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クリニック・病院のM&A・事業承継の流れや相場とは?

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作成日:2023年11月8日

 

M&Aにおける病院やクリニックの事業承継の相場は、多くの要因に左右されます。地域や設備の評価、医療スタッフの経験、患者数などが影響し、一般的には売上高の一部が譲渡対価に反映され、法的な手続きや契約条件も重要です。この記事では、事業承継の流れや相場の基本を解説します。

クリニック・病院の事業承継やM&Aについて

クリニック・病院の事業承継やM&Aは、組織の発展や競争力強化の手段として注目されています。適切な戦略を持ち、スムーズな移行を図ることが重要です。

事業承継とは

事業承継とは、経営者やオーナーが所有する事業を後継者に引き継ぐプロセスを指します。事業承継にはいくつかの方法があります。

  •  親族内事業承継
    親族内事業承継は、事業を家族内で引き継ぐ方法です。この場合、家族間の信頼関係やビジョンの共有が重要です。明確な計画と円滑なコミュニケーションが成功の鍵となります。
  • 親族外事業承継
    親族外事業承継は、外部からの後継者を迎え入れる方法です。適切な後継者を見つけるための選定プロセスや、組織文化の承継に注意が必要です。適切な支援とトレーニングが成功への道を開きます。
  • M&Aを使った事業承継
    M&Aを活用した事業承継は、他の医療機関との統合や買収を通じて事業を拡大する方法です。戦略的な選定とデューデリジェンスが成功の鍵となります。統合プロセスの適切な管理が重要です。

クリニック・病院の動向

医師の高齢化と後継者不在

医療業界ではM&Aによる事業承継のニーズは高まっていますが、背景としては医師の高齢化と後継者不足があります。厚生労働省の調査によると病院の開設者または法人の代表者の平均年齢が64.9歳、クリニックや診療所では平均年齢が62.5歳となっており、全国の社長平均年齢である60.5歳と比べても医療業界では高齢化が進んでいることが分かります。また日本医師会の「医業承継実態調査」によると「現時点で後継者はいない」「後継者はいるが意思確認していない」をあわせると後継者不在率が75.9%となっており、こちらも全業種の後継者不在率53.9%を大きく上回る数字となっています。

出典:帝国データバンク 全国「後継者不在率」動向調査(2023 年) 全国「社長年齢」分析調査(2023年)

休廃業・解散件数が過去最多に

2023年度には医療機関の休廃業・解散件数が一年で709件となり過去最多になりました。この結果は10年前と比較すると2.3倍に増えています。特に診療所の件数は著しく、前年より159件増え580件となりました。こちらも背景としては後継者不在問題があげられます。

出典:帝国データバンク 医療機関の「休廃業・解散」 動向調査(2023年度)

クリニック・病院の事業承継やM&Aについて知っておくべきこと

M&Aのメリット

・通院患者やスタッフの雇用を守ることができる

医業承継におけるM&Aのメリットの一つは、地域医療を存続することができることから通院患者を守ることができるという点があります。
また、条件によっては長年働いてくれているスタッフの雇用を継続することもできます。

退職金+創業者利益を受け取ることができる

M&Aを通じて第三者承継を行うことで、通常の退職金だけでなく、譲渡に対する対価を受け取ることも可能です。また退職後は常勤や非常勤など自分のペースで臨床に出ることもできます。また、金融機関への借入金、賃貸借契約、リース契約などの連帯保証による個人保証についても承継することができます。

M&Aのデメリット

・承継実行までに時間がかかる場合がある

マッチング先がなかなか見つからない場合や、見つかったとしても双方での条件のすり合わせに時間がかかってしまう場合があります。また、承継実行に向けては複数の資料が必要となり、少々お手間に感じる可能性もあります。

・理念や方針が変わってしまう可能性がある

M&Aによる医業承継では、方針のズレが起ってしまう可能性があります。運営方針や医療のスタイルの違いが原因で、摩擦が生じることがあるため、円滑な移行を図るためには、契約締結前から十分なコミュニケーションを取ること重要です。

クリニック・病院の売却で用いられる主なM&A手法

M&Aによる売却は一定の取引手法(スキーム)に沿って行われます。クリニック・病院の場合、医療法に従った手続きが求められます。

医療事業の承継方法は、大きく分けると以下の2つに分かれます。
・事業譲渡
・法人譲渡(社員・理事の交代)

また事業譲渡と法人譲渡で大きく異なる点は、
開設者変更にかかる諸々の手続き」と「対価の支払方法や受領者」
が挙げられます。

  • 事業譲渡
    事業譲渡は病院が運営している事業全体またはその一部を他の法人や個人に譲渡することを指します。開設者が変更になるため、該当地区の保健所・厚生局・都道府県への届け出、賃貸借契約、雇用契約、リース契約等すべての契約を結び直し又は名義変更が必要となります。また、対価は、事業譲渡を行った法人で受領することになりますので事業譲渡益として、損益通算を行い法人税が課されます。そのため、役員の退職慰労金支給も、同時期に行うことも多くあります。
  • 法人譲渡
    法人譲渡(社員・理事の変更)=医療法人と事業をそのまま承継する形式となります。 事業譲渡とは違い、社員・理事を変更するだけで承継が完了するスキームです。 (理事長及び理事を変更するケースがほとんどですので 行政への届け出や契約書上の代表者変更は行う必要はありますが、 新規での開設許可や保険指定等とは手続きが異なり、比較的簡便です。) 対価は、出資持分の買取や退職慰労金等、複数の支払いスキームを複合的に使い支払うことが多いですが、法人様ごとの状態や背景によって、取りうる方法が異なるため、早めにアドバイザーや税理士に相談することを推奨いたします。

クリニック・病院の事業承継の流れ

医療業界は他の業界とは異なり、報酬改定や特異的な習慣をもった業界であるため、仲介業者の選定は非常に重要です。
ここでは医院承継の流れや仲介業者の選び方について紹介します。

1.仲介業者を選定し、契約する

M&A仲介会社は、M&A実行までの買手や売手探しをメインとして、様々な手続きをサポートする会社です。
M&A仲介会社と一括りにしても、専門分野や得意分野は分かれていて、“大手だから”という理由で安易に選んでしまうと後悔してしまうこともあります。
仲介会社を選ぶポイントは、事業に合った企業を取り扱っているかどうかが非常に重要です。ホームページなどを参考にして仲介会社を決定し、契約を締結しましょう。

仲介会社を選ぶポイントはこちら

2.承継先を決めて契約を締結する

面談を経て双方が合意をし、承継することになると、条件をすり合わせて基本合意書を締結します。

3.買収監査(デューデリジェンス)

基本合意書を締結後、承継先の財務内容等の正確性を確認する「買収監査(デューデリジェンス)」を実施します。

4.最終契約書を締結する

買収監査(デューデリジェンス)の結果に問題がなければ、最終契約書を締結させます。何か問題があった場合は、締結前に承継条件の見直しを行います。

5.関係者への告知や調整を行う

関係者へ告知を行います。また残留するスタッフ等に説明会などを実施します。その後クロージングとなります。

【当社事例】クリニックや病院の譲渡価格について

医院 内科系/譲渡対価8億6,000万円

年間売上:約3億3,700万円
M&A形態:持分譲渡
エリア:北海道・東北エリア
譲渡背景:後継者不在

病院 総合診療科/譲渡対価5億5,000万円

年間売上:約8億7,000万円
M&A形態:事業譲渡
エリア:関西エリア
譲渡背景:後継者不在、不採算整理

外科系/譲渡対価900万円

年間売上:約4,600万円
M&A形態:事業譲渡
エリア:関西地方
譲渡背景:後継者不在

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