を検討されている経営者の方もいらっしゃるかと思います。本コラムでは、介護事業のM&Aの動向や、傘下に入ることでどのようなメリット・デメリットをもたらすのかを解説します。
近年、介護事業の統廃合は加速しています。
当社にご相談を頂く件数も年々増えており、年間100件以上の譲渡のご相談を受けております。介護事業の経営者様がどのようなお悩みを持っているかというと、以下のようなお悩み・ご相談が多くなっております。
など、同じようなお悩みで苦労されている方がほとんどです。
このような状況を解決する方法として、M&A(第三者への承継)を選択する経営者様が増えております。
特に譲渡先のお相手候補としては、自社よりも大きな法人を希望する方が多く、実際に大企業の傘下に入ることで、双方共にwin-winな関係を築くことができます。
介護業界における大手企業のM&A(合併・買収)の動向について、近年、少子高齢化の進行に伴い、介護サービスの需要が高まる中、規模の拡大やサービス網の強化を目指す大手企業による買収が活発化しています。
介護事業者によるM&Aは、単に規模拡大を狙うだけではなく、地域に密着したサービス提供体制の強化を目的としています。大手企業が地域に根ざした中小企業を買収することで、地域包括ケアシステムの構築が加速し、高齢者の多様なニーズに対応する体制が整備されています。
さらに、買収先の企業が持つノウハウや地域に特化したサービスを自社の経営資源と統合することで、より質の高い介護サービスが提供されると期待されています。
以下は、近年の大手企業による代表的なM&A事例です。
「傘下に入る」とは、自社を大手法人に譲渡(売却)し、そのグループの一員として事業を継続することを指します。経営権や株式を譲り渡すことで、経営の責任は大手側に移りますが、施設運営や現場スタッフ、サービス内容は維持されるケースが多く、地域密着の介護をそのまま続けられる点が大きな特徴です。政府は、介護事業の協働化・大規模化を謳っていますので、介護事業の経営者は、自社の事業を政府の方針に沿うようには、どう舵を切っていくかを試されている環境でもあると言えます。
大手傘下に入ることで、介護施設は資金面での安定性を享受できます。例えば、設備投資や施設の拡張、労働環境の改善などを行う際に、企業グループからの支援を受けることができるため、経営資源を効率的に活用できます。中小規模の介護施設では、金融機関からの融資を受けにくいことがありますが、大企業傘下に入ることで信頼性が高まり、資金調達が円滑に進む可能性が高くなります。
大手傘下に入ることで、ブランド力を借りることができます。既存の企業ブランドに信頼性があり、地域住民や家族にとって安心感を与える要素となります。また、企業グループ全体での集客活動やマーケティング支援も期待でき、集客力を高めることができます。特に介護業界では、施設選びの際に家族や入居者が求める安心感や信頼が非常に重要です。
大手企業の長年の運営経験や業界に特化したノウハウを活かした経営が可能になります。例えば、財務管理や人事管理、運営効率の向上を目的としたITシステムの導入など、運営の効率化が進みます。これにより、業務の負担が軽減され、現場スタッフがより質の高いケアを提供できるようになります。
大企業は福利厚生の充実や採用活動の多角化が進んでいるため、優れた人材の確保が可能になります。またネットワークやリソースを活用することで、求人の露出が増え、特に新卒採用活動が実施しやすくなり、若手人材の獲得がしやすくなります。また、世代交代の問題も解決しやすく、育成プログラムを通じて次世代のリーダーが育成され、安定的な運営が可能になります。これにより、介護施設の人材確保が強化され、長期的な経営安定が期待できます。
大企業傘下に入ることで、個別の施設経営における自由度が制限される可能性があります。企業グループ内の方針に従う必要があり、現場の裁量が限られる場合があります。特に地域密着型のサービスを提供している施設では、企業グループ全体の方針と地域のニーズが乖離することもあり、柔軟な対応が難しくなることがあります。
中小規模の介護施設が大企業の傘下に入る場合、その独立性を失うことになります。経営理念や施設の方針が企業グループ全体に統一されるため、元々の運営方針を貫けない場合もあります。このことが、スタッフや入居者にとって精神的な影響を与えることもあり、施設の雰囲気が変わってしまうことも考えられます。
介護業界におけるM&Aは、今後さらに加速することが予想されます。少子高齢化が進む中、介護サービスの需要はますます高まっており、より多くの企業が地域密着型のサービス提供や事業拡大を目指して買収を進めるでしょう。特に、地域包括ケアシステムを支えるために、さまざまな介護サービスを手がける企業の統合が進むと考えられます。
また、買収を通じて得られる経営資源やノウハウ、地域に特化したサービスが他の企業と差別化を図る要因となり、競争力の強化に繋がります。M&Aは、単なる企業の規模拡大にとどまらず、業界全体の質を向上させるための重要な戦略としてますます注目を集めています。
一方で、「自ら大手企業に譲渡を打診してみた」という経営者の方もいらっしゃいますが、実際には条件面のすり合わせや交渉が難航し、なかなか話が進まないケースも少なくありません。こうした場合、介護業界に精通したM&Aアドバイザーのサポートを受けることで、適切な相手先とのマッチングや交渉の円滑化、法務・財務面の調整などをスムーズに進めることができます。
もし、大手企業への譲渡を検討されている場合、ぜひ医療・介護・福祉業界に特化したM&A仲介会社の当社まで一度ご相談ください。
まずはお話を聞いてみたいという方も大歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
ディレクター
R.OKURA
