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訪問介護事業所閉鎖後の利用者・従業員の承継を検討する

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はじめに

訪問介護事業所は小規模で運営されているケースが多く、介護報酬改定や地域ニーズの変化などで経営に大きな影響を与えます。東京商工リサーチによると、2023年の訪問介護事業の倒産件数は60件に達し、年間最多を更新しました。

このコラムではなぜ閉鎖ではなく第三者承継なのか、第三者承継の具体的なメリットや手順、ポイントに焦点を当てて解説いたします。

出典:株式会社東京商工リサーチ|「訪問介護事業者」の倒産動向調査 

令和6年度介護報酬改定で訪問介護はマイナス改定

令和6年度の介護報酬改定では全体が1.59%のプラスとなり、ほかの介護サービスも全体的に引き上げとなる中で、訪問介護、定期巡回サービス、夜間対応型訪問介護では基本報酬が引き下げられました。

<令和6年度介護報酬改定 訪問介護の基本報酬>

  • 身体介護
    ・20分未満 167単位→163単位 ▲2.40%
    ・20分以上30分未満 250単位→244単位 ▲2.40%
    ・30分以上1時間未満 396単位→387単位 ▲2.27%
    ・1時間以上1時間30分未満 579単位→567単位 ▲2.07%
    ・以降30分を増すごとに 84単位→82単位 ▲2.38%
  • 生活援助
    ・20分以上45分未満 183単位→179単位 ▲2.19%
    ・45分以上 225単位→220単位 ▲2.22%
    ・身体介護に引き続き生活援助を行う場合 67単位→65単位 ▲2.99%
  • 通院等乗降介助 
    ・99単位→97単位 ▲2.02%

新報酬ではおおむね2%強の引き下げとなっています。引き下げの理由として、厚生労働省からは介護事業経営実態調査で比較的高い収支差率だったこと、一本化される介護職員等処遇改善加算では、高い加算率に設定していることを強調し、全体でプラスになるような経営努力が求められました。
しかし、訪問介護業界ではもともとホームヘルパーの人手不足が深刻で、昨年の訪問介護の倒産件数は過去最高を更新しています。近年の物価高や同業者との競争の激化により経営が厳しい事業所が多いなかでの減算は、介護業界全体に大きな影響を与えます。新設・拡充された加算を取得するにしても、余力のない事業所は今後さらに経営に行き詰まるのではないでしょうか。

出典:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について

訪問介護を廃業・閉鎖・倒産する前に

訪問介護事業所の倒産・廃業した数

 

東京商工リサーチから2024年度上半期の「老人福祉・介護事業」の倒産件数が発表されました。グラフをみてわかるように2000年以降で初めて、倒産件数の過去最多を大幅に更新しました。倒産の原因は様々ですが、要因の一つとしてヘルパーの高齢化による人員不足や燃料代や介護用品等の物価高の影響が重なったことが大きな要因としてあげられています。倒産した事業者の内訳をみると小規模の事業者が多い一方、中規模事業者の倒産も増えてきています。

サービス別の倒産件数は訪問介護が最も多く、昨年と比べると42.8%増となり、小規模事業者の売上不振が大半を占めました。訪問介護の倒産件数においては2023年度に過去最多(年間60件)を更新しましたが、2024年は上半期ですでに倒産件数が40件であることから、またしても過去最多を更新すると予想されます。

出典:株式会社東京商工リサーチ|2024年上半期(1-6月)「老人福祉・介護事業」の倒産調査

訪問介護事業所における課題点とは

処遇改善加算で介護職員の賃金も増加する見込みとなっていますが、それだけでは人員不足の解消は難しいと言われています。2025年には団塊の世代が75歳以上になり、ますます生産人口の増加が必要となることが明らかで、人員不足からの脱却は困難を極めています。

出典:株式会社東京商工リサーチ|「訪問介護事業者」の倒産動向調査 

訪問介護事業所の閉鎖前に第三者承継という選択肢を

会社の倒産という最悪の事態を想定した場合、利用者様については従業員やケアマネジャーの協力のもと、全利用者様の受け入れ先を探します。従業員については生活に多大な影響を受けるため、事業者は誠意ある対応が必要です。また、優先債権である従業員の未払い給与、退職金のための資金の用意や従業員の転職先斡旋など、事業者がとるべき対応は多岐に渡り、容易ではありません。訪問介護事業所を続けるか、閉鎖するか、会社倒産の危機に悩んでいる方は、第三者への承継(M&A)も視野に入れましょう。従業員の雇用を継続できることや、利用者様へのサービス提供を継続できるといったメリットがあります。

第三者承継(M&A)のメリット・デメリット

第三者承継にはメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 代表者が継続して働くか、完全に辞めるかを選ぶことができる
  • 譲渡後の利用者様や従業員の契約についてのトラブルを、廃業よりも減らすことができる
  • 承継の時期が明確なので、手続きや関係者への最後のご挨拶に時間を割くことができる
  • 譲渡対価が支払われる
  • 金融機関からの融資など、代表者の個人保証の解除ができる

デメリット

  • 譲渡先を自分で見つけることが困難
  • M&A仲介会社に依頼する場合は、仲介手数料がかかる
  • 譲受先の経営方針に従うことになるため、社内システムや企業文化の統合に時間がかかる
  • 代表やオーナーが変わることで、取引先から取引の停止や条件の変更を求められることがある

第三者承継の流れ(M&A仲介会社に依頼した場合)

第三者承継はご相談から承継完了まで、概ね4~8カ月ほどを要します。1年以上の長期になるケースも少なくありません。

簡単に承継までの流れをご説明いたします。

  1. 現状のヒアリング
  2. 財務資料等の情報開示
  3. 会社・事業の価値診断実施
  4. 譲受候補先への打診
  5. 譲受候補先との面談
  6. 譲受候補先の買収監査
  7. 最終合意契約締結
  8. 譲渡実行

スムーズな承継のために

M&A仲介会社の選定を行う場合は、自分が心から信頼できる仲介会社を選ぶことが重要です。仲介会社選定後は、希望条件等を相談し細かく打合せを行うことで、最良の第三者承継(M&A)の実現が近づきます。

さいごに まずは客観的な事業価値を知る

前述のとおり介護業界の倒産件数が年々増加する中、令和6年度の介護報酬改定で訪問介護はマイナス改定となりました。訪問介護事業者の経営状態は厳しく、利用者様や従業員、地域のためにも事業承継を考えなくてはならない状況になってきています。

もし譲渡を検討される場合は、まずは自身の介護法人の価値を正しく把握することが大切です。また他にも介護事業を行っている場合は、訪問介護事業だけを切り離して譲渡することも可能ですので、ぜひ一度CBパートナーズにご相談いただければと思います。

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作成日:2024年2月13日