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そもそも、M&Aとは?

M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業が合併または買収を行うプロセスを指します。これは、経済的な戦略の一環として行われ、企業が成長し、競争力を向上させ、市場でのポジションを強化するために採用される手法です。

■合併(Mergers)
合併は、2つ以上の企業が合同して新しい企業を形成するプロセスです。これは協力的なプロセスであり、両方の企業が同等の立場で参加します。合併には異なる形態があり、垂直統合(供給チェーン上または下の企業との合併)や水平統合(同じ業界の競合他社との合併)などがあります。

■買収(Acquisitions)
買収は、1つの企業が他の企業を購入するプロセスです。買収はしばしば支配的な位置を持つ企業によって行われ、買収対象の企業は購入されることになります。買収は時に敵対的な形で進むこともありますが、多くは交渉に基づいて進行されます。

つまりM&Aを簡単に言うと、会社や事業を買収または売却することです。

例)

  • 近隣の老人ホーム運営の会社が後継者不在で会社を譲渡した
  • 知り合いの訪問看護ステーションが経営難で利用者や従業員を近隣の他の事業所に承継した

 

介護施設のM&A(承継)を考える三大理由

承継を考える主な理由としては、以下のような理由が挙げられます。

  1. 業績の悪化、経営不振(コロナ禍、介護報酬改定、競合)
  2. 人手不足、キーマンの退職(他業種や競合への人材流出、管理者などの急な退職)
  3. 後継者の不在(継ぎたくない、継がせたくないというケースの増加)

 

介護施設のM&A(買収)を考える三大理由

買収を考える主な理由としては、以下のような理由が挙げられます。

  1. 人材の流動化(スケールメリット、新卒、外国人労働者)
  2. シナジー効果(既存事業とのシナジー)
  3. 資金調達(大規模化による信用度の向上)

介護施設のM&Aの手法・手順について知る

介護施設のM&Aの進め方

[売却・譲渡希望企業の場合]

  1. M&A支援会社へ相談
  2. M&A支援会社へ財務資料などを提出
  3. 買収・譲受希望企業の選定
  4. トップ面談の実施
  5. 基本合意書の締結
  6. 買収監査
  7. 最終契約書の締結
  8. 社内告知・調整
  9. クロージング

[買収・譲受希望企業の場合]

  1. M&A支援会社へ相談
  2. 売却・譲渡希望企業のご案内
  3. トップ面談の実施
  4. 基本合意書の締結
  5. 買収監査
  6. 最終契約書の締結
  7. 行政手続き・届出
  8. クロージング

介護施設M&Aの種類

介護事業のM&Aは、そのほとんどが「株式譲渡」か「事業譲渡」の手法で実施されています。「譲渡代金が誰に渡るか」 が根本的に異なり、M&Aの目的や対象会社の財政状態等から、適切な方法を選択します。

 

株式譲渡の特徴

■株式譲渡

株主が所有する株式を譲渡。会社全体を譲渡する方法。

譲渡代金は株式を売却した株主に入る。

株主兼経営者が引退する際や、別会社で異なる事業を始める際に取る方法。

特徴としては…

  • 事業所の許認可、有形固定資産や各種契約(賃貸借・雇用など)を包括的に移転することが可能。
    手続きが簡便&比較的短期間
  • 譲渡側の株主個人の税金は源泉分離徴収となり、株式譲渡益課税(約20%)のみとなる。
    税制メリット
  • 会社全体の譲渡のため、譲受会社から買収監査が必ず実施される。

 

事業譲渡の特徴

■事業譲渡

会社が運営している一部の事業所・施設のみを譲渡する方法。

譲渡代金は事業所・施設を売却した会社に入る。

事業を複数展開する企業が、一部を売却・整理する際に取る方法。

特徴としては…

  • 事業所の許認可を含め、各種手続きを個別に検討・移転する必要がある。たとえば許認可は、対象事業所の廃止・新規開設の届出が必要。
  • 譲渡側の法人(対象会社)に譲渡益課税(法人税:約30%)が課される。
  • 偶発債務等の発覚を回避でき、譲受企業からは好まれる。
  • 譲渡側は株主兼経営者として、会社の運営を継続できる。

介護施設の価値はどのように評価されるのか

どんな評価方法があるのか

■コストアプローチ(Cost Approach)

会社の保有している資産の価値をベースに評価をする方法。

  • 時価純資産法
  • 簿価純資産法

 

■インカムアプローチ (Income Approach)

将来期待される経済的なキャッシュフローを、割引率等を使用し評価する方法。

  • DCF法(ディスカウントキャッシュフロー方式)
  • 配当還元法 

 

■マーケットアプローチ (Market Approach)

市場において成立する相場に基づいて評価をする方法。

  • 類似会社比準方式 (マルチプル法)
  • 類似取引比較法
  • 類似業種比較法

 

時価純資産法とは

この方法は、評価時点において会社が保有している資産の時価合計額から、負債の総額を控除した額を企業価値とする方法です。税法基準では、資産や負債の時価評価を行わなかったり、引当金を計上していないなど、実際の時価と相違があるケースがほとんどのため、資産と負債の全項目を時価で再度評価しなおすことにより、時価ベースに置き直します。

 

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー方式)とは

この方法はDCF法と呼ばれ、Discounted Cash Flowの略です。会社が将来生み出す価値をフリーキャッシュフローで推計し、資本コスト(WACC)で割り引いて現在価値(DCF)に換算して会社を評価します。

※ 割引率やWACCの設定が企業や業種、業界によって大きくことなります。投資におけるリスクを表現する数値のため、公開性の低い業界ではあまり使われません。

 

類似会社比準方式(マルチプル法)

この方法は、利益等を物差しとして、業種や業態等が似ている上場企業の株価をもとに、対象会社の評価額を算出する方法です。

市場においては、大手企業が上場していることから、それらの企業の事業価値額が利益等の何倍になっているかを参考に評価額を計算します。

実際のM&A事例とポイントを解説

ではここで実際の介護施設におけるM&Aの事例とポイントを紹介します。

こちらの事例は初期検討から約1年6ヶ月の期間がありました。

【譲渡側】
・業態:サービス付き高齢者住宅(40床以下)、訪問介護、通所介護
・売却理由:オーナー様の体調面の問題
・ポイント:オーナー様が慢性的な体調不良に陥っていた。
・オーナー様は譲渡後も継続して事業にかかわっていくことを希望。

【譲受側】
・業態:介護事業
・希望エリア:既存事業所とシナジーのあるエリア
・希望事業形態:おもに施設系
・買収ニーズ:現運営体制を維持するため、現代表の残留を希望
・現運営事業とのシナジー効果を重要視

【ポイント】

1.4社とのTOP面談実施

譲渡活動を開始し、売主様の希望条件を満たす先4社と同時期に面談しました。
最有力先の辞退という想定外もありましたが候補先の中で一番相性の良い先を選択しました。売主様からは複数面談をしておいてよかったとおっしゃられていました。

  • 1社ずつ面談をし意思決定するのはリスクが高いため買い手候補は2~4社ほどとTOP面談を行うようにする
  • TOP面談後に買い手候補先が辞退する可能性も想定しておく

 

2.クロージング時期の再調整

順調に進捗していましたが、想定外の事象によりクロージング時期を
再調整する必要がありました。それに伴い、ほかスケジュールの調整も必要となりました。

  • 第三者を巻き込んだスケジュールは予定通りにならない可能性を認識しておく
  • まずは調整が困難な従業員挨拶などの関係人数が多いTODOを軸に予定調整を進め、第2候補日も設定しておく

 

3.価値算定時からの大きな状況の変化

じつは一度価値算定を行ってから1年後に譲渡活動をスタートしました。
残念ながらその間に財務状況、収支状況が大きく変化していました。

  • 価値算定はあくまで、基準日時点での結果のため基準日以降の事象は改めて加味する必要がある
  • 価値算定から半年以上経過している場合は、最新での価値算定実施を推奨

介護施設の事業譲渡をする際に大事なポイント

企業・事業の状況を客観的に把握する

企業・事業の現在の状況を把握することで、改めて自社のポジショニングを認識することができ、売却・譲渡を検討する際にも企業事業概要や希望条件などを分かりやすくプレゼンすることが可能になります。

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「企業価値診断=売却」ではありません。自社の現在の企業価値を知ることは、親族や従業員へ事業を承継する際にも必ず役に立ちます。そして何より、今の企業・事業の本当の強み、ポテンシャルや経営課題が浮き彫りになり、経営戦略の策定に活用することもできます。

自社の企業価値を客観的に把握することは、自社の決算を把握するのと同じくらい経営者にとって必須の情報なのです。

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