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グループホームが赤字になる背景とは?廃業・倒産の原因と経営改善のためのM&A

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グループホームが赤字になる背景とは?廃業や倒産に至る原因

人材確保困難と人件費の増加

■人材確保の困難
【需要増加と人材不足】
高齢者人口の増加や介護サービスの需要拡大に伴い、適切な介護スタッフの確保が難しくなることがあります。
どの事業体でも従業員の採用には苦慮されているお話しはお聞きします。
特に質の高い介護を提供するためには経験豊富なスタッフの必要性が高まり、その需要と供給の不均衡が問題となります。

【質の担保と経験豊富なスタッフの不足】
グループホームでは、入居者に質の高い介護やサポートを提供する必要があります。
しかし、経験豊富で専門的なスキルを持つ介護スタッフを確保するのは難しく、質の担保に課題が生じることがあります。
特に認知症ケアは難易度が高いと言われております。
経験値のある人材や若い人材は他の会社も喉から手が出るほど欲しい状況です。
その中から採用までこぎつけるのは非常に難しいとよく耳にいたします。

【労働環境の悪化】
介護の仕事は体力的にも精神的にも負担の大きなものであり、労働環境の悪化がスタッフのモチベーション低下や離職率の増加を引き起こすことがあります。

■人件費の増加
【最低賃金の引き上げ】
最低賃金の引き上げが行われると、介護スタッフの賃金にも影響が及びます。
これにより、人件費の増加が発生し、経営コストが上昇します。

【スキルアップと給与の関係】
高度なスキルを持つ介護スタッフの需要が高まる中、それに見合った給与の提供が求められます。
給与水準がスキルや経験に見合わない場合、スタッフのモチベーション低下や離職のリスクが高まります。

【社会保障制度の変化】
社会保障制度の変化により、雇用保険や労災保険などの社会保険料が増加する場合があります。
これにより、企業全体の人件費が増大し、経営負担が増す可能性があります。

 

稼働率・利用率の低下

【需要の低下】
グループホームの稼働率は、入居者の需要に大きく依存しています。
地域の高齢者人口減少や他の施設との競争激化などにより、需要が低下すると稼働率も減少します。

【サービス提供の不足】
介護サービスの提供が不十分である場合、入居者が他の施設を選択する可能性が高まります。
サービスの質や多様性が充実していないと、利用率が低下しやすくなります。

【競争の激化】
近隣に同様のサービスを提供する施設が増加すると、入居者の選択肢が広がります。
競争が激化する中で、他の施設が優れたサービスや設備を提供している場合、利用者が流れることがあります。
加えて、昨今のグループホームは、多様化が進んでおり、併設でカフェを運営している施設や、毎月イベントを催している施設もあります。能動的な施設は淘汰されていく時代となっています。

【施設の老朽化】
施設の老朽化が進むと、快適で安心して生活できる環境を提供できなくなります。
これが入居者離れを引き起こし、利用率が低下します。

【経営課題への対応不足】
経営上の課題(資金不足、労働力確保の難しさ、法令順守の厳格化など)に迅速に対応できない場合、経営の安定性が損なわれ、信頼性や入居者獲得が難しくなります。

【地域ニーズの変化】
地域の高齢者のニーズが変化する場合、それに合ったサービス提供が求められます。
地域社会との連携が不足し、地域ニーズへの柔軟な対応ができないと利用率が低下します。

 

物価高騰

【運営コストの上昇】
物価高騰は一般的に経済全体に影響を与え、生活必需品やサービスの価格が上昇します。
これにより、グループホームが必要とする生活物資や設備、介護用具などの調達コストが上昇し、運営コストが増加します。

【人件費の増加】
物価上昇に伴い、最低賃金の引き上げや労働市場の競争激化が生じることがあります。
介護スタッフの賃金が上昇すると、人件費が増加し、経営に圧迫がかかります。
加えて紹介会社経由での採用となると、手数料も加わり、より経営を圧迫するものになります。

【設備や施設の維持管理費用の増加】
物価高騰が進むと、建築資材やエネルギーなどの設備・施設の維持管理にかかる費用が増加します。
老朽化が進んだ施設のリニューアルや修繕が必要な場合、そのコストが増大します。

【食材や食事提供コストの増大】
グループホームでは入居者に対して食事を提供する必要があります。
物価高騰による食材や調理材料の価格上昇があれば、食事提供コストが増加し、運営コストが増加します。

【経営への圧力と収益減少】
運営コストが上昇する一方で、入居者の収入が限られている場合、料金の引き上げが難しいことがあります。
これにより、経営への圧力がかかり、収益が減少する可能性があります。

【予測困難な経済状況】
物価高騰は予測が難しく、急激な変動が生じることがあります。
急激な物価上昇に適応できない場合、経営計画の見直しや適切なリスクヘッジが難しくなります。

 

加算を取得できていない

【加算・介護報酬改定の重要性】
グループホームの運営において、加算は重要な要素の一つです。
これは施設が提供する特定のサービスや条件に対して、政府からの追加的な資金を受けるためのものです。

【加算の種類】
加算にはさまざまな種類があり、例えばヘルパー配置加算、認知症ケア加算、夜勤対応加算などがあります。
これらの加算を取得することで、施設はより質の高いサービスを提供することが期待されます。

【加算の難易度】
一部の加算は、取得が容易ではなく、特定の要件をクリアしなければなりません。
例えば、専門のスタッフ配置が必要な場合や、施設内の設備や環境が一定の基準を満たす必要がある場合があります。

【手続きや文書作成の複雑性】
加算の取得には手続きや文書作成が伴います。
これが複雑で煩雑である場合、施設はその手続きに対応するために必要な人的・時間的リソースを確保できないことがあります。

【適切な情報の不足】
加算に関する情報が不足している場合、施設は取得のための具体的なステップや条件を理解することが難しくなります。これが取得の障害になります。

【経済的な課題】
加算を取得できないことが経済的な課題を引き起こすことがあります。
必要なサービスや条件を提供するためには追加の資金が必要であり、これが確保できない場合、経営の安定性が脅かされます。

【介護報酬改定の影響】
介護報酬の改定に関しても重要です。
来年に改定を迎えますが、報酬改定は3年に1度行われます。
介護事業所は多くの事業所が小規模事業所となっており、介護報酬の引き下げは経営に対して多大な影響を与えます。

 

グループホームを廃業や倒産する際の手順・手続き

(1)法的アドバイスの取得
廃業や倒産を検討している場合、法的なアドバイスを専門家から受けることが重要です。
弁護士や会計士に相談し、適切な手続きを理解しましょう。

(2)スタッフおよび入居者への通知
スタッフや入居者には十分な予告期間を設けて通知する必要があります。
適切なコミュニケーションを図り、関係者の理解と協力を得ましょう。

(3)契約の解除
提携先や契約業者に対して、契約解除について交渉しましょう。
解約手続きや条件に関する詳細を確認し、法的なトラブルを防ぐためにも注意が必要です。

(4)設備および資産の整理
施設内の設備や資産について、整理・処分の手続きを行います。
これには適切な書類作成や法的手続きが伴います。

(5)債務整理
未払いの債務や契約違反に対処するため、債務整理の手続きが必要です。
これには債権者との交渉や法的手続きが含まれます。

(6)役所への届出
所在地の市区町村役所や厚生労働省などに廃業・倒産の届け出を行います。
役所によって必要な書類や手続きが異なるため、正確な情報を取得しましょう。

(7)法的手続きの完了
弁護士や会計士の指導を受けながら、法的手続きを進めます。
これには訴訟が含まれる場合もありますので、専門家との連携が重要です。

(8)経理処理
会計帳簿の整理や税務処理、最終決算の作成など、経理の処理を行います。
これには税金に関する法的なアドバイスも求めることが重要です。

(9)遺産分割
法的な手続きが完了した後、残った資産や財産に対する遺産分割を行います。

(10)閉鎖手続き
建物や施設の閉鎖手続きを行い、最終的な廃業が完了します。

 

これらの手続きは状況により異なるため、事前に十分な準備とアドバイスを受けながら進めることが必要です。

 

廃業や倒産ではなく、M&A(事業売却)をするメリット

事業売却やM&A(合併・買収)は、経営者や事業者にとって様々なメリットがあります。
グループホームのM&Aにおける主なメリットを解説します。

(1)資金調達
M&Aを通じて事業を売却することで、一時的な資金調達が可能です。
これにより、新たなビジネスの展開や経営の強化に資金を活用できます。

(2)経営の専念
他社に事業を売却することで、経営者は特定の事業に専念できるようになります。
これにより、経営リソースやエネルギーを他の成長分野や新規事業に注力することが可能です。

(3)リスクの分散
他社との統合により、リスクの分散が図れます。
経済の変動や市場の不確実性に対する強固なポジションを築くことができ、安定した経営基盤を構築できます。

(4)経済規模の拡大
M&Aにより、事業規模が拡大します。
これにより、経済の規模メリットを享受でき、コストの効率化や交渉力の向上が期待できます。

(5)専門知識や技術の取得
買収する企業が特定の専門知識や技術を有している場合、それを取得することができます。
これにより、自社の競争力を向上させることが可能です。

(6)ブランド価値の向上
優れた企業やブランドを買収することで、自社のブランド価値が向上します。
これにより、市場での信頼性や認知度が向上し、新たな顧客獲得が期待できます。

(7)人材の獲得
買収先に高度な人材がいる場合、それを獲得できます。
経験豊富な専門家や優れたリーダーシップを持つ人材は、企業の成長に貢献できます。

(8)競争力の向上
同業他社を買収することで、競争力が向上します。
市場での強力なポジションを確立し、業界内での主導権を握ることが可能です。

(9)税務上のメリット
M&Aには税務上のメリットもあります。
例えば、キャピタルゲイン税の適用や節税策などが検討されることがあります。

(10)事業ポートフォリオの最適化
特定の事業を売却することで、事業ポートフォリオを最適化できます。
主力事業に集中し、強化することで、経営効率を向上させることができます。

 

これらのメリットは、慎重かつ戦略的なM&Aプロセスによって最大限に引き出すことができます。
成功するためには、適切な相手企業の選定や交渉、デューデリジェンスの実施が不可欠です。

グループホームM&Aの流れ・手続き

(1)計画と戦略の策定
M&Aの計画と戦略を明確に定めます。
目標や希望条件、買収する企業の特定などが含まれます。

(2)目標企業の選定
買収対象となるグループホームを選定します。
適切なデューデリジェンスを行い、財務状況やリスク、文化の適合性などを評価します。

(3)機密保持契約の締結
買収に向けて情報交換が必要な場合、機密保持契約(NDA)を締結し、情報漏洩を防ぎます。

(4)デューデリジェンスの実施
目標企業の詳細な調査(デューデリジェンス)を行います。
財務、法務、人事、施設の状態などを詳細に確認し、リスクや機会を特定します。

(5)交渉と詳細な合意
デューデリジェンスの結果をもとに、価格や条件などについて交渉を行います。
最終的な合意に達したら、契約書の作成が始まります。

(6)契約書の締結
合意された条件を盛り込んだ正式な契約書を作成し、双方の合意が得られたら署名・締結します。

(7)実行可能性の評価
法的な手続きや規制に従って買収が実行可能かどうかを評価します。
必要に応じて各種許認可を取得します。

(8)資金調達
買収に必要な資金を調達します。
これには銀行融資、株式発行、内部留保の利用などが含まれます。

(9)統合計画の策定
買収後の統合計画を策定します。
組織の統合、業務の調整、文化の統合などを計画し、スムーズな移行を図ります。

(10)統合の実行
買収が完了したら、統合計画を実行します。
組織の再編、業務の効率化、ブランドの統合などが行われます。

(11)適切なコミュニケーション
従業員やステークホルダーとの適切なコミュニケーションを図りながら、統合プロセスを進めます。

(12)成果のモニタリング
M&Aの成果をモニタリングし、設定した目標が達成されているかどうかを定期的に評価します。

(13)調整と改善
統合後の課題や改善点を発見し、適切な調整や改善策を実施します。

 

これらのステップを慎重かつ段階的に進めることで、グループホームM&Aの成功の可能性が高まります。
専門家やアドバイザーとの協力も重要です。

 

グループホームM&A事例

弊社でご支援させていただいた事例をご紹介いたします。

・ご相談をいただいた経緯
譲渡企業様は東海地方でグループホーム2ユニットを運営されていました。
創業から長きに渡り経営をされていた代表は、ゆくゆくはご子息に当該企業を承継する意向をお持ちでした。
しかしながら、ご子息は、自身は経営者向きではないとのお考えで、承継されることを固辞。
そういった状況から、グループホームを閉鎖しようか悩んでいるというご相談をいただきました。

・弊社からのご支援
第三者承継をすることで、利用者・従業員を守っていくことができるとアドバイスさせて頂きました。
そのうえで、どういった方に承継をしてほしいか、じっくりとヒアリングさせていただき、引継ぎ先を探索しました。

・譲受企業様について
東海地方で複数の介護事業所を運営されている企業様が譲受に手を挙げてくださいました。
以下2点の理由からご興味を持ってくださいました。
・出店希望のエリアであった
・グループホームは運営しておらず、譲受することで包括的に高齢者をお守りできる

・ご面談~承継まで
譲渡企業の代表も、地域で複数事業所を運営されているという譲受企業様を好意的に感じられ、ご面談する運びとなりました。
ご面談後はスムーズに交渉が進み、約6か月で承継に至りました。
譲渡企業の従業員様も譲受企業の母体がしっかりしていることからご安心され、ネガティブな意見も出ず、継続して現在も働かれております。