介護施設

光熱費・物価高騰から考える介護M&A

介護事業所の光熱費が高騰 前年比40%以上

<表1>

参照:一般社団法人全国介護事業者協議会 一般社団法人介護人材政策研究会 一般社団法人在宅介護協会「物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査について」より

電気代などの光熱費の増大が顕著になっています。昨年の4月から12月の間に、前年同期と比較しても40%以上増えた施設が約3割。30%以上が約5割、20%以上が約7割となっています。内訳としては表1のようになっています。

主な原因は、ウクライナ情勢などによる石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入価格高騰の影響で、燃料費調整額が値上げされているためです。この価格高騰への対策として、「預貯金を取り崩している」「昇給や賞与の減額を行う」「人員削減、新規採用の停止を行う」といった介護事業者様の回答が多く見られました。

物価高騰で倒産の危機

光熱費高騰の背景にあるウクライナ情勢について、北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ事務総長は、「数年間続くことを我々は覚悟しなければならない」と述べていることから、光熱費高騰により経営危機に直面する施設・事業所は増加すると予想されます。

<表2>

参照:一般社団法人全国介護事業者協議会 一般社団法人介護人材政策研究会 一般社団法人在宅介護協会「物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査について」より

表2より、約3割の事業所が廃業や倒産の危機に至る可能性があると答えています。さらに新型コロナウイルスの影響も合わせ、2022年度は過去最多の倒産件数を記録しています。倒産した事業所の8割が10人規模の小規模事業所であり、特に小規模事業所については、今後も厳しい経営が続いていくことが懸念されます。

大手企業が新規参入で介護M&Aをするワケ

物価上昇の影響で厳しい経営が続くことが懸念される介護業界ではありますが、介護とは関わりのなかった大手企業が、介護事業への新規参入を続けています。

今まで介護事業を行ってきた中小企業などでは、慢性的な人員不足が続いており、2040年には生産年齢人口の減少が加速すると推測され、人材確保は向かい風となっております。一方で、政府はこの状況を見据え、社会保障制度の見直しを開始しました。具体的には、70歳まで就労希望者や外国人労働者の受け入れなどによる就業機会の確保、健康寿命を3年以上伸ばして男女とも2040年までに75歳以上を目指し、地域や保険者間の格差解消を図るとしています。さらに、ロボット・AI・ICTなどの実現化を進め、2040年時点におけるサービス提供の単位時間当たり5%改善(医師については7%)を目指す予定です。中小企業では設備更新やICTへの投資が重荷となる一方で、このような国の施策は新規参入企業にとっては、追い風となり、資本的に余裕のあるいわゆる「大手」と呼ばれる企業が新規参入しやすい状況が介護事業のM&Aを後押ししています。

「あと1年行動が早ければ」と後悔しないために

物価高騰や人材確保の問題のほか、さまざまなご理由から、弊社にご譲渡の相談をいただきます。廃業に追い込まれてしまう前に、他の方に事業を引き継ぐということは、利用者様や従業員、連携する医療機関や取引先を守るための有効な手段の1つです。先に言及した通り、大手企業の新規参入など介護業界のマーケットは今後も大きくなることが想定でき、どこかしら譲受先はあるだろと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご相談が遅れてしまったことで、譲受先が見つからなかったという事例もございます。

お客様にとって大切な会社ですので、ご譲渡を考えるのに躊躇されるお気持ちは分かります。しかし、1年行動が遅れたために、多くの方に影響が出てしまうことも確かです。弊社は長年、介護・福祉業界にいたからこそ、多くの引き出しを持っていると自負しております。ぜひお気軽にご相談ください。

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