引退を考えているけれど後継者がいない場合、廃業を迷われている方も多いのではないでしょうか。
当社には地域医療を存続させるためにも最良の選択をしたいとお問い合わせいただくケースが多くあります。 本コラムでは医療法人における事業承継・売却の重要性やメリットを解説します。
帝国データバンクが行った「全国企業 後継者不在率 動向調査(2023年)」によると、後継者の不在率の全国平均53.9%に対して病院・クリニックの後継者不在率は65.3%となり全業種の不在率を大きく上回った結果になっています。
後継者不足は多くの経営者が抱える問題です。医師や経営者の高齢化のほか、子どもがいても医師ではないケースや医師であっても専門分野が異なるケース、承継の意向がないといった様々な理由が挙げられます。また経営の悪化によりご家族への事業承継を望まない経営者もいらっしゃいます。このような状況で近年医療法人を「事業継承・売却」するケースが増加しています。
出典:帝国データバンク|全国「後継者不在率」動向調査(2023年)
医療法人の事業承継・売却には大きく以下の2つに分けられます。
名の通り親族から後継者を選ぶ方法です。メリットとしては社内外問わず、関係者に受け入れられやすく、後継者としての準備も早くからすることができる点です。ただし親族に後継者に適した人材がいない場合、周囲の理解を得られないほか、反感を買うケースもあり、経営権を巡ったトラブルが起こる可能性があることがデメリットだといえます。
医療法人の後継者である理事長には、医師・歯科医師であることが原則求められています。医師・歯科医師免許が必要である点で、後継者の選択肢が狭まる傾向にあります。
後継者不在のためやむを得ず廃業となってしまった場合、患者様はもとよりそこで勤務する職員、さらには周辺地域の医療体制に大きな影響を与えます。医療業界における事業継承という選択は、病院を維持することで地域の医療を守る社会的意義の高い課題といえます。
後継者不在の解決策として第三者への承継を考える場合、個人で後継者を探すかM&A仲介会社を介して後継者を見つける方法があります。
個人で探す場合、M&A仲介会社に支払う仲介手数料などの費用を抑えることはできますが、
事前に契約などについての交渉を慎重に行わないと、後々トラブルに発展するケースもあり、すぐに後継者が見つからない場合は成立まで、かなりの時間と労力を費やします。一方M&A仲介会社に依頼する場合、仲介手数料が必要にはなりますが豊富なM&Aのノウハウと譲受側の情報も入手しやすいため、選択肢が広がり比較的スムーズに後継者を見つけることができます。
医療法人の事業承継は一般企業の承継とかなり異なります。一般的な株式会社で事業承継を行う場合、保有する株式が議決権となり、自分の持っている株式をそのまま相続すれば承継することができます。
一方医療法人は、設立時期によって「出資持分あり」と「出資持分なし」の医療法人が存在しそれぞれ承継方法の手続きが異なります。また医療法人の理事長は原則、医師しかなれないなど医療法人の承継は手続きが複雑であるため、M&A仲介会社などプロのアドバイザーへの依頼をおすすめします。
医療法人の事業承継・売却は譲渡側・譲受側の双方にメリットがあります。
患者様をそのまま引き継ぐことができるため地域医療や患者様を守ることにつながります。
また譲受側にとっても患者離れを最小限にすることが可能であり、事業承継したあとも集患を見込めるため収支の予測が立てやすくなります。
事業承継・売却により既存スタッフを引き続き雇うことが可能であるため、スタッフとその家族の生活を守ることができます。また譲受側にとっても新規スタッフの採用の手間・費用を抑えることができ、患者様や地域の医療・介護施設から信頼を得ている既存スタッフを維持することで、円滑に医療サービスを提供することができます。
患者様の満足度や集患は医療設備をはじめとする医療サービスの専門性、病院の雰囲気や評判、さらに地域とのかかわりなどが大きく影響します。ブランド価値が高い医療法人を譲受できれば安定的に利益を確保することが可能です。
譲渡側のメリットとして、廃業する場合は清算にかかる手間・費用を抑えることができます。また複数の医療施設を経営する場合でもひとつの施設を手放すことにより、 売却利益を設備投資へ利用できれば経営の効率化につながります。
譲受側は以前どのような経営状況で運営していたのかを参考にでき 来院数・収益・経費・税金といったデータを取得できます。 新規開院する場合では必要な初期投資が不要になるため将来の見通しが立ちやすいという経営上のメリットがあります。
もし事業承継・売却の意思がある場合、計画はできるだけ早い段階で立てておくことが重要です。これは急な事態に対応するためだけではなく、綿密な計画を立てておくことでいざとなった際に、スムーズに引継ぎをするためです。裏を返せば急な体調不良等にすぐに事業承継を考えなくてはならなくなった時、数カ月で譲渡先が必ず見つかるわけではありませんし、許認可関連が必要かつ有資格者が必要な医療業界では、行政の対応等も必要となるため、より時間が必要となります。後継者がいる場合であってもスキル・経験、経営の理解など経営者として引継ぐための育成期間を含めると、準備に数年は必要となります。動き出しのタイミングは高齢になってからではなく動けるうちに事業承継・売却について考えておくことが重要です。
主に以下の3つの手法で譲渡金額が決められます。
資産基準+営業権方式は、既に保有する資産(現預金、設備、不動産など)をベースとする価格算定方式です。病院・クリニックの貸借対照表を元に譲渡価格が算出されます。現預金や不動産など換金性が高い資産を持ち、また借入金が少ないほど、高い譲渡価格となります。また資産という過去のストックのみならず、今後価値を生むであろう営業権も加味することで譲渡価格が算出されます。過去に積上げたストックを重視しつつも、将来的な収益の両面に着目した価格算定方式です。
企業間M&Aに比べ数は少ないながら、病院・クリニックのM&Aは毎年着実に行われており、過去のM&Aの事例データは蓄積されています。買収事例比例方式は、過去にあったM&Aの譲渡価格を参考として、譲渡価格を計算する算定方法です。対象となる病院・クリニックの貸借対照表などの資産性がベースとはなりますが、それに加えて他のM&A事例を踏まえた上で、譲渡価格が算出されます。上場会社同士のM&Aを行う際、他の類似上場会社の株価や同様のM&Aの際の株価を参考とするケースがありますが、買収事例比較方式は類似の計算方法といえるでしょう。
ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)方式は、買収先の病院・クリニックが今後生み出すキャッシュフローに基づき譲渡価格を算出する方法です。資産基準+営業権方式、買収事例比較方式が、主に過去の資産や過去事例に基づき価格を算定するのに対し、DCF方式は将来収益に着目した計算方法です。事業計画で作成される予想収益に基づき価格が算出されるため、予想収益により算定結果は大きく左右されます。よってDCF方式を採用する際は、今後の事業計画について、実現可能性のある詳細な計画の策定が必要不可欠です。
CBパートナーズでは現在の法人や事業を、第三者承継する前提での現在の価値が分かる「価値診断」を承っております。価値診断を受けることでのメリットは以下の通りです。
①今後の経営戦略を考えるときに役立つ
企業価値診断をご相談いただくケースには、必ずしも最初から譲渡を決めているわけではない場合もあります。
価額を算定するにあたり決算書を細かく見ていくことで以下のようなことが見えてきます。
②会社または事業を譲渡・売却した際の価額相場を知る
この場合は一般的にイメージされる通り、ご相談をいただく時点で譲渡・売却を考えておられるケースです。
売主様の希望価額を決める際の参考にしていただけるほか、客観的な算定価額を買手様に提示することで、より納得感のあるマッチングが行えるメリットもあります。反対に双方が妥当額を知らない場合、相場より著しく不利な条件での譲渡・譲受をしてしまうリスクがあります。
実際に診断をきっかけにあらためて今後の方向性を再考されるパターンが多く存在します。
M&Aは譲渡側と譲受側の同意によって、価額等が決められるため、絶対的な相場というものがあるわけではありません。特に施設周辺の人口や建物の状態など、複雑に絡み合った条件によって、ある程度の譲渡価格を算出することは可能です。CBパートナーズでは無料で価値診断を承っておりますのでご気軽にご相談ください。
本コラムでは事業承継の重要性やメリットをご紹介しました。CBパートナーズでは医療業界の承継問題解決に特化した経験豊富なアドバイザーが揃っております。幅広いネットワークとノウハウで思いに寄り添ったサポートをさせていただきます。 運営されている法人の価値が知りたい、承継の流れが知りたいなど、 どんな内容でも構いませんので、気になることがございましたらお気軽にお問い合わせください。
作成日:2024年1月22日