日本では皆様もご存じの通り、高齢化が進んでおり超高齢化社会が目の前に見えております。
65歳以上人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった平成27年に3,379万人となり、「団塊の世代」と呼ばれる人々が全員高齢者になる令和7年には3,653万人まで増加するといわれています。
令和25年に3,953万人となるピークを迎えるまでは、増え続けると推計されており、令和19年には高齢者割合が33%を超え、国民の3人に1人が65歳以上になります。
医師についても高齢化が進み、厚生労働省の資料によると、医師の平均年齢は年々上昇しており、病院(医育機関附属の病院を除く)では47.6 歳、医育機関附属の病院では39.6 歳なのに対し、診療所は60.4歳と医師の高齢化が進んでいることがわかります。診療所の医師の平均年齢の推移は、昭和63 年以降、横ばいの傾向でしたが平成22 年からは上昇しています。
国としては若手医師の育成などの施策に取り組む方針ではありますが、老々介護、老々医療が益々加速していくことが予測されます。
出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況)」
出典:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
帝国データバンクの調査によると、2024年の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産は計64件となり、過去20年で最多件数を更新しました。倒産件数の内訳として、クリニックでは32件、歯科クリニックでは25件となりました。いずれも過去最多レベルで、入院設備を持つ20床以上の病院でも、倒産が前年の3.5倍となる7件に急増しました。休廃業・解散もすべての業態で増加し、クリニックが6割、歯科医院が2割を占めており、小規模医療機関の閉鎖が進んでいます。
背景には、人口減少や経営者の高齢化、人手不足、医療設備の老朽化に加え、電気代や人件費、備品費などのコスト上昇があります。診療報酬とのバランスが崩れることで、採算が取れずに経営破綻に陥るケースが増えています。
2024年には、美容系医療機関の大型倒産も目立ちました。医療脱毛サロン「アリシアクリニック」などが多額の負債を抱えて破産を申請し、2025年に入ってからも大規模な病院倒産が相次いでいます。2025年夏ごろには、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化する予定です。返済原資を確保できない医療機関が、市場から撤退する動きがさらに加速する可能性もあります。
出典:帝国データバンク|2024年「医療機関」の倒産、休廃業・解散調査
医師の高齢化により、後継者を探す医療機関からのご相談が年々増加しております。大きな理由としては以下の通りです。
医院、クリニックの乱立、自然災害に対してのリスク、コロナ等の突発的な災害リスクなどを鑑み、開業を希望される医師は減少し、病院などで永続的に勤務することを希望される医師が増加しております。その背景もあり、開業医の後継者候補の医師についても地元に戻らず、都市部の病院勤務で生涯を過ごそうとお考えになられる方が増えています。
診療報酬の改定、競合クリニックの乱立による患者の分散など、開業時に比べると開業医の創業者利益は手に入れづらくなっています。わざわざその厳しい環境下に身内である後継者候補に引き継がせるよりも、「第三者に承継し、創業者利益を得た上で相続する」といった方向性に舵を切る方も多くなってきました。
近年、医療機関の経営には高度なマネジメント能力や専門知識が求められるようになってきました。人材採用の難しさや人件費の高騰、IT対応、コンプライアンスの強化など、診療以外の業務負担が大きくなっています。そのため、「医師としての腕はあっても、経営には自信がない」と感じる後継者候補も少なくありません。
多くの開業医がバブル期以前に開業しており、その際に建てられた建物や導入された医療機器が老朽化しています。建て替えや大規模な設備更新には多額の費用がかかるため、後継者候補が承継を敬遠する要因となっています。資金調達のリスクや、承継後の経営改善の重圧を考慮し、「継がない」という選択をするケースが増えています。
かつては「家業を継ぐ」ことが当然とされていた時代もありましたが、現在では子どもが親の職業にこだわらず、自身の人生を選ぶ傾向が強くなっています。特に医師免許を持っていたとしても、必ずしも親のクリニックを継ぐ必要はないと考えるケースが多く、家族間でも承継が難航する事例が増えています。
後継者候補が不在である院長先生の悩みは地域医療の継続にあります。
比較的都市部で同科目が乱立しているような地域であればそこまで影響はないかもしれませんが、同科目を標榜する医院や病院がその地域では少ない場合は、地域医療を存続させるために、閉院せずに続けられる限り続ける。といった医院は各所で存在します。
しかしながら、限界はいつか到達してしまいます。そうなると周りに及ぼす影響は少なくありませんので、身体が動き、判断ができるうちに第三者に承継するといった選択を取ることも考えられます。
閉院すると、清算するためにコストがかかりますが、承継する場合には、対象法人の資産状況によっては創業者利益を得られる可能性があります。(医療法人の場合は新法か旧法によっても変わります。)閉院をお考えになられた場合には、承継も視野に入れてご相談されることをお勧めいたします。
第三者承継の大きなメリットの一つに、人材や経営ノウハウといったリソースの補完があります。特に個人経営の医療機関では、人材不足や事務的業務の負担が経営を圧迫する要因となっています。承継先が医療法人やグループ企業であれば、これまで一人で担っていた経営・人事・法務・会計といった業務を分担でき、現場の医師は本来の診療に集中できる体制が整います。
閉院の場合、勤務スタッフの雇用は終了となり、長年通院していた患者も転院を余儀なくされます。しかし、第三者承継によって医院が継続すれば、従業員の雇用が守られ、患者の治療の継続性も確保することができます。これは、医療従事者・患者双方にとって大きなメリットになります。
第三者承継は、経営から引退を考える先生にとって、今後の人生設計を具体的に立てるきっかけになります。承継後に勤務医として残る、完全にリタイアする、副業的に関わり続けるなど、多様な選択肢を取ることが可能です。ご自身の健康やご家族の将来を見据えながら、最適なタイミングで円満にバトンを渡すことができます。
後継者不在の解決策として、第三者への承継を考える際に、2通りの方法があります。
前述した通り、病院勤務希望の医師が増えています。
一方で、個人で開業を希望される医師も一定数はいらっしゃいます。
標榜科目や立地が対象医院と一致する必要がありますが、意欲の高い若手の医師に承継することで、地域医療の末永い継続にも繋がります。
デメリットとしては、個人の開業希望の医師は立地のこだわりが強い方が多いため、「希望する立地が合致するかどうかが承継できるかどうかの争点になりやすい」という点です。幅広く開業希望医師を紹介できる実績が必要となるでしょう。
地域の医療法人において、承継できる医院などを探している法人は一定数いらっしゃいます。特にその医療法人と同一医療圏の場合は、興味を持ちやすく話もまとまりやすいケースが多いです。デメリットとしては、「承継先の医療法人内で医師の保有ができているかどうか」です
すぐに医師を入れることができないこともありますので、その場合は承継だけを先に済ませてから、新たな医師が勤務できるようになるまで、雇われ院長として残留することで、承継を成立させることも可能です。
CBパートナーズでは、上記①②どちらの承継もご支援しております。もし、ご興味をお持ちいただけましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。
では実際の第三者承継の成約事例をご紹介します。
売手様は後継者不在のため、数年前から医局やお知り合いと複数回面談をされましたが、承継が叶わずCBパートナーズへご相談いただきました。成約までの期間は約18か月間で、大規模な法人から開業希望の個人まで広くアプローチした上で広域でクリニックを展開する医療法人への承継が決定しました。
ご自身の高齢化と、後継者不在に悩まれている売手様から、当社に第三者への譲渡相談をいただきました。開業のための医院の承継を検討されていた買手様に当該案件をご紹介したところ強い関心を持たれ、両者の面談を設定しました。承継にあたっての条件や医療に関するお考えが合致され、約24か月間の期間を経て成約に至りました。
後継者問題の解決は、できるだけ早い段階で計画を立てることが重要です。
よくあるのが、医院としての評価が下がってからいただくご相談です。いざ承継のタイミングとなった際、すでに先生が体力的な制約により、午前診療しかできない状態で、売上が大幅に低下、患者数も減少してしまっているというケースです。
譲受を検討する買主にとっては、現状の業績や患者数が重要な判断材料となるため、医院の評価の低下は承継交渉に大きな影響を及ぼします。逆に業績の良い医院は良い後継者を見つけやすく、経営状態が良好な時期の譲渡はより高い譲渡価格での交渉が可能になります。
体力面での制約や急な体調不良に備えて、承継の準備を始めておくことは、医院の価値を最大限に保ちながら、スムーズな承継を実現することができます。
CBパートナーズでは医療業界の承継問題解決に特化した経験豊富なアドバイザーが揃っております。
幅広いネットワークとノウハウで思いに寄り添ったサポートをさせていただきます。
運営されている法人の価値が知りたい、承継の流れが知りたいなど、 どんな内容でも構いませんので、気になることがございましたらお気軽にお問い合わせください。
作成日:2024年4月9日
マネージャー
H.FUJIMOTO