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2024年施行「医師の働き方改革」のポイントとは

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2021年5月、通常国会において、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」が成立しました。そこでは医療法だけでは無く、医師法、労働基準法、など複数の法律が一括で提出されたため、総称して「改正医療法」と呼ばれております。

改正医療法の概要において大きな要点の1つが2024年4月から施行される「医師の働き方改革」です。大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から既に適用されておりましたが、医師においてはその業務の特殊性から、5年間適用が猶予されておりました。また、医師の働き方改革においては、一般企業の規制が適用されるわけではなく、医師固有の規制が適用となります。今回は、その医師固有の規制も踏まえ、実際に医師の働き方改革においてポイントの1つとなる、「医師の労働時間短縮」にフォーカスします。

医師の時間外労働規制で何が変わるのか

時間外労働の一般則では、月45時間、年360時間、特別条項を付与しても年720時間以内(休日労働を含めても月100時間未満、2~6か月平均80時間以内)と定められておりますが、医師の場合、時間外労働についてA・B・Cの3水準が設けられました。(実際には、B水準:連携B・B、C水準:C -1・C -2と分類されており、2035年度末を目標とした経過措置の側面もありますが、今回は割愛します。)

  • A:B・C以外の勤務医師に適応 
    年間960時間以下 月100時間未満
  • B:地域医療暫定特例水準に適応(救急病院、大学病院、知事が地域医療の確保のために必要と認める病院、など) 

    年間1,860時間以下 月100時間未満

  • C:集中的技能向上水準に適応 (臨床・専門・高度技能の研修を行う医療機関)

    年間1,860時間以下 月100時間未満

上記に加え、医師の健康確保のため、月労働時間の上限を超える場合の面接指導とその結果を踏まえた就業上の措置と、「連続勤務時間制限28時間・勤務間のインターバル9時間の確保・代償休息」をセットとし、A水準では努力義務、B・C水準では義務とされております。

また、B・C水準の対象医療機関として、都道府県より指定を受ける場合には、医療機関ごとに時短計画案を作成し、医療機関勤務環境評価センターによる第三者評価を受審する必要があることも、現行との変更点となります。

求められる労働時間短縮と効率化

新しく設けられた3水準について、労働基準法の観点から見れば、一般企業と比較し、多くの労働時間が容認されていることが分かります。一方、労働安全衛生法の観点から見たときに、「過労死ライン」とも言われる月80時間を超えていることも事実です。

厚生労働省 第12回医師の働き方改革に関する検討会(H30.11.19)資料2より

「働き方と医療安全との関係」においても、医療事故やヒヤリハットを経験した割合が、勤務時間が長くなるほど上昇することや、睡眠不足がパフォーマンスの低下につながること、など報告されているように、労働において時間短縮できる点、効率化を図れる点を整理し、労働時間の改善を図っていくことが求められております。

労働時間短縮に向けどう取り組んでいくべきか

厚生労働省 医師労働短縮計画ガイドライン 第1版では、労働時間短縮に向けた取り組みとして、以下5項目が挙げられております。

  1. タスク・シフト/シェア
  2. 医師の業務の見直し
  3. その他の勤務環境改善
  4. 副業・兼業を行う医師の労働時間の管理

  5. C-1水準を適用する臨床研修医及び専攻医の研修の効率化

1のタスク・シフト/シェアについて言えば、医師とコメディカルとの分業体制の推進と解釈することができます。カルテや診断書などの書類作成といった業務が、医師の長時間労働に繋がっているという報告もあり、医師でなくとも対応可能な業務を精査し、適切に分業体制を構築していくことが求められています。一方でこの項目は、医師の労働時間短縮を大義として策定されていることから、コメディカルの労働時間増につながりかねません。

このように実態では、労働時間短縮の取り組みの導入により、新たな課題がでてくることが想定されます。その調整をどのように図り、計画案に落とし込んで実践していくのか、各医療機関の対応が求められています。

「医師として当たり前」という概念からの脱却が求められる

「労働時間と応召義務」「労働時間と自己研鑽の区別、それに付随した勤怠管理」など現場でしか分からない難しさもあります。これが2024年「問題」とも言われる理由ではないでしょうか。今後、時間外労働賃金率の引き上げが追い風となるのか、10年前ではおよそ想像もつかなかったようなDX化が今後ますます加速していくのかはわかりませんが、これまでの慣習含めた常態のターニングポイントになることは事実です。

今の時代では考えられないような勤務医時代を過ごされた開業医の先生のお話を伺うこともありますが、「医師として当たり前」といった概念からの脱却が今求められているのではないでしょうか。