CBパートナーズでは、介護・医療・福祉領域に特化したM&A仲介会社として、経営拡大、承継問題に取り組んできました。特に昨今、社会福祉法人からのご相談が増えております。
本コラムでは、社会福祉法人の課題や実態を踏まえて、M&A・事業承継を解決策の一つとして、具体的な手法や手続きについて解説します。
●<インタビュー>社会福祉法人 奉優会様~社会福祉法人の事業譲渡・合併について~
社会福祉法人とは、「社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に基づいて設立された法人」のことです。社会福祉法において社会福祉法人が行える社会福祉事業は第1種と第2種に分かれており、「第1種社会福祉事業」を行うことができるのは原則、国や地方公共団体、社会福祉法人のみとなります。また社会福祉法人は社会福祉事業の他に公益事業および収益事業を行うことが可能です。
社会福祉法人と一般企業との大きな違いは、一般企業は営利性を追求することがが目的なのに対し、社会福祉法人は公共性を重視した非営利団体であることが特徴です。
社会福祉法人が行える主な事業内容は以下のとおりです。
▶第1種社会福祉事業
・特別養護老人ホーム
・児童養護施設
・障害者支援施設
・救護施設など
▶第2種社会福祉事業
・保育所
・訪問介護
・デイサービス
・ショートステイ
・子育て支援事業
・入浴、排せつ、食事等の支援事業
・介護予防事業、有料老人ホーム、老人保健施設の経営
・人材育成事業
・行政や事業者等の連絡調整事業など
・貸ビル
・駐車場
・公共的な施設内の売店内経営など
①経営者の高齢化・後継者不在
社会福祉法人は同族経営、1法人1施設のような形体で零細規模の法人が多く存在します。
社会福祉法人の経営者は社会福祉事業、社会貢献に対して熱心な篤志家が多く、ご自身が健在のうちは経営を続けたいとお考えになる傾向にあります。そのため親族間の世代交代、後継者探しの対応が遅れ、なり手が見つからないといったケースがしばしば見受けられます。
②施設の老朽化
①にも通ずる部分がありますが、長年の経営により、施設自体が経過とともに劣化し、建替えや大規修繕が必要な時期にきていることがあります。
経営者はご自身が高齢になりながら、なお追加で多額の借金は背負いたくないといった理由から、建替えや大規修繕が必要になった時点を引退のタイミングと考える方も少なくありません。
③赤字法人の増加
社会福祉法人において、赤字法人の割合が増えています。大規模法人においても約3割が赤字となっており、赤字法人の割合は拡大傾向にあります。大規模法人であっても経営安定の難しさが浮き彫りとなっており、小規模な法人においては、さらに深刻な状況であることが想定できます。
また、光熱費や人件費の高まりで経費が増しているため、規模を問わず、経営難に陥る可能性は高まっています。
出典:独立行政法人福祉医療機構「2021 年度(令和3年度)社会福祉法人の経営状況について」
①法人・事業の継続
後継者不在や経営難といった課題を抱える社会福祉法人において、M&Aや事業承継といった手段を通じて、法人や事業の維持存続を図ることは重要です。
社会福祉事業の提供が継続されることで、地域社会への貢献はもちろん、職員の雇用維持が可能となります。
②経営・事業の安定化
経営基盤の安定した社会福祉法人グループや事業規模の大きな営利法人グループの一員になることで、業務の効率化、採用力の強化、グループ内の資金支援により新たな施設開設、大規模修繕などが可能になる場合があります。また、赤字や採算性が低い事業の売却(切り離し)により、コア事業への注力が可能となります。
③資金の受領
退任時に法人から受け取れるお金として退職慰労金があります。
退職金の原資確保、規程の整備は必要です。経営者個人が施設の土地・建物を所有する場合、第三者への売買により現金化も可能です。
社会福祉法人は、非営利法人であり、営利法人のような株式や持分という概念がありません。そのため、株式、持分のような譲渡対象の譲渡による売買はできません。以下、代表的な3つの手法を紹介します。
①経営権の承継
社会福祉法人の経営においては、理事が決定を行うため、理事会の構成メンバーの過半数以上を支配することで、事実上の経営権を取得することができます。
理事ついては、社会福祉法人の運営、介護福祉事業の経営に長けた方がふさわしいため、理事の選任が非常に重要です。
②合併
合併とは、2つ以上の法人が契約によって1つの法人に統合することをいいます。社会福祉法人の合併は、社会福祉法人間でのみ認められています。
経営基盤の安定した社会福祉法人、法人間のシナジー効果などを目安に合併先を探します。
③事業譲渡
社会福祉法人の場合、事業のすべてを譲渡することはできませんが、一部であれば不採算事業の整理も可能です。ただ、譲渡事業が社会福祉法人しか経営主体になれない場合もあるので確認が必要です。また、許認可や財産処分などに関する、行政・所轄庁への相談、特に補助金による財産取得がある場合は確認が必要です。
社会福祉法人という特性上、一般企業のM&A・事業承継とは異なる独自の留意すべきルールが多数あります。
本コラムでは、M&A・事業承継における、一般的な内容を解説しましたが、経営者、法人ごとにご状況やお悩みは異なります。より具体的なM&A・事業承継の手法・手続き、譲受候補先、事例などについては、個別にてご相談に対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。